『アンリ・ルソー』 by ミシェル・マーケル、アマンダ・ホール

アンリ・ルソー
 ひとりで 学んで、画家への夢を 追いかけた』
ミシェル・マーケル さく
アマンダ・ホール え
志多田 静 やく
六耀社
2015年12月28日 初版第一刷発行
The Fantastic Jungles of Henri Rousseau (2012)

 

『キリンなやみごと』同様に、『世界をひらく 60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の「第一章 自分らしく生きる」で紹介されていた絵本。

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題名の通り、アンリ・ルソーのお話。絵本というか、伝記が絵本になっている。あの、どくとくの、マットな感じのルソーの絵に似せた感じで描かれている。表紙でソファーに寝転んでいるのは、ルソー。絵本の最後のページには、途中に描かれるルソーのもとを訪れた人々のイラストに、誰が誰だかわかるように、描かれた人物に名前が書き込まれている。

マリー・ローランサン(画家・彫刻家)、パブロ・ピカソ(画家)、ジョルジュ・ブラック(画家)、ジョルジュ・デュアメル(詩人・作家)、、、、などなど。

 

表紙を開くと、中表紙にもジャングルのイラスト。そして、

アンリ・ルソーは はたらきながらも、ずっと、「画家になりたい」という 夢を 持ち続けていました・・・・。
アンリは、絵のレッスンを 受ける お金など持ちません。
だから、アンリは、たったひとりで、 絵の勉強をすることにしました・・・・。

アンリ・ルソーが 夢だった 画家への道へ  ふみだしたのは、40才になってからでした。
画家への道は、それは それは きびしいみちのりです。
なんども、なんども、 評論家たちから ひどい ことばを あびせられながら、
それでも アンリは描きつづけます。
・・・ところが、 あるとき、 あの パブロ・ピカソが・・・・”

 

絵本は、アンリ・ルソーが、パリ市に入ってくる人から「通行税を集める仕事」をしながら、40歳になってもなお、「画家になりたい」という夢をもっていたという場面から始まる。

 

1844年生まれのルソーの時代、40歳と言えば、かなりの年齢といえる。それでも、そこから絵の勉強を始めて、1855年、50歳を過ぎて、フランス政府主催の美術展覧会に作品を出そうとするけれど、断られてしまう。1年後、審査員のいない展覧会にルソーの絵はだされるようになる。でも、数年間、ルソーは笑いものにされるだけだった。
それでも、独学で絵を学び、若手の画家たちと交流するようになる。これまでの画家たちとは異なる方法で描き続けたルソーは、、ピカソやドロネーらたちに認められるようになり、その作品は次第に人気になっていく。

 

ルソーは、パリを出たことがなかったけれど、おとずれた動物園や植物園、そして自分の想像で、楽園のようなジャングルを描くようになっていった。

 

晩年のルソーは次第に自分の作品でお金を稼ぐことができるようになったけれど、決して裕福になることはなかった。そして、1910年、パリの病院で病気のために亡くなると、貧しい人たちのための墓地に埋葬された。

そののちすぐに、ルソーの作品は世界で認められることとなり、ルソーの様々なテクニックは、現代の画家たちにもいまも受け継がれている。

 

そんな、ルソーの物語がカラフルな絵といっしょに描かれている。

ちょっと、セツナイ・・・。60歳を過ぎても、人々に馬鹿にされ続けても、、描き続けたルソー。そして、亡くなってから、評価されたということ、、、。

印象派、ポスト印象派と、絵画の世界がどんどん変わっていった時代。そんな中でルソーの絵は他とは違う。美術館で並んだ作品の中では、おもわず、おや?なんだこれは?とおもってしまうインパクトの強さ。それは、ルソーが1人で学び、1人で描き続けたから。

孤独を感じる一冊だった。

40歳ちかく年下の画家たちに認められたルソー。

 

ちなみに、そのころの有名な画家たちといえば、
ポール・セザンヌ:1839~1906
クロード・モネ:1840~1926
ポール・ゴーガン:1848~1903
フィンセント・ファン・ゴッホ:1853~1890

ルソーの絵を認めたのは、若手の画家たちだった。
パブロ・ピカソ:1881~1973
マリー・ローランサン:1883~1956

新しいもの、見慣れないものは、評価されるのに時間がかかる。ゴッホもしかり。ピカソだって、最初から認められたわけではない。ゴッホもルソーも、絵への情熱が作品にやどっているのだろう。技術的にうまいとか、へたとか、そんなことはそれを言うことで稼いでる評論家に任せておけばいい。

 

ルソーの描くジャングルや、ゴッホの描く自然の風景は、そこにどんな風がふいていただろう、どんな匂いがしたかな、音は?声は?光は?暖かい?寒い???って、その想像が騒々しく巡ってくるところにエネルギーを感じる。

 

誰に認めてもらえなくても、描き続けた画家たち。評価されないからこそ、自分流で、自分らしさを貫けた、ともいえるかもしれない。

 

ルソーは、強い人だ。