『夜のサーカス』  by エリン・モーゲンスターン

夜のサーカス
エリン・モーゲンスターン
宇佐川晶子 訳
早川書房
2012年4月10日 初版印刷 
2012年4月15日 初版発行
The Night Circus (2011)

 

どれかの本で言及されていたのだ・・・。でも、どれだか、忘れてしまった・・・。アメリカ文学の傑作の一つとして紹介されていたような気がする・・・・本じゃなくて、雑誌とかだったかもしれない。。。

なんにしても、気になったので、図書館で借りて読んでみた。

 

表紙をめくると、
” 夢のサーカスへようこそ。

夜だけ開く 黒と白のテントの中、待っているのは言葉を失ってしまうようなショウの数々。氷でできた庭、雲の迷路、優雅なアクロバット、 漂うキャラメルとシナモンの甘いにおい・・・・。
しかし、サーカスではひそかに熾烈な戦いが繰り広げられていた。

若き 魔術師シーリアとマルコ。幼い頃から 競い合いを運命づけられてきた2人は、相手に対抗するため 次々とサーカスに手を加え、 魅惑的な出し物を作り出していく。 しかし、 2人は、 このゲームの過酷さをまだ知らなかった。

魔法のサーカスは世界中を旅する。風変わりな オーナー、 とらえどころのない軽業師、謎めいた占い師、 そしてサーカスで生まれた赤毛の双子・・・様々な人々の運命を巻き込んでゲームは進む。

世界で絶賛された幻惑とたくらみに満ちた デビュー作。” とある。

 

著者のエリン・モーゲンスターンは、1978年7月8日 、アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 マーシュフィールド生まれ。作家、マルチメディア・アーティスト。本作がデビュー。

 

感想。
あぁ、、読んでしまった。
わけがわからなくて、途中で辞めようかと思いながら、、、読んでしまった。
これは、ハッピーエンドというのだろう。
面白かった。

どうなるんだろう?ってドキドキしながら、読んでしまった魔法の世界。本当に魔法なのか、奇術なのか、はたまたスピリチュアルなものなのか、、、死んだ父はお化けで出てきてストーリーに介入してくるし、時空を瞬間移動しちゃったり、、、。

目次はないのだけれど、ちゃんと、物語の区切れにタイトルがついてる。

 

最初は、「期待」

”そのサーカスは、いきなりやってくる。”
と、本書のテーマ、サーカス「ル・シルク・デ・レーヴ」についての紹介。そのサーカスは、日暮れに開場し、夜明けに閉場する。そう、夜のサーカスなのだ。「ル・シルク・デ・レーヴ」を直訳すると、「夢のサーカス」。夜の間だけ開催される謎のサーカス。そのサーカスを舞台に繰り広げられる魔法の数々。でも、それは、、、実は、命をかけて技を競い合う戦いの場としてしくまれていたのだった・・・・。

本当に、奇術なのか、魔法なのか、、、、まぁ、どっちでもいい。まるで魔法の世界。

そして、
「Ⅰ 礎  思いがけない届け物  1873年2月 ニューヨーク」
として、始まる。

 

以下ネタバレあり。

魔術師プロスぺロの元に届けられたのは、「少女」。少女のコートには、手紙がぶら下がっている。名前は、シーリア。その面影は、自分とソックリ。そう、顔を見たことも、生まれたことさえも知らなかった自分の娘が届けられた。

 

「ある紳士の賭け 1873年10月 ロンドン」
そして、プロスぺロ、本名ヘクター・ボーウェンは、娘のシーリア・ボーウェンを訓練して、かつての自分のライバルの弟子と競わせることを相手に宣戦布告する手紙をおくった。そして、シーリアをつれてライバルの元を訪れる。灰色のスーツのその男は、6歳になるかならないかのシーリアの技を見せつけられ、戦いに応じることにする。灰色のスーツの男は、「チャンドレッシュ・クリストフ・ルフェーヴェル」の経営するサーカスを競争の場として指定する。

シーリアの意思とは無関係に、大人の男の決闘が、子どもを使って開始される。

 

「灰色の影  1874年1月 ロンドン」
灰色のスーツの男・アレキサンダーは、弟子にすべき子どもをさがし、孤児院をおとずれ、5月で9歳になるというマルコを選び、連れ帰る。そう、マルコがシーリアの対戦相手として訓練をつむこととなる。

 

「魔法のレッスン  1875・1880年
そして、シーリアは劇場から劇場へと渡り歩き、魔術を身に着けながら成長していく。主には、ニューヨーク。そして、ボストン、シカゴ、サンフランシスコ。 ときには ミラノやパリ、ロンドンへもいった。

一方、アレキサンダーに拾われたマルコは、 ロンドンのタウンハウスで大きくなった。 誰にも会わず、3度の食事すら1人だった。孤児院のときから好きだった読書は、好きなだけやらせてもらえた。本を書き写したり、記号や文字も生み出したりし、さまざまな言語にも触れていった。そして、知識をつみかさねていった後、訓練が開始された。

シーリアは、壊れたものを治したり、こぼれたお茶をティーカップにもどすことも訓練した。しまいには、父に指をナイフで切り裂かれ、血のしずくをもとにもどし、傷を癒やすことまで習得する。

このあたりは、もう、魔法使いの物語・・・・。


「ル・バトルール 魔術師  1884年5・6月  ロンドン」
少年は、19歳。アレキサンダーにあてがわれ、タウンハウスから大英博物館がみえるフラットに移動し、1人暮らしを始める。それは、形式的レッスンが終わったということだった。マルコは、ある日、いつもメモしてあるくノートを落としてしまう。そして、ノートを拾ったイゾベルに出会う。マルコは、イゾベルに魔術を使ってお礼をし、キスをする。イゾベルは、マルコに惹かれる。そして、タロットカードで占いをするというイゾベルは、マルコについて回ることとなる。マルコは、本当は、イゾベルのことなど関心はないのに、、、。イゾベルの不幸は、出会ったときから始まっていた・・・。

とまぁ、
こんな感じで、内容、時間と場所をタイトルにした見出しがあって、物語が進んでいく。

 

サーカスのメンバーも、徐々に登場し、ツキコという奇術師の日本人女性がでてきたり、猫使いのもとにサーカス開催中にウィジットとポペットという兄妹の双子が生まれたりする。

話には、シーリアたちのようにサーカスにでるマジシャンの他、サーカスを運営するチャンドレッシュのもとに集まる、サーカスフリークである「レヴール」達が登場する。レヴールは、マジシャンではないけれど、サーカスを運営するうえで、重要な役割を果たし、シーリアたちとも交流する。レヴールが、チャンドレッシュの館に集まる時、シーリアやツキコも参加し、仕事の話をしたり、ファッション、バレエ、日本の神話など様々な話で盛り上がった。

 

なぜか、日本人がでてきて、日本の神話まででてくる。アメリカ人には、ちょっとエキゾチックで魔法のような感じがあるのだろうか・・・。

 

他、マジシャンではないけれど、重要な役割をはたすのが
「真実か挑戦か  1897年9月  マサチューセッツ州コンコード」ででてくる、少年のベイリー。姉のキャロラインとその友達と「真実か挑戦か」というゲームをする。ある時のベイリーに課された挑戦は、「夢のサーカスに忍び込んで、何か物を取ってくる」ということだった。そして、ベイリーは、「ル・シルク・デ・レーヴ」に忍び込んで、迷子になったところをポペットに助けられ、「ル・シルク・デ・レーヴ」に魅了される。

 

そして、月日が進み、、、、シーリアは父が設定した対戦相手がマルコであることも知らずに、マルコと親しくなる。サーカスで繰り広げられる、愛と、闘い・・・。そして、占い師としてイゾベルもそこに加わり、シーリアへの嫉妬。途中、シーリアの父は死亡するのだけれど、それでも亡霊となってシーリアとの会話を続ける。

 

マルコとシーリアは、惹かれ合っていくのだが、マルコが対戦すべき相手であり、その戦いが終わるのは、どちらがの命が尽きた時、、、、という運命を知ってしまう。父の決めた戦いなんて、やめてしまいたいシーリア。でも、サーカスを大事にしたいシーリア。闘いか、サーカスか、マルコか、、、、。

 

と、アメリカ、ロンドン、パリ、、、と、サーカスが移動するのと共に、話の舞台は移動する。また、時間も時々前後するのだけれど、それぞれ最初に年月がかかれているので、頭の中で整理しながら読み進むことができる。

途中、サーカスにとって大事な後援者だった、レヴールたちのうち、1人はサーカス開催中にナイフで刺されて死亡し、1人は、灰色のスーツの男に出会った後に魔法にかかったように電車のホームから足を進めてはねられて死亡・・・・。

暗い背景も背負いながら、物語はシーリアとマルコの闘い、、、いや、、、愛へ、、、。

と、最後はネタバレしないことにしておこう。

ただ、シーリアにとってはハッピーなはず、、、ということで。。。

 

何と言うか、話の流れが大波になったり、小波になったり、、、時間が前後することもあって、すごいスピード感で展開するわけではないけれど、なかなか、面白かった。 

 

サーカスって、不思議な世界。。。その中に、もっと不思議な世界があるかも、、ね。

 

しかし、サーカスって、、、私個人的には、あまりいい思い出がない。サラリーマン時代に出張先のモスクワで、本場のサーカス?!についれていってもらったんだけど、、、最前席でみたんだけど、、、なんと、私の目の前でラクダがビッグなくしゃみをしたのだ・・・。ラクダのよだれと、、、鼻水と、、、。頭からかぶった。あれを悲惨な経験と言わずして、なんという・・・。まぁ、笑うしかないってかんじだったけど、臭かった・・・。

 

サーカスをみるのなら、最前席より、ちょっと後方をおすすめします。。。。

 

と、

アメリカ文学、ファンタジーの世界は、やっぱり、アメリカンな感じがする。ざっくりした感じかな。やや、繊細さに欠けるような気はするけれど、、、これはこれで、面白い。

 

読書は楽しい。