『マチルダとふたりのパパ』  by メル・エリオット

チルダとふたりのパパ
メル・エリオット さく
三辺律子 やく
岩崎書店
2019年3月31日 第一刷発行


『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第四章 家族の会いに包まれる」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

表紙の裏には、
” パールは マチルダ の ふたりのおとうさんから 
ゆうごはんに しょうたいされました 
チルダのかぞくは どんなすてきな くらしをしているのかな と、
おもいをめぐらせます
ところが マチルダのいえにいってみると・・・”
と。


そして、様々な形態の家族とおもわれるイラストが、並んでいる。

 

著者のメル・エリオットは、英国在住。2007年に ロンドンの ロイヤル・カレッジ・オブ・ アート卒業。 広告制作を経て大人向けの塗り絵など大好きなポップカルチャーと イラストの才能を生かし 自分の心に響く 欲しいものを 作り続けている。

 

これは、いわゆる子供向けのLGBTQ教育のための本なのだろう。

 

パールは、お父さんとお母さんと暮らしている。
パールの学校に、転校生のマチルダがやってきた。どろんこ遊びを一緒に楽しんでいるから、小学生くらいだろう。そして、マチルダを学校まで送ってくるお父さんが、昨日と今日でちがうお父さんであることに気が付くパール。

二人のお父さんのいるお家は、パールのおうちと違って、お菓子がご飯だったり、好きなだけ遊んでも怒られないおうちかも!と、ワクワクしてマチルダのお家に遊びにいくパール。

でも、マチルダのお家のご飯は、普通のメニューで、パールがお家でたべているものと、おんなじ。ベッドの上で飛び跳ねてあそんでいたら、しずかにしなきゃだめだよ、っていわれちゃった。

 

お家にかえって、ママに「マチルダのお家どうだった?」と聞かれたパールは、
「そうぞうしていたのと ちがって、ぜんぜん、ふつうでつまらなかった」と。

そして
「うちの パパと ママと かわらないんだよ!」

THE END。

 

う~~ん。
ちょっと恣意的すぎて、個人的には好みの絵本ではなかった。別に、LGBTQにも同性婚にも、とくに違和感はない。あっていいと思う。

 

残念なのは、「家族愛」があふれた物語ではなかったこと・・・・。普通過ぎた?!パールのように、普通過ぎてがっかりしちゃったかも・・・。

「うちの パパと ママと かわらないんだよ!」というセリフが、そんなわけないだろう!!と突っ込みたくなる。どんな家族も、変わらないなんてはずがない。パールに、「うちの パパと ママと かわらないんだよ!」といわせているところが、ちょっと、、、なんか、、、、もうちょっと、工夫がほしいかな、、、なんてね。

 

確かに、LGBTへの理解のためには、こういう絵本も必要なのだろう。けど、「かわらない」ってそんなに大事なのか?!?!「かわっているけど、素敵だった」のほうが、素敵じゃない?!

 

また、子どもがこういう本に触れられる機会そのものが、養育者、多くの場合は親の選択によってしまう。学校でそろえる本なのだろうか。

 

2019年のブレディみかこ著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で、すごく印象的だったのは、結局、子供は親(養育者)の色に染まってしまう、、ということだった。息子をイジメなくなったはずの男の子が、やっぱり、親と過ごしているうちに親のもつ価値観に戻ってしまう。

子どもへの働きかけも重要だけれど、親世代の受容性を高めることも大事なんだろう。。こういう本、大人が読むことの方が大事かもしれない。けど「かわらない」ことを強調するのではなく、それぞれ違いがあってそれでいい、ってことの方が、もっと大事な気がする。。。。

 

『世界をひらく60冊の絵本』のなかでは、

同性カップル同性婚は、パールが感じたように、まったく「ふつうのこと」なのだとおもえる子どもたちが増えると、家族のあり方に対する社会の考え方も、 少しずつ変化するのではないだろうか。 絵本は、 そういう意味では、 社会的な動きを促進させる力を少しであっても持つと言える。” とあった。

 

日本でも「パートナーシップ制度」として同性カップルを公認する自治体が増えてはきたが、国レベルでの議論は他国に比べると遅れている、とも。

 

同性婚は、オランダで2001年、 ベルギーで2003年、スペインとカナダで 2005年、 南アフリカで2006年、スウェーデンで2009年、  デンマーク 2012年、台湾で 2019年と合法化されている。先日、タイでも合法化が可決された。

個人的には、法律上の婚姻関係でないとパートナーの医療行為や相続に関わる権利すらないということの方が、改善すべき点ではないのか、という気がする。 

 

一夫一妻の軛。。。。このWEIRDな世界、、、、なんだな。

megureca.hatenablog.com

 

いろいろあって、それでいい。

普通ってなに?

時代によって、「普通」も「常識」も「正義」も、、、、変わりえるのだ・・・。

自分の中の「あたりまえ」を疑ってみる。

それを受けいれるのが、受容性の第一歩かもしれない。

 

普通とか、かわらないってことより、それぞれ違うってことを受け入れることの方が、大事な気がする。そして、それが、、、みんなちがっていて当たり前ってこと。