『ありがとう アーモ!』 by オーゲ・モーラ

ありがとう アーモ!
オーゲ・モーラ
原泉 訳
すずき出版

thank you, omu!


『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第四章 家族の会いに包まれる」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

作者のオーゲ・モーラは、アメリカの絵本作家、ナイジェリア出身の祖母、両親の元に育つ。アメリカのロードアイランド・スクール・オブ・デザイン卒業。イラストレーションの学士号取得。初の絵本である本書で、コールデコット賞オナー賞をはじめ、数々の賞を受賞。亡くなった祖母のレシピをもとに料理をつくって、楽しんでいる。

そう、これは、アーモが、お料理をつくって、人の輪が広がるお話。

 

好きだなぁ。
こういうの、好き。
そして、私も、アーモみたいに、いろんな人につくった料理を食べてもらって、幸せになってもらいたい。

色で描かれた、輪郭のスッキリしたイラスト。あれ?イラストかとおもったら、切り絵かも。だから、線がすっきり。そして、ちょっと立体感がある感じが楽しい。

 

表紙を開くと、

”うわぁ、おいしそうなにおい!

シチューのにおいを かぎつけた
きんじょの ひとたちは、つぎつぎに アーモのアパートにやってきた。
その ひとりひとりに きまえよく シチューを わけてあげたのだけど・・・・。
アーモ、そんなに あげちゃって だいじょうぶなの?

わかちあいの こころが あざやかに
えがかれた、あたたかい、ものがたり。”
とある。

そして、
”読者のみなさんへ
「アーモ」って、「女王」という いみの イボ語なんだ。この本のなかでは、「おばあちゃん」みたいな かんじで つかっているよ”って。

 

切り絵、コラージュ、よく見ると、シンプルだけど、細かく、ワクワクするイラスト。

 

バス通りのアパートのてっぺんの部屋で、シチューをつくっているアーモ。
シチューを煮込みながら、本を読むことにしたアーモ。

すると、トントン。
「あれま、ぼうや!」

したであそんでいたら、いいにおいがして、「なんだろうっておもったの」というぼうや。

アーモは、ちょっとまよった。自分の晩御飯のシチューだから。
でも、たっぷりあるから、わけてあげようかね。

それで、アーモは 大きなお鍋から、とろーり とろとろ
特製シチューを おわんによそって、分けてあげた。

 

しばらくしたら、また、トントン!
おまわりさん。

トントントン!
ホットドック屋のおじさん。

タクシーの運転手さん、お医者さん、弁護士さん、ダンサー、パン屋さん、えかきさん、歌手、サッカー選手、、、、、おまけに市長さんまで。。。

ドアがたたかれるたびに、アーモは、シチューを分けてあげた。

 

さぁ、夕ご飯の時間。
アーモが、特製シチューを食べようとしたら、
お鍋の中は、、、からっぽ。

アーモが空っぽのお鍋をみてがっかりしていると、
トントン!トントン!トントン!

あらまぁ、ぼうや、おまわりさん、ホットドッグ屋さん、工事の人、おいしゃさん、、、、、、シチューを分けてあげたみんながたっていた。

ぼうやが、
「ぼくたち、 わけてあげに きたんだよ!」

シャキシャキサラダ、こんがりチキン、甘いケーキ、、、、

狭い部屋に、みんなではいっていっしょに食べたり、踊ったり、笑ったりした。

アーモの夕ご飯は、いままでで、最高のご馳走になったんだ。

おしまい。

 

かわいい。
ほのぼの。
いいね!いいね!

 

また、イラストが、コラージュがとてもいい。お鍋の中のシチューは、なぜか花柄なんだけれど、それがまた、アーモの優しさを表しているようで、可愛い。

へぇ、、、、こういう、絵本もいいな、って感じ。

 

作者のあとがきによれば、アーモのモデルは作者の祖母。
”祖母は大きなおなべの中身をまぜながら、ラジオの音楽にあわせて、楽しそうに体をゆらしていたものです。おなべの中身は、たいていシチュー。家族でテーブルをかくむ夕食のとき、近所のひとがきていれば、いっしょにいかがとさそいましたし、友だちがふらりとたちよったら、やっぱりいっしょに食べようとすすめました。祖母のテーブルは、みんなに解放されていたのです。”と。

そして作者の周りのたくさんの力強い女性たち、思いやりや愛にみちた精神が、この本のもとになった、と。

アーモのシチューがたべてみたくなる。

そんな、一冊。

 

食べ物が人をつなぐって、原始的であり、かつ、言葉が無くても通じるコミュニケーションのように思う。

 

若竹千佐子『かっかどるどるどう』にでてくる、片倉吉野さん。やっぱり、アパートの一室で食事をふるまうもんで、人が集まってくる。

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原田マハの『まぐだら屋のマリア』も、小さな定食屋さんが人をつなぐ。

megureca.hatenablog.com

 

普及の名作、チャールズ・ディケンズ の『クリスマス・キャロル』も、最後は、シチメンチョウの料理を届けて「仲間に入れてもらえるかな、フレッド」といって、新しい人生へ。

megureca.hatenablog.com

 

料理が主役の物語は、数知れず・・・。

食べ物は、人をつなぐ。

間違いない!

だから、私は、料理が好きだ!!

 

そして、私にも、お料理上手だった祖母の血が流れているかもって思うと、嬉しくなる。私の祖母の料理も、なんでも美味しかった。そして、祖母は料理で人を喜ばせる達人だった。なんせ、札幌でお店もやっていた人だから。

 

やっぱり、こういう絵本は、いいね。

今日も、美味しい料理をつくろう!!