マンガ日本の歴史 21
土民、幕府をゆるがす
石ノ森章太郎
中央公論社
1991年7月5日 初版印刷
1991年7月20日 初版発行
『マンガ日本の歴史 20 足利義満、「日本国王」となる』の続き。
20巻では、足利義満がいかに自分の地位を高める欲望に沿って生きていたか、という話。また、北山弟で花開いた北山文化、能の世界についても紹介。21巻は、義満亡き後、義持、義量(よしかず)と将軍が子へと引き継がれるが、義量が19歳で子を持たぬままに若くして亡くなり、義持も次の将軍名を明言せず、、、くじびき将軍、義教(よしのり)の誕生。。。
目次
序章 くじびき将軍
第一章 万人恐怖
第二章 悪御所の犬死
第三章 土民蜂起これ初めなり
第四章 本主に返付せらるべし
室町時代って、よく知らなかったけれど、、、そうか、こうして応仁の乱へ突入したのか、、、というのがわかる一冊。
ようするに、くじびきで決まった将軍・義教が自分は「紙の神託」で将軍になったのだと、いい気になって、勝手、好き放題。。。くじびきが外れた面々は、義教に恨みをつのらせる。加えて、家督にあれこれ口出しされて挙句の果てには改易までいいわたされたり、守護大名たちも、ふんだりけったり、、、。
で、とうとう、がまんならなくなった宿老・播磨の赤松満祐(みつすけ)は、自邸に義教を招いて宴をひらいている間に、義教を暗殺!なんと、将軍を殺してしまう。前代未聞の将軍が殺されるという「嘉吉の乱」。
みんな恨みつらみをもっていた義教だったけれど、さすがに、将軍が暗殺されてバンザーイ!と喜ぶわけにはいかず、幕府としては一応赤松成敗の軍をおくる。幕府軍が播磨に終結している間に、京では農民たちが一揆をおこすなど、世の中は不安定になる。一方で、貨幣経済がはじまったまちまちでは、世の中の不穏さは我関せずと、特産品の生産が盛んになるなど、商業が発達する。その経済力によって、力をつけていく人びと。。。
産業資本の酒屋、金融資本の土倉、両者は互いに関連し合って発達した。
そのようにして、幕府権力の空白をねらって、土豪、国人領土が栄えていった。
やはり、貨幣経済となってからは、誰かが力をつけていくのに、「金」が絡んでくるのだ。経済と社会の仕組み、切っても切り離せない。
本書を読んでいると、義教は、本当にとんでもない将軍で、我儘。義満も自己顕示欲の塊のような人物だけれど、この足利家にはサイコパスの血があったのだろうか、、、と思う。自分のことしか考えない。切れ者でもあるけれど、感情や共感を感じさせない。ある意味、尊氏だって、後醍醐天皇を守ったり裏切ったり、、、弟を死に追いやったり。恐るべし・・・足利の血、、、か?!?!
くじびきで選ばれた将軍が、人格として問題があって、その才覚なしだったのは止む無しとして、じつは、一節によればくじびきは八百長だったのではないか、、、というはなしもあるらしい。
ま、そういうとんでもない将軍のもと、人びとは不満を募らせ、一揆へ、そして下剋上へ、、、という、室町時代の黒歴史、、ともいうべき一冊が21巻だった。
そのころ、李氏朝鮮では文化的にも最盛期を迎え、明は安定した時代を迎えていた。
が、、日本は京都が灰燼に帰す戦国時代へ、、、、。
続きは、22巻で。