「血も涙もある」
山田詠美
2021年2月25日
新潮社
今年の、山田詠美、エイミィ、ぽんちゃん。
黒い背景に、レモンやリンゴ、ジビエなど、美味しそうな食材が彩る、装丁。
帯には、
「私の趣味は、人の夫を寝盗ることです」
続く、説明書きには、
「有名料理研究家の妻、年下の夫、そして妻の助手兼夫の恋人。3人が織りなすのはユーモラスで残酷な、極上の危険な関係」
「ファースト・クラッシュ」を読んで、ぽんちゃん節に体を慣れさせてから?!いざ!
あは。ふふふ。
はぁ、そうきたか!!
あぁ、セツない。
ダメ男。
ダメ女。
なかなか楽しく一気読み。
目次もいい。
1.lover
2.wife
3.hosband
4.lover
5.wife
6.hosband
7.lover
8.wife
9.husband
10.people around the people
以下、ネタばれあり。
主人公は、3人。妻、夫、恋人。
目次にあるように、それぞれの語りが、一つの章。
有名料理家の妻は、50歳。その夫は10歳年下の40歳。料理家の助手として働いているのは35歳の和泉桃子、モモ。ミヒャエル・エンデのモモ。
料理家の先生は、アーティストの夫のもとへ、職場で作ったお弁当を助手に届けさせる。 仕事とは別に、夫のためにきちんと料理をする妻。10歳年下の夫のために尽くす妻。妻の稼ぎで食っている、とは言わないものの、妻の稼ぎがある分、悠々自適?なアーティスト生活を謳歌している夫。
ある日、お弁当を届けたのは、モモだった。そして、「ねぇ、良かったら、一緒に食べない?」と夫に言われて、一緒に妻の作った美味しいお弁当を食べる。そしてすぐに一緒にいることの居心地の良さに気が付いてしまう夫とモモ。
二人の関係に、うすうす気が付いている妻。余計なことに、「あの二人、二人だけでもあっているみたいですよ。」と告げ口する秘書。
夫の浮気には慣れているふりをする妻。年上の妻として、心の広いところを見せなきゃね、なんて。
助手の中でも、優秀だし、妻もモモを気に入っている。
モモも、先生のことも、その夫ののことも、どっちも好き。
夫も、妻の事も好きだし、モモのことも好き。妻と別れる気もないし、モモとの関係も続けたい。
先生は、見て見ぬふりを続ける。
「私は、『浮気され妻』なんかではない。『浮気させ妻』なの」、と強がる妻。
でも、3人の均衡は、ある日崩れる。妻は、とうとう、モモを問い詰める。先生のことも、その夫のことも大好きなんだと泣きじゃくるモモ。そして、出社しなくなったモモ。さらには、 雑誌に「有名料理家の夫、不倫!」と書かれたことで、さらにことはもつれるかとおもい気や、夫はそんなに有名ではないのでたいした話題にならなかった。
夫に対して、「ビッグネームでなければ不倫関係なんかスキャンダルにならない」と言ってしまった妻。暗に、「私のはビッグネームだけど、あなたは違う」と言ってしまい、ちょっと傷心の夫。。。夫を傷つけたことに気が付く妻。倫理に反した、、、これこそ不倫。。。
くずれた、三人それぞれのバランス。
そんな中、ある日、秘書から「先生が倒れました」と連絡をもらう夫。駆けつける夫。病院には、自分より先に美大仲間の友人、玉木がいた。妻は、過労による労作性狭心症で、命の別状はないと。
最終章、病室の妻は、抱えていた仕事をしばらく、モモに託すことを決める。
期待に応えるモモ。
先生の夫とは会わないと決めたモモ。先生が期待してくれているのだから、夫より先生を選んだモモ。
傷心で、二人で行かずじまいだった街へ、ゲイの友人に付き合ってもらって旅に出る。想いにふけっているときに、突然、
「和泉桃子さん、月がとっても綺麗ですね。」の声。
I love you.
それは真っ昼間の、再会。
最後に、先生が倒れたのは、職場ではなく、玉木の家だったことがわかる。
そう、妻が夫の不倫を相談していた夫の友人、玉木。
不倫をしたのは、誰でしょう。
そう、倫理にそむいてしまうことは誰にもあるのです。
そう、血も涙もあるから。
さすがだなぁ、という構成。
テンポもよいし、はらはら、どきどき、、、。
引用される文学や、アート。
本当に、エイミィの本は世界が広がる。
平兼盛、「忍れど、色に出にけり、、、、」
男女の愛の物語は、
人間の愛の物語なのである。
そして、50歳だって、恋をするのである。
人は、いくつになっても愛なしには生きていけない。
愛される愛はなくても、愛する愛があると、生きていけるのである。
世界は善に満ちている。
そう、愛に満ちているのだ。
今回も、楽しませてもらいました。
エイミィ、ありがとう。
2月に出版された本だけど、
なんとなく、
この暑い8月に読むのに向いていたかも。
あっけらかんの太陽の下で読むのに向いているかも。
読書は、楽しい。
さぁ、今日は何を読もうかな。