印象派画家たちの友情物語
ARTIZON MUSEUM(アーティゾン美術館)で開催中の展覧会に行ってきた。
アーティゾン美術館は、昔のブリヂストン美術館。2015年頃から建て替えが始まって、東京駅から八重洲の地下街を抜けると目の前。京橋の同じ場所に建てられた。あいだに、コロナのどさくさもあって、気がついたら、名前を変えて開館していたって感じ。株式会社ブリヂストンの創業者、石橋正二郎のコレクションを公開している。
「ARTIZON」(アーティゾン)は、「ART」(アート)と「HORIZON」(ホライゾン:地平)を組み合わせた造語で、時代を切り拓くアートの地平を多くの方に感じ取っていただきたい、という意志が込められているそうだ。
東京駅からは徒歩圏だし、都会の中の美術館。
10月2日に始まったこの展覧会は、ずっと行きたいとおもいながら、、、気が付けば12月。年末年始のざわざわになる前に!と思い立って、行ってきた。ネットで予約していく。コロナのせいだろう。入場時間が区切られている。でも、一度中に入れば、退館はいつでもいい。
1200円/大人。
コレクションの多さからすると、1200円は破格に安い気がする。
そして、今回思ったのは、なんて、警備員が多いのでしょう?!?!
建物の入り口から、各階から、、、展示室の中というのは警備員さんというか学芸員さんが必ずいるものだが、展示室外の警備員の多さに驚いた。
中は、とても広々として、気持ちい。
平日の昼間ということもあるだろうが、ほとんど混んでいないし、好きなだけ好きな絵の前でのんびりできる。
私は、美術館や博物館の展覧会に行くと、必ず音声ガイドをかりるのだが、本美術館は、無料の音声ガイドが手持ちの携帯電話やタブレットで聞くことが出来る。携帯電話とイヤホンを持っていくのがおすすめ。これ、なかなかいい!!自前のイヤホンだし、無料だし!
しかも、館内GPS機能で、音声ガイドマークのついている作品の前に立つと、その作品の説明画面に出てくるので、再生マークをクリックするとすぐに聞ける。
首からあの重い再生装置を下げる必要もないので、肩もこらない。
他の美術館も、こうしてくれたらいいのに、と思う。
で、展覧会の本題。
印象派の展覧会とは別に、
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌 M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」という展示も行われていて、おもいがけず、青木繁の『海の幸』を見ることが出来た。学校の美術の授業とかで、目にしたことがある人も多いのではないだろうか?裸の男のひとたちが、串刺しにしたサメを担いで浜辺を歩いている絵。その中の一人だけ、白い顔が画面からこちらを見ている。どうやら、その白い顔の人は、青木の恋人だったらしい。そんな解説をしみじみとよんでしまった。
同じ展示会場に、坂本繁二郎の馬の絵もあった。岡潔が、著書の中で、坂本繁二郎の馬について、語っていた気がする。点と点がつながって、おもわず、ふふふ。
そして、階をかえて、いざ、印象派の世界へ。
中に入ってみて広さに驚いた。これで本当に1200円でいいんだ!!と思った。リピーターで来てもいいなと思った。12時半頃に入場して、お腹が空いたので1時間ちょっとで退館してしまったが、 この広さ、快適さ、ゆうに2時間は楽しめると思う。
タイトルとなっている「画家たちの友情物語」。印象派画家の相関図が資料として用意されていた。これなかなかの力作。
一部、ネットでもみることができる。
マネから支援を受けていた、印象派:クロード・モネ(1840—1926)
モネの友人、印象派:アルフレッド・シスレー(1839-1899)
モネの友人、印象派:カミーユ・ピサロ(1830-1903)
モネの友人、印象派:ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)
ピサロを尊敬し、互いに影響し合った、ポスト印象派:ポール・セザンヌ(1839-1906)
ピサロ、セザンヌに影響をうけた、ポスト印象派:ポール・ゴーガン(1848-1903)
ポール・ゴーガンと共同生活をして後に破綻する、ポスト印象派:ファインセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)
などなどなどなど、、、、、、。
人間関係が矢印で入り乱れている。
そして、彼らの作品が、ずらり。
かなりの見ごたえ。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《モンマルトルの風車》
ポール・セザンヌ 《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》
などなど、じっくりとのんびり見ることが出来る。
私は、20歳の時に初めての海外一人旅をした。モンマルトルの丘に行くために。
パリの安ホテルに一週間。美術館三昧とモンマルトルとヴェルサイユ宮殿。ルーブルのピラミッドができる前だった。当時は、まだワインには興味はなかったので、スケッチブック片手に、美術館三昧。学生貧乏旅行で、秋のパリは寒くて、泊まっていたホテルがあったモンパルナスの裏通り、小さなブティックで、コートを買った。30年たった今も、時々着ているコート。さすが、パリのお店。丈夫??な生地だったらしい。
モンマルトルの丘は、からっ風が吹きすさぶ、という感じだったけれど、見下ろすパリの市街は、一人旅の解放感をさらに解放してくれる感じだった。
その後、何度かモンマルトルへ行っているけれど、最初の時ほどの感動は、、、、無くなってしまった気がする。
セザンヌの描く、サント=ヴィクトワール山。いったい、どれだけの数をかいたのだろう、とおもうくらい、たくさんある。サント=ヴィクトワール山は、セザンヌの生誕地エクスの郊外にある標高約1000メートルの山で、「聖なる勝利」という意味を持つ山。南フランスの町エクス=アン=プロヴァンスの山。
今回、展示されていたのは、わりと暗めの色彩だった。
そして、なぜか、日本ソムリエ協会の教本の中で、プロヴァンスを代表する画家としてセザンヌとサント=ヴィクトワール山の話がでてくる。で、試験問題にもなったりする。
特別展示コーナーには、「挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」という企画が展示されていた。
絵画とワインも、切り離せない。
世界は関係でできている?!
コロナで、美術館からちょっと足が遠のいていたけど、やっぱり、美術館はいい。
そして、本美術館は、ミュージアム・ショップが地味なのも、またいい。あんまり、商売根性でやっている感じがしない。
荷物のロッカーも、100円いらない。
返金される仕組みだとしても、100円玉が無いと使えないロッカーはちょっと不便。本館は、普通にロッカーキーがついている。
個人のコレクションが基になっているわけだが、作品だって倉庫にしまわれっぱなしじゃかわいそうだ。こうして、展示してもらえるのはありがたい。
1200円の価値、おおいにありだった。
むくむくと、創作意欲がわいてきた。
絵画鑑賞も、自作するというアウトプットをするとなお楽しいかも。
見るだけでも、癒されるけど。
余計なことを考えずに、その絵の世界に浸る時間もいいもんだ。
1200円の小旅行。
いってよかった。