フーテンのマハ
原田マハ
集英社文庫
2018年5月25日第一刷
初出 「小説すばる」2009年10月号~2010年12月号、2015年6月号~2016年12月号
原田マハさんのエッセイを編集したオリジナル文庫。
図書館の原田さんの棚にあったので借りてみた。
裏の説明には、
「とにかく旅が好き!食、陶器、絵画、鉄道など目的はさまざま。敬愛する寅さんにちなんで”フーテン”を自認し、日本のみならず世界中を飛び回る。気心の知れた友・御八屋千鈴氏や担当編集者を相棒に、ネタを探して西へ東へ。『旅屋おかえり』や『ジヴェルニーの食卓』が生まれた秘密は旅にあった!笑いあり、感動ありの取材旅行エッセイ。さぁ、マハさんと一緒に旅に出かけよう」
解説/御八屋千鈴
感想。
ふふふ。と面白い。
そうか、原田さんって、そういう人だったんだ!!
って、ちょっとうれしくなった。
電車の中で読んでいて、クスクス、、プププって、ちょっと笑っちゃう感じ。
2009年頃に「小説すばる」初出と言うから、もう10年以上前。
原田さん自身が40代の頃の話とか、 勤め人をやめて物書きになった話とか、初めて聞く話が多くて面白かった。
”長らくアートの仕事をしていたが、40歳になる直前で、「人生でほんとうにやりたいことは何か?」と考えに考え抜いて、それまで勤めていた会社をすっぱりと退職した。べつだん起業するつもりも、物書きになろうとそのときに決意したわけでもなかった。しかし、「とにかく40代のうちにやりたいことをやりたいようにやりたい人となる。やるっつったらやる!」と啖呵をきってしまった”
のだそうだ。
(笑)
素敵。
なんせ私が原田さんを知ったのはここ数年のことで、美術に詳しい素敵な女性とは思っていたけれど作家デビューをしたのは美術とは関係ない話だったというのも初耳。
タイトルにある、フーテン、というのは、原田さんがフーテンの寅さんのようにしょっちゅう旅をするから。もともとは美術のキュレーターをされていたわけで、勤め人としての出張から、フリーのキュレーターとして独立してからの旅とか、作家として取材のための旅、友人との癒しの旅。どのはなしも、面白かった。
そして、楚々としているイメージでいたのだけれど、違った!!
ある意味、ヤマザキマリさんと気が合うのがガッテン!!って感じ。
フーテンだ。
フーテンを満喫しているし、旅を満喫しているし、時々とんでもない失敗もやらかしたり、 、楽しい。人生、楽しんでいらっしゃるって感じ。
本書にでてくる旅先も国内から海外まで、あちこち、楽しそう。
遠野で座敷童にあった話とか、地方のローカル線で地元の高校生の会話に耳ダンボになってしまう話とか、あとからなぜこんなものを買ったのか?!という珍品を購入してしまう癖とか。。夜のルーヴルで、絵画に浸っていたら、危うく閉じ込められそうになった話とか。沖縄での偶然の出会いからデビュー作『カフーを待ちわびて』が書かれたとか。作品の誕生のはなし、取材の話もでてくる。
どれも、読んだことのあるものは、そうだったのかという新鮮さ。まだ読んでいないものは読みたくなった。
ちなみに、どうやら、ご結婚されていて旦那様がいらっしゃるらしい。でも、フーテンなので、旅は旦那さんと一緒というわけではなさそう。そして、珍品を購入して帰宅する原田さんをあきらめつつ?温かく迎える旦那様って感じ。素敵。
旅の友である、御八屋千鈴さんは、高校の同級生。でも、おんな二人旅をするようになったのは40代になってからだそうだ。それぞれ、自分のペースがあるからこそ長続きする女二人旅。大人の女二人は、最強だ。いつも一緒にいるわけではないけれど、定期的に会う友人。その安心感というのか、癒され感というのか、よくわかる。
友はありがたい。
海外への美術館、画家の足跡をたどった話も興味深い。『ジヴェルニーの食卓』にまつわるモネ、セザンヌ、、、みんなみんな、行ってみたくなる。原田さんの美術愛にあふれる作品。
今年、コロナも落ち着いてきたし、私も海外旅行解禁予定。パリに行って時間があったら、久しぶりにオランジュリー美術館に浸ってこうよう!!思った。
ゴッホについても、晩年のゴッホの身の上(決して裕福ではなかった。しかも、精神病院送り)を考えると、それでもあれだけの絵を書き続けていたことに、取材をしていてどんどん引き込まれていった経緯が語られている。そして、ついには、ゴッホ終焉の地、オーヴェル=シュル=オワーズにも足を運ぶ。
『たゆたえども沈まぬ』は、その取材からうまれた作品だそうだ。ゴッホの弟・テオの目を通じたゴッホの物語りらし。これも、今度読んでみよう。
まだまだ、原田さんの本で読んでいないものがいっぱいある。
読みたい本がたくさんあるって、幸せ!!
ちなみに、フーテン旅の7つ道具が紹介されているので、覚書。
①エコバック(たためる)
②小物バック(小さく薄い)
③マイ箸(マイデザイン)
④マイスリッパ(ビジネスクラス用)
⑤目覚まし時計(たためる)
⑥アクセサリー入れ(たためる)
⑦宅配用ビニール(キャリーケースにかぶせる)
私の7つ道具とかぶるのは、エコバックとスリッパくらいかな。マイ箸か。確かに、海外でホテルでササッと食事を済ませてしまいたい時、便利かも。
あと、ジップロックが私の旅道具の一つ。
あぁ、旅に出たくなる。
もう少し、もう少し落ち着いたら、、、、
それにしても、フーテン、っていいな。
私もこれからは、自分のことを「ぷー太郎です」、ではなくて、「フーテンです」って言ってみよう。
読書は楽しい。
旅は楽しい。
楽しみを待つのも楽しい。