ジヴェルニーの食卓
原田マハ
集英社
2013年3月30日 第一刷発行
まだ、私が原田マハさんを原田マハさんとして認識していなかった頃に、雑誌の書評でみて購入した本。どこの雑誌だったかも、どんな紹介だったかも忘れたけれど、なんて素敵そうな本!!とおもって、ぽちった。
そして、、、なんだか、大事大事に積読になっていた一冊。
まさかの9年前だ。
帯には、
「そこには光が・・・・光だけが見えた。
マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、モネ
新しい美を求め、時代を切り拓いた巨匠たちの人生が鮮やかに蘇る。『楽園のカンヴァス』で注目を集める著者が贈る読む美術館」
と。
『楽園のカンヴァス』は、まだ読んだことがないのだけど、原田マハさんといえば美術。まさに、文字になった美術館のようなお話だった。
最後に「本作は史実に基づいたフィクションです」とある。
4つの作品がおさめられている。
『うつくしい墓』
『エトワール』
『タンギー爺さん』
『ジヴェルニーの食卓』
それぞれ、画家と周りの人々とのお話。
『うつくし墓』では、アンリ・マティスの晩年に、アンリ・マティスの家でお手伝いさんをしていた女性が思い出を語るように、つづられる。マティスとピカソのやり取り。マグノリアの花の想いで。
『エトワール』は、ドガの物語。かつてドガの絵を中心に画商をしていた女性が、ドガの思い出を語る。『14歳の小さな踊り子』をめぐるものがたり。
『タンギー爺さん』は、パリの画材屋の娘が、プロヴァンスへ帰ったセザンヌへ送った数々の手紙。パリへ戻ってきてほしいとつづる手紙。セザンヌはほとんどでてこないけれど、セザンヌの存在がありありと伝わってくる感じ。
『ジヴェルニーの食卓』は、モネ。睡蓮を書き続けたモネ。晩年には白内障で目が見えなくなり、描く気力も失っていく。そんな彼を支えた義理の娘と友人。タイトルに食卓とある通り、美味しそうな食事が並ぶ、ランチや会食のシーンも美しい。
どれも、美しい風景が目にうかぶ物語。晩年を迎えた画家たちと、それを支えた人々の物語。語っているのは、画家ではなく、そのちかくで彼等を支え続けた人々。
なんて、美しい物語なのでしょう・・・。
読む美術館。
まさにそうでした。
モネの睡蓮が飾られているオランジュリー美術館が楕円形をしているのは、モネのリクエストだったらしい。不思議な空間の世界が広がるオランジュリー。行きたくなる。
でも、モネは、ほんとはロダン美術館のなかに、楕円の建物を建てて飾りたかったらしい。
史実にもとづいたフィクション、ということで、どこからがフィクションなのかはわからないけれど、たくさんの参考資料が最後に並んでいる。マハさんの想像なのかもしれないけれど、きっとこんな風だったのではないかと、読んでいるほうも信じてしまう。
そんな一冊。
やさしい、一冊だった。
表紙の睡蓮も美しい。
一枚の絵から、いくらでも物語を紡いでしまう、原田マハさん、素敵だと思う。
モネの光を感じながら読みたくなる一冊。
ほんわかと、やさしく、豊かな時間が流れる感じ。
読む美術館、まさにそんな感じが素敵。
読書は楽しい。