2022年8月24日、稲盛和夫さんが、90歳で老衰のために亡くなった。
ご冥福をお祈りいたします。
京セラの創業者であり、松下幸之助に続く日本を代表する経営者として多くの人に慕われた稲盛さん。直接お会いしたことは無かったのだけれど、知人がJAL会長時代の稲盛さん秘書で一緒に仕事をしていたことから、色々な話を伝え聞いていたので、かってに、ちょっと身近な方のような気がしていた。
5年くらい前だったか、とある勉強会の仲間と、京都にある「稲盛ライブラリー」にお邪魔したことがある。稲盛さんの京セラ時代の技術・経営の情報から、経営思想の情報まで、さまざまな稲盛さんを知る事ができるライブラリーだ。
ホールに大きく掲げられた、「敬天愛人」の書が印象的だった。「敬天愛人」は、西郷隆盛が大事にしていた言葉であり、稲盛さんはそれにならった。西郷が言う「天」は、「人間として正しいこと」のこと。そのような「天」が指し示す正しい道を実践していくこと、そして、人を大切にすること、を表した言葉。
稲盛さんは、心から人を大切にしたいと望み、いかに会社を育てるか、社会に貢献するかを考え、実践し続けた方だったのだと思う。
私の知人は、稲盛さんの人間性に惚れ込んでいた。きっと、本当に大きな人だったのだろう。あの、JALを再生させたのは、技術ではなく心なんだろう。
当時のJALの秘書室は、稲盛さんの部屋ですら扉が無かったのだそうだ。みんなで大部屋に一緒に座って仕事をしていたという。心が広いというのか、偉ぶらないというのか。稲盛さんが様々なところで語っている言葉、「偉そうにしている経営者は間違っている」。ほんとに、大きな人だな、って思う。
稲盛さんの教えは、やっぱり、何といっても「利他」だろう。「稲盛ライブラリー」にお邪魔した時は、「松下幸之助記念館」も一緒に訪れたのだが、お二人とも、世のため人のため、徹底的に「無私利他」だった。
経営者になるということは、当然、社会に貢献しつつも利益を生み出さなければいけない。でも、やっぱり、最後は哲学なのだと思う。
哲学のない経営は、持続可能じゃない。
「無私」とまでは悟れなくても、「利他」の心は持っていたいと思う。
「利己」になってしまうと、人生の喜びは持続しない。
これまで、さまざま経営者、あるいは若者であっても組織を代表するような方々とお話しする機会があったけれど、すごいな、と思う人と言うのは、必ずその人の哲学があり、その人の言葉で語られる。
そして、そこには「利他」がある。
SDG’sだからとか、女性活躍推進だから、とか、、、そういうことに基づいているのではなく、自分の「原理原則」をしっかり持っていらっしゃる。
素晴らしい人たちは、たくさんいる。
それでも、稲盛さんや松下幸之助さんが、経営の神様のように言われるのは、言葉と実践、そして、書籍をたくさん残しているということもあるかもしれない。
稲盛さん、亡くなられてしまったのは残念だけど、こればかりは順番だ。
多くの先輩たちは、わたしより先に逝ってしまう。
残された私たちができるのは、教えていただいた言葉を実践する事だろう。
仕事だけでなく、日々の生活に関しても、時に先人の言葉に耳を傾けて、謙虚に自分自身を振り返ってみないとな、と思う。
訃報は悲しい。
でも、そういうことを思い出させてくれる。
稲盛さん、お疲れさまでした。たくさん、ありがとうございました。
「謙虚であれ」を今一度、噛みしめたいと思う。