『数値化の鬼  仕事ができる人に共通するたった一つの思考方』 by 安藤広大

数値化の鬼 
仕事ができる人に共通するたった一つの思考方
識学 安藤広大
ダイヤモンド社
2022年3月1日 第1刷発行
2022年9月5日 第7刷発行


新聞の広告で気になったので図書館で予約しようと思ったけれども、すごくたくさんの人が予約して待っていた。本屋さんに言ったらベストセラーの棚に並んでいて、定価1500円(税別)。なんちゃってのハウツー本かなとは思ったけれど、1500円ならいいかと思って、買ってみた。

 

本の帯には
”一旦数字に強くなれ。
2022年 全国3000社以上が導入
一番売れているビジネススキル本
大ヒットシリーズ50万部突破

自分らしさも、仕事への熱意も、いらない。
頭の片すみで「数字」のことを考えよう。”
とある。

 

著者の安藤さんは、株式会社識学代表取締役社長。1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社 NTT ドコモ経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長などを歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い、独立。識学講師として数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヶ月でマザーズ上場を果たす。2022年3月現在で、約2700社以上の導入実績があり、注目を集めている。主な著者に29万円部を突破した『リーダーの仮面』がある、と。

ふ~~ん。知らなかった。識学って私がサラリーマンをしていた2020年までには、会社では聞いたことがなかった。

「識学」をネットで検索すると、株式会社識学がでてきた。
HPによれば、    
"継続的な成長"に特化した理論
識学(「意識構造学」の略)は、組織の"継続的な成長"を実現するためのマネジメント理論です。
識学を学び実践することで、組織に発生する様々な”ムダ”が排除され、組織成長にとって本当に必要な部分のみにリソースを集中させることができます。”
とあった。

 

表紙裏には、
”「数字」から逃げ続けるか。
心を「鬼」にして向き合うか。”
とある。

 

感想。
うん、なかなか、面白い本だった。
全287ページのソフトカバー単行本。いわゆるビジネス本としては、ページに空白が多いし、ちょっと、キャリアポルノっぽい所もあるけれど、中身は悪くない。

私が大切にしている「計測する」という考え方とほぼ一致。私は、組織であれ、個人であれ、何かを達成したければ、行動と結果の計測が第一歩、と思っている。その考えと、ほぼ一致する。数字がなぜ大事なのかということをわかりやすく書いていて、社会人になりたての人、ちょっと人生中だるみのベテラン、誰にも、ハッと気づかされるものがあるように思う。
なるほど、50万部売れているわけだ。いわゆる「○○が9割」とか「○○すれば成功」みたいなハウツー本とは質が異なる。1500円、コスパのよい本だった。


目次
はじめに
序章 「数値化の鬼」とは何か
第1章 数を打つところから始まる 「行動量」の話
第2章 あなたの動きを止めるもの 「確率」の話
第3章 やるべきこと、やらなくてもいいこと 「変数」の話
第4章 過去の成功を捨てて続ける 「真の変数」の話
第5章 遠くの自分から逆算する 「長い期間」の話
終章 数値化の限界


著者がいうのは、 モノサシとして「数字」をつかうことで、客観的な視点をえることができ、自分のことも客観的に見ることができるようになるということ。それこそが、他者との誤解を低減させ、組織の生産性向上につながる、と。

たしかに、「数字が全てではない」という考えもあるし、「右脳で考える」数字では表せないデザインやアートの世界も大事。だけれど、著者は、最初に「数字」があって、そのあとに「デザインやアート」がくるのではないのか、と言っている。
そして、やるべきは、他者に対する数字の鬼ではなく、「自分に対する数字の鬼」になること。

数字は、「不足を見るためのもの」で、次の行動を考えるための材料。つまり「未来のための手段」ということ。

数値化することで、誰の目にも明らかな基準を設けることが大事だと。「言葉が過剰で、数字が不足」だと、「くちばっかり」の人になってしまう。うん、それは、ほんとうにそう思う。

「データのない不毛な会議」「好き嫌いや空気の読み合い」「認識の違いによる仕事のエラー」は、「言葉による言い逃れ」が癖になっていることにより起こる。これらのムダをなくすためには、「数値化」が威力を発揮する、と。

 

第1章では、「PDCAサイクル」のD「行動」の数を増やすことの重要性について。 目標が数字で表せないのであれば、「KPI」に数字をいれ、行動数を目標にする。
数うちゃ当たる、っていうのも、結構重要。だから、上司やリーダーのいうことが納得できないからやらない、っていう前に、まずは「言われたとおりにやってみる」ことで、経験回数を増やすのも大事。「意味」は、やってみた後に理解できることは結構ある。
うん、あるある。

 

第2章では、確率が高ければいいわけではない、という話。「5回勝負して、4回勝った勝率80%の人」と、「100回勝負して、60回勝った勝率60%の人」の、どっちがすごいか。60回勝った人の方が、すごいのだ。
そして、「働かないおじさん」問題は、「4回勝負して80%勝率」の人が、「勝率を下げたくないために、勝負しなくなる」ことによっておこる、と。
ほほぉ!!なるほど!
言えているかも。
確率と同じように、平均にもだまされるな!と。

 

第3章では、ビジネスにおいて重要なのは、「変数」を見極めること。「変えられないこと」を変えようとしても何も結果は出ない。「変えられること」を変えられないと思い込んでいても、結果はでない。
目標に対して、「自分が変えられる変数は何か」を常に考え、その変数を計測する。
間違いやすいのは、「時間」だけを変数にすること。会議の時間をどれだけ長くしても、成果が出ないのは、「時間」が注目すべき「変数」ではないから。

受験勉強もそうかな。勉強時間は、一つの計測手段かもしれないけれど、まちがった勉強方法をいくら続けても、効果は上がらないかもしれない。そんな時こそ、「先生のいうことを愚直にやってみる」というのも大事かも。


第4章では、真の変数を見極めて、不要な変数は捨てることについて。To Do Listも、数が多くなりすぎると、どれもが中途半端になってしまう。著者曰く、「5つ」が変数として管理できる最大値だという。
片手で収まる変数(目標)数。結構、大事かも。人の評価においても評価項目が多くなりすぎるとマネジメントの難易度が上がってしまい、結局のところ何が大事かが曖昧になってしまう。優先順位をつけて、もっとも効果的な変数に着目するって、大事。
そして、「自分でコントロールできる変数」に集中すること。コロナが流行ってよく言われたことだけれど、「コロナのせい」にして何もしなければ会社はつぶれてしまう。自分でコントロールできない不可抗力は、いつでもどこでも発生しうる。自然災害だってそうかもしれないし、少子高齢化だってそうかもしれない。でも、それは自分でコントロールできる変数ではない。であれば、自分でコントロールできる変数にエネルギーを集中させるべき。
ほんとに。そう思う。

 

第5章では、「短期的」と「長期的」との視点をわけて考えることの大事さ。短期的に楽なことばかりを選んでいると、長期的に自分の成長は望めない。「長期的」に考えて、「自分の成長」につながる選択をせよ、という話。
そして、「継続」=「時間を味方につける」ことの大切さ。
「長期的に見て未来のトクを選ぶ」こと。そう、実はそれは数値化できない「トク」なのだ。

計測すべき「変数」が短期的なものであったとしても、時間の積み重ねによって、それが未来の「トク」になっていく。それが、時間を味方につける、ということ。

終章では、これまでさんざん「数値化至上主義」を言ってきたけれど、その先に「数字がすべてではない」ステージがやってくるのだ、と。

数字に現れない「やりがい」「達成感」といった心の充足は、数字を追いかけたうえで、ふと、振り返ったときについてきているモノ。その逆はありえない、と。

そして、遊びや会社以外を大事にするのもいいけど、仕事が本業とおもうなら、とことん仕事で「数字の鬼」になれ、と。

 

うん、なかなか、面白い本だった。
結構、共感する考え方。

 

2022年も今日でおしまい。

2023年の数値目標を考えなきゃね。