ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 アダム・グラント

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
アダム・グラント
楠木建 監訳
三笠書房
2016年7月5日 第1刷発行
2020年6月15日 第7刷発行

 

YoutubeでメンタリストDaiGoが薦めていた本。別に、私はDaiGoのファンでもないし、彼のいうことを信用しているわけでもない。けど、時々、情報としては面白いことをいうので、たまに彼の動画を見ることがある。で、タイトルは忘れたけれど、人生で読むべき本だかなんだか、、、で、薦めていた。ほかの本は全部読んだことがあったので、本書を読んでみた。アダム・グラントと言えば、『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』の著者。私の好きな本の一冊。彼の本なら、面白いかな?とおもって、読もうと思った。楠木建さんが監訳だし。図書館で予約した。古い本なので、すぐに借りられた。

 

アダム・グラントは、1981年生まれ。組織心理学者。前述の『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』が有名。世界31カ国で翻訳された。ようするに、ひとから搾取する人間は成功しない、人に何かを提供した結果として何かを与えられる人でなければ成功しないという話。ごもっともである。でも、日本人の感覚からすると当たり前の話の気がするのだが、、、それを伝えるのに、様々な身近な成功事例を持ち出しているところが受けたのだろうか。でも、たしかに、とても面白かった覚えがある。人間は、成功すればするほど、与えられて当然と思いがち。でも、本当に成功している人というのは、どれほど成功しても、「GIVE」が先にあることを忘れない。そんな話だったと思う。

 

本書は、「人と違うこと」をした成功者の話。そして、そういった人たちは特殊な才能や、ずば抜けた直感、度胸があったということではなく、Ordinary people、普通の人なんだ、ってこと。

 

表紙の裏には、

”問題に立ち向かい、実行し、変えていく勇気 
私たちが生きる社会の「当たり前」の向こう側にある真実!

 本書は「本性」としてリスクを回避しようとするふつうの人々が、(ふつうの人だからこそ)、流れに逆らう 不安や恐怖をはねのけて、「オリジナルな何か」を実現させるための様々な ヒントを数多く含んでいる。 楠木建
とある。

 

目次
まえがき 
 これは一人の人生を変えてしまう、すごいアイディア  シェリル・サンドバーグ
Part 1 変化を生み出す「創造的破壊」 「最初の一歩」をどう考えるか
Part 2 大胆に発想し、緻密に進める  キラリと光るアイディアとは 
Part 3 ”無関心”を情熱へ変える方法  まわりを巻き込むタフな説得力 
Part 4 賢者は時を待ち、愚者は先を急ぐ  チャンスを最大化するタイミング 
Part 5 「誰と組むか」が勝敗を決める パワフルな結束をつくる人の見分け方 
Part 6 「はみ出す人」こそ 時代をつくる どこに可能性が隠されているか 
Part 7 ダメになる組織、飛躍する組織 風通しよく、進化を遂げるしくみづくり 
Part 8  どんな「荒波」もしなやかに乗りこなせ  あらゆるものをエネルギーにする方法 

 

感想
うん、まぁまぁ、、、面白かった、かな。私自身がすでに組織を離れているから、組織変革という意味での「Original=独創」ということには、あまり興味がなくなっているからなのか、ちょっとマンネリの話というか、すごくインパクトがある、という感じは受けなかった。でも、当たり前の様で、気が付いていなかったことに気づかされる、という点では、良い本だと思う。

 

Part 1,2は、結構面白い。人々が、成功者に抱く先入観を打ち破ってくれる。天才児は大人になって成功したとしても、独創的な成功ではなく、誰かのあとをうまく継いだようなケースが多いのだと。大人でも、業績をあげることに意欲が強すぎると、オリジナリティが二の次になって、失敗を恐れるようになる。そうすると、必ず成功するようなことにしか努力をしなくなる、と。

 

なるほど、たしかに。かつての私が働いていた会社は、東大卒も京大卒もたくさんいた。でも多くの人は、クリエーターというよりは、一般的ジェネラリスト、、、。失敗をおそれると、オリジナリティのあることができない、というのは、その通りの気がする。もちろん、オリジナリティのある東大卒、京大卒の人もいたけど、ね。

 

リスクをとれる成功者というのは、実は、何でもかんでもリスクをとっているのではなく、「リスクのバランス」をとるのだという。ある分野でリスクの高い行動をとるのなら、別の分野では慎重に行動し、全体的なリスクのレベルを下げようとするのだと。なるほど。たしかに、適度に慎重で、適度にリスクをとる。それは、そうかもしれない。

 

私の場合は、何でもかんでもリスクをとっている?!?!で、失敗してる?!?!
いやいや、実は、そうでもない。世間一般的に言えば、キャリアの成功者ではないかもしれないけれど、そこそこ人生楽しくできているのは、やはり、私が冒険心と臆病心と、両方持っているからなような気がする。好奇心を原動力に生きているのは若い時も50代となった今も変わらないかもしれないけれど、たぶん、怖がりでもある。

51歳で、大手企業の部長職をやめて、いきなりプータローになった私は、人からら見れば大胆な選択、と見えるかもしれないけれど、「金銭的」にはそこそこの余裕があったからこその決断だ。多分、貯金がなければ、そこまで大胆にはなれなかった。
貯金という安全パイを手に入れた上での、離職の決断だった。ま、問題は、やめて何するんだ!ってことだけどね。

 

本書でも言ってる。
失敗することよりも、やってみないことのほうが後悔する”のは、リスクと分かっていても、行動を起こす人間の意思決定の理由だ。

そう、それは大いに共感。私も、「やらない後悔」はしたくない。50代は、60歳定年してからでは、手に入らない。

 

Part 2では、とはいえ、リスクのある行動をとるときには、慎重になれ、という話。様々な行動経済学の本でも可愛そうなくらい「失敗事例」として取り上げられるセグウェイの失敗の話が、本書でも出てくる。「セグウェイ」そのものが失敗だったのはたしかにそうなのだけれど、本書の中では「セグウェイ」の未来を絶賛し、投資した著名人たちのこと。スティーブ・ジョブズもその一人だ。ジョブズのように直感的な成功者は、起業家の熱意に影響されやすく、自分がそんなに詳しくない分野であっても、その情熱とテクノロジーの斬新さに流されやすいのだ、と。

あ、これも、ちょっとわかる。。。しかも、リスクを冒して大きな成功をした人ほど、「情熱」に流されやすい・・・・。ま、それで投資してくれるなら、それでいいのだけれどね。

 

Part 3以降は、How To の内容になっていく。一般的には、ここから先の方が楽しく読めるのかもしれないけれど、私には、「へーー、なるほど」って感じで、「よし、そうするぞ!」というモチベーションにはならなかった。でも、私のようなフリーランスにとっても、大切なことは色々書いてある。

 

How to 含めて、チョット覚書。

 

・組織の中で変革を起こすのなら、仲間を見つけておくこと。それは、「良い上司」タイプではなく、得てして「トゲのある人」タイプの方が、適している。なぜなら、「トゲのある人」の方が、他者や慣習に立ち向かうことをいとわないから。

 

他社の価値観を変えさせるのは難しいが、自分の価値観と相手がすでにもっている価値観の共通点を捜して、結びつけるほうが、ずっと簡単
 これは、ルーシー・ストーンという女性参政権活動が、他の女性活動家と袂を分かつことになってしまったエピソードで出てきた言葉。目指す「目的 goal」が同じでも、価値観が違うと、一緒にやっていけないことがあるのだ。価値観が違うと、それはやり方の違いとなり、ときに大きな溝となりえる。
 なるほど。これは、結構、重要な話。「共通の目標」をもっているのが「会社」という組織だけれど、組織文化醸成のためには、「目標」だけでなく、「価値観」の共有が重要なのだ。知らず知らずのうちに、組織づくりの時にそういうことをしてきた気がする。VISION」や「MISSION」を共有するって、価値観の共有だったのだな、と思う。現在進行形で、私が運営している会社も、もっと価値観の共有が必要かもしれない、、なんて感じだ。別に、仲間割れしているわけではないけど。

 

メッセージの伝え方だけで、共感度は変わる。
病院内に貼られたポスターの事例がでてくる。
「手の清潔は、患者を病気から守ります」というポスターと、
「手の清潔は、あなたを病気から守ります」というもスターでは、「患者を」としたほうが、圧倒的にちゃんと手をあらう医療従事者が増えた、とういこと。
人は、「誰かのためになる」と感じると心動かされる生き物なのだ。うん、こういう性善説っぽい話、好きだな。
そして、何かの「禁止」を訴える時は、「○○しないでください」よりは、「○○する人にならないでください」と、人柄に訴えたほうが効果的だ、と。
例えば、
「飲んだら乗るな!」より、「酔っ払い運転手になるな!」のほうが効果的って。

伝え方って、大事だ。そういうの、意外と学校では習わない。修辞学は、大人になってからちゃんと学ぶとよいと思う。

 

最後の方で、進化し続ける組織で、創造する人に共通なのは、
① 好奇心が強い
② まわりに同調しない
③ 反抗的
とでてきた。

なるほどね。
でもって、事を起こすときには、仲間とタイミングも大事って。

そう、タイミングは本当に大事だ。 

 

まとめてしまえば、リスクをきちんと評価し、仲間をつくって、タイミングよく行動すれば、だれでも「人と違うこと」ができる、って話。

 

ま、誰もが人と違うことをしては社会がバラバラになっちゃう気もするし、べつに「人と違うこと」が素晴らしいわけでもない。それぞれの「個性」は素敵なことだと思うけれど、それをどこでどう発揮するかは、その人の勝手だ。会社では柔順な羊のような社員だって、個人ではりだーシップ的に社会活動をしているかもしれない。

 

そう、やっぱり、

自分の人生は、自分で考えて、自分で決める。

 

そのために正しい情報を手に入れる。

本をもって、旅に出よう!!