『読書する人だけがたどり着ける場所』 by 齋藤孝

読書する人だけがたどり着ける場所
齋藤孝
SB新書
2019年1月15日 初版第一刷発行

 

発売当初、気にはなったのだけれど、まぁ、買うほどではないか、、、と思って読んでいなかった本。図書館で見つけたので、借りてみた。

著者の齋藤さんは、1960年静岡県生まれ。様々なメディアにも出ているので、知っている人も多いだろう。東京大学法学部卒業。明治大学文学部教授。著書発行部数は、1000万部を超えるそうだ。名実ともにベストセラー著者。

 

本の裏の説明には、
”「本」を読むからこそ思考も人間力も深まる
 「ネットで情報を取るから本はいらない」という風潮が広がっていますが、それは本当でしょうか? 私たちは日々ネットの情報に触れますが、キーワードだけを拾い、全く深くなっていないということも多いのではないでしょうか?
読書だからこそ「著者の思考力」「幅広い知識」「人生の機微を感じ取る力」が身につきます。ネットの時代にあらためて問いたい、「読書の効能」と「本の読み方」を紹介します。”と。

ようするに、もっと読書しようよ!という本。

 

目次
まえがき
序章 なぜ、今本を読むのか
   「ネットでいいじゃん」と思っている人に
第1章 読書をする人だけがたどり着ける「深さ」とは
   「深い人」「浅い人」何が違うか
第2章 深くなる読書 浅くなる読書 何をどう読むか
   一流の人の「認識力」を身に着ける

第3章 思考力を深める本の読み方
    読書で思考力を磨く
第4章 知識を深める本の読み方
    知識を持つほど世界が広がる理由
第5章 人格を深める本の読み方
    偉大な人の器に触れる
第6章 人生を深める本の読み方
    勝ち負けよりも生き方
第7章 難しい本の読み方
    あえて本物を選ぼう


まえがきで、「いまこそ本を読むべきだ」というタイトルから始まる。あえて、「いまこそ」と言いたいのだ、と。齋藤さんは、ネットで文章を読むことと、本を読むことは違う、という。ネットは、一つのコンテンツに深く向き合う時間が短くなりがち。ネットの文章を読んでいるときの私たちは、「消費者」であり、読者ではない。本は、著者との対話を体験するもので、私たちはそれを通じて「読者」となる。そして、読者として本と向き合うことによって、人生観、人間観を深め、想像力を豊かにし、人格を大きくしていくことができるのだという。

 

まさに。
私自身、もともと読書は好きではあるけれど、若いころは今ほどの数は読んでいなかった。その反動もあって、今は貪るように本を読んでいる。小説を読めば、登場人物の人生を疑似体験し、実用書を読めば自分の人生に参考になるような事が学べ、読書ほど安上がりで楽しい学びはないと思う。
そして、なにより、読書は自分のペースで出来る。TVや映画からの情報は、その情報の波に自分が乗らないと、気が付くと音だけが耳から耳へ、画像だけが目から目へ、、、ながれていってしまい、脳内に何も残らない。一方、読書は、読んでいてもわからなければくり返し何度も読み直せる。目で追って読んでもわからなければ、音読すると、なんだかちょっとわかるような気になる。

 

何かを学ぼうと思ったとき、そのテーマに関する3000円の本を10冊かっても、3万円。一つのテーマについて10冊も読めば、結構な専門家になれる。一般人としての教養であれば、本で学ぶことで十分だと思う。よくわからない通信教育に投資する前に、まず本で学んでみるって、大事。

読書のすすめは、私も、大賛成!!
私は、マンガだって、読まないより読んだ方がずっといいと思う。マンガがくだらないなんてことはない。『源氏物語』を読破しなくても、『あさきゆめみし』なら読破できるなら、それでいいじゃないか、と思う。

本を読むということが、リベラルアーツを身に着けるにも有効。リベラルアーツの基礎ができると、世の中で今起きていることへの解釈も深まる。本を読んでいても、その中で引用される本や知識について、知っていれば知っているほど、深く楽しむ事ができる。

 

齋藤さんは、ただの物知りと「深い人」は違うという。知識を総合的に使いこなし、教養が人格や人生にまで生きている人が「深い人」なのだという。

たしかに。
「よくこんなことまで知っているな」という知識豊富な人もいるけれど、その人が「深い人」であるとは限らない・・・・。

そして、深い人になるには、読書ほど適したものはない、というのが齋藤さんの意見。
うん、私もそう思う。

 

西郷隆盛が、深い人の例として出てくる。そして、西郷さんは多くの本を読んでいて、特に影響を受けたのは、儒学者佐藤一斎の『言志四録』だったそうだ。私が、時々、Megurecaで紹介している、『言志四録』は、西郷さんの愛読書でもあったんだと。へぇ!!知らなかった・・・。そんなことを知らずに読んでいた。『言志四録』を私に紹介してくれたのがだれだったかは、もう忘れてしまった・・・。でも、私のなかでは何度も繰り返し手にする愛読書の一つだ。

megureca.hatenablog.com

 

第3章からの各章では、それぞれにおすすめの本が紹介されている。私には、そのリストを見るだけでもワクワクする。

 

思考力を深めるには、読書感想文を書くつもりで読むといいという。そして、本屋さんの「ポップ」や、自分が本の帯をかくつもりになって、書いてみるのがよい、と。へぇ、、、なるほど。
私がMegureaに本について書くとき、読書感想文のつもりもなければ、帯のつもりもなかった。ただ、、、自分への覚書、、、、と思っているけれど、読んでくださる方がいるのなら、確かに、そういうつもりで書くといいのかも。。。できるかどうかは別として、ちょっと気に留めておこうと思う。

 

また、思考力を深める読み方として、「好きな文章を3つ見つける」ということもすすめられている。なるほど。私は読んでいて気になる文章があると、ついペタペタ付箋を貼ってしまうので、3つというとちょっと難しいけど、3つにしぼるということも大事かもしれない。

 

知識を深める本の読み方では、齋藤さんは同じテーマの本を5冊読むことを薦めている。たしかに、10冊も読まなくても、5冊でも良いのかもしれない。大事なのは1冊の本でそれが全てだと思わないことだと思う。だから、できれば違う著者のもので5冊がいいと、私は思う。

 

難しい本の読み方では、齋藤さんも音読を薦めている。人間の脳の不思議で、インプットを増やすと、理解がしやすくなるのだ。
読んでいるときは、目からのインプットだけだけど、音読することで、目からのインプットに耳からのインプットも加わる。そうすると、脳の回転がちょっと変わるのだ。
人間の脳の不思議。

 

推薦本で出てきた本の中に、ノーム・チョムスキーの『人類の未来』があった。ノーム・チョムスキーは、言語学者として有名なひとだけれど、政治的発言も多い。通訳の勉強をしていて、言語学に関するチョムスキーの名前は知っていたのだが、実は、彼の本を読んだことはない・・・。こんど、チョムスキーの本を読んでみようと思う。

 

既に読んだことのある本もたくさんリストに出てきたけれど、気にはなるけど読破したことのない本もたくさん。最たるものは、ドストエフスキーだ。世阿弥の『風花姿伝』も、気にはなっていたけど読んだことがない、、と思う。思考力を深める本として紹介されていた。
紹介本リストを、一部だけ覚え書き。

 

思考力を深める本
・『方法序説デカルト
・『論理哲学論考ウィトゲンシュタイン
・『五輪書宮本武蔵
・『風花姿伝』世阿弥
・『この人を見よ』ニーチェ
・『君主論マキャベリ
・『歴史とは何か』 E・H・カー
・『寝ながら学べる構造主義内田樹
・『ファスト&スロー』 ダニエル・カーネマン

 

知識を深める本
・『ソロモンの指輪』ローレンツ
・『宇宙は何でできているのか』 松山斉
・『常用字解 第二版』白川静
・『人類の未来』ノーム・チョムスキー
・『資本主義の終焉 その先の世界』 榊原英資

 

人生を深める本
・『マクベスシェイクスピア
・『ドン・キホーテセルバンテス
・『金閣寺三島由紀夫
・『詩のこころを読む』茨木のり子

 

どれも、なるほど、お薦めだよね、、というもの。あるいは、私が読んだことがないので読んでみたいもの。

 

なかでも、E・H・カーの『歴史とは何か』は、昨年、岩波書店から新版がでたので、気になっていたのだ。これも含め、リストにある本は、買ってもいいかなぁ。

ま、図書館で借りられるものは借りて読んでみる。そして、良書とおもえば買うことにしよう。

 

ほんと、読書は、楽しい。

点と点がつながるときが、何より楽しい。