はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー
文と絵 バージニア・リー・バートン
訳 いしい ももこ
Katy and the big snow
Virginia Lee Burton
1943
1978年3月20日 新版発行
2018年12月30日 新版第71刷
石井桃子さんの翻訳した絵本を読みたくて、図書館でかりてみた。
福音館書店から、多くの絵本を出しているらしい。また、『ノンちゃん雲に乗る』も福音館書店だった。
本書は、世界傑作絵本シリーズ・アメリカの絵本。読んであげるなら4歳から。自分で読むなら小学校初級向き、とのこと。
とても、凝った絵本。ハードカバーの絵本で、表紙裏、中表紙、いたるところにしっかりと絵が描きこまれている。また、物語はひらがなの活字でかかれているけれど、絵の中にもそれを説明する文字が書き込まれていて、文字だけでなく、絵でもお話がかたられている。まさに、絵が主役の絵本。
主人公は、キャタピラーのついたトラクター。真っ赤な色で、力持ちのケイティーはジェオポリスという町の道路管理部で働いている。部品を付け替えることで、ブルドーザーになって土を掘ったり、除雪機をつけて除雪車になったり。夏の間は、道路をなおして、冬になると雪をかたずける。そうして、街に人たちの暮らしを守っている。時には、池に落ちた車を引っ張り出してあげたりもする。
ある冬の日に、大雪が降って、街中が機能マヒに陥ってしまう。道は通れなくなり、学校はお休み、お店も工場も全部お休み。駅も飛行機場もお休み。郵便も、警察も動けず、電話は電話線がきれ、水道は本管がわれ、だれもかれも、なにもかも、じっとしていなくてはいけなくなった。でも、ケイティ―だけが、動けた!
ケイティ―は、雪をかき分けて、前進していく。
道の雪をかき分け、警察を助け、郵便局を助け、駅へ道を開き、次から次へとみんなを助けていく。ケイティ―が前進したあとには、道ができていく。そして、みんなが動けるようになって、街中の機能を回復させた。バスや電車も動けるようになるまで、ケイティーは大事な仕事を全部やりとげて、はじめてお家に帰りました。
ケイティ―が働いている絵には、「ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ」と雪かきをする音が吹き出しでついていて、雪に覆われた真っ白な静かな町に、ケイティーだけが動いている音が聞こえてくるよう。
雪の中で火事になっている家に消防車が近づけなくて大変!という場面があったり、なかなか、シュールでもある。
なるほど、なかなか、楽しい。
ケイティ―がいてくれて、街の人たちは良かったね!
ケイティーすごいね、って。
みんなが普段何気なく過ごしている日常も、ケイティ―のような働き者がいるから、守られているんだね。
ブルーグリーンのような色の縁取りに、赤と黄色の建物や文字が映える。絵を細かく見ていくと、かなり詳細に街を表現している。これは、文字が読めなくても楽しめる絵本ということなんだろう。よく書き込まれた絵は、みているだけでも楽しいし、じっくり見ることで色々な発見もある。
普通に本を読んでいると、文字しか読まないのでざーーっと読めてしまうけれど、絵本というのはじっくり見ると、ストーリー以上の楽しみがあるということに気が付く。絵本って、結構深いなぁ。
図書館で借りて、その場で読んですぐ返すつもりだったけれど、持ち帰ってじっくり読んでみたら、なるほど、「世界傑作絵本」なわけだ、という気がした。
ケイティ―、なかなか楽しかった。
ストーリーは文字で伝えることができるけれど、やはり「絵」は言葉では伝えきれない。だから、じっくり「絵」を愉しむなら、ぜひ、本書を手にしてみてほしい。絵本は、子供だけのものではない。大人もきっと楽しめると思う。