『ぞうのホートンひとだすけ』 by ドクター・スース

ぞうのホートンひとだすけ
ドクター・スース さく・え
わたなべ しげお やく
偕成社
1985年4月 初版第1刷
1998年6月 初版第4刷
2008年7月 新装版1刷
HORTON HEARS A WHO!  (1954)  by Dr. Seuss

 
キャサリン・レイヴン『キツネとわたし 不思議な友情』のなかででてきた絵本。気になったので、図書館で借りてみた。キツネが、『星の王子さま』の次に読み聞かせされた本だ。

megureca.hatenablog.com

 

なんとも、すっとぼけたような表情でいて、ただ可愛くかいただけでないぞうの絵は、日本っぽくない感じ。ページをめくると、黒と青と赤の三色が濃淡がついているだけの、シンプルなイラスト。文字はそこそこの数ある。

 

感想。
なるほど。
そうだね。
あなたに見えていなくても、そこにはあなたの知らない世界があるんだよ、って話だ。目に見えることだけが世界ではない。星の王子さま』とちょっと似たメッセージ。起承転結のある物語。なんだか、古き良き時代の香りがした。ハッピーエンドにほっこりする。

 

著者のドクター・スース、本名セオドア・スース・ガイゼルは、1904年、アメリカのマサチューセッツ州生まれ。ダートマス大学卒業後、イギリスのオックスフォード大学に学ぶ。1937年に初めて絵本『マルベリーどおりのふしぎなできごと』を発表して以来、多数の絵本を書き、その奇想天外な物語は世界中の子供たちに愛されている。1984年、ピューリツァー特別賞受賞。たしかに、ホートンも、ちょっと奇想天外。

 

有名な絵本作家だったようだけれど、私は記憶にない。。。まぁ、幼いころに読んでいたとしても忘れてしまったのかもしれない。でも、物語はともかく、絵も記憶にないから、きっと我が家にはなかったんだろうな・・・。

ホートンの物語は、『ぞうのホートンたまごをかえす』というものもあるらしい。ちょっと気になる。

 

表紙裏の本の紹介には、
”小さいほこりの、その上に、
だれかが、いるにちがいない。
ぞうの目には、みえないような、
小さい小さい だれかが いるにちがいない・・・・・

ぞうのホートンが 水あびをしていると
どこからか小さい小さい声がしました。

それはだれかが ほこりの上にいて、
助けをもとめている声のようでした。

ジャングルの動物たちは、ホートンの話を
信じようとしません。
ホートンは たったひとりで
その人たちを守ろうと、奮闘します。”

 

おはなしは、こんな感じ。


ホートンは、水浴び中だったけれど、声のするほうを一生懸命だれがいるのか探してみる。
良く見えない。
みえるのは、ほこりだけ。
ほこりだけど、誰か住んでいるに違いないと思って、水に落ちたら大変だからと長い鼻でほこりを吸い取って、クローバーの花の上においた。

それをみたひねくれ者のカンガルーは、ばかにする。
ほこりなんかに、誰かいるわけない。

ほこりに水をかけようとするカンガルー。
ほーとんは、ほこりを溺れさせては大変、とほこりを守ってやる。

森のみんなは、バカにする。

でも、ホートンの大きな耳は小さな声をとらえた。
「村の人たちをまもってくれた。あんたに感謝しております」
村長さんが言った。

ほこりとおしゃべりをするホートンを、森のみんながバカにする。森のみんなは、「ほこりをどんぐりあぶらにぶちこめー!」と言い出す。(ドングリ油って、なんだか怖いな)ホートンに聞こえる村長さんの声は、森のみんなには聞こえない。
そこで、村長さんは、村中のひとの力を全員あわせて、「声をだせ!」とよびかける。
なまけもののおちびさんも「やっほー!」

すると、森のみんなにも声が聞こえた!

みんな、びっくり。

そして、みんなでほこりを守ってあげた。

ひねくれものカンガルーのおなかにいたおちびさんも言った。
「ぼくも、まもるよ。
夏の暑さも、雨降りの雨も、
ぼくが ちゃんと ふせいであげる。
ぼくにみえない だれかいるから。」


THE END

 

自分のいる世界、見えている世界だけが世界ではない。

見えない世界があるってこと、わすれちゃいけないよ、って。

 

ついでに、見えていても、人によって見え方がちがうかもしれないんだよ、ってこともね。忘れないようにしよう。

 

ホートンが守ったのが、ほこりだったってところが面白い。最初から小さな生き物が見えていたわけじゃなくて、ほこりに誰か住んでいるかも?っておもったからほこりをクローバーの花の上においてあげたんだ。そして、森のいじわるな奴らは、最初はとことこんいじわる。ホートンをばかにするだけじゃなくて、ほこりをどっかに持って行っちゃう。しかも、みんなでやんやとはやしたてる。まるで、いじめっ子。

ほこりの住人たちが力をあわせて「やっほー!」って声をあげたことで、初めて森のみんなも、だれかいるんだって気が付く。

大勢で声をあげることの大切さ、ってやつかな?

 

ほこりにすんでいる人たちの声、私には聞こえるかな?

きっと、こんなところにだれか住んでいるわけないって、ホートンのことをバカにする森の仲間のひとりになっていたかもしれない。

 

見えないことは、たくさんある。

聞こえないことは、たくさんある。

でも、それは存在していないということは違うのだ。

忘れないようにしよう。

 

そして、多数の声が必ずしも正しいとは限らない、ということも。

 

絵本も楽しい。