ノンちゃん雲に乗る
石井桃子
福音館書店
1967年1月20日 初版発行
2016年3月5日 第60刷
先日、菊池寛のはなし『文豪、社長になる』を読んで、石井桃子さんが出てきたので、気になった。図書館で借りてみた。
あまりにも有名、といっていいほど有名な児童書。『ノンちゃん雲に乗る』。本書を読んで読書好きになったとか、作家を目指したとか、逸話にことかかない一冊。
読んだこと、あったような、なかったような、、、、でも、なんか、懐かしいような気持ちになる一冊。
石井桃子さんは、1907年 埼玉県生まれ。『くまのプーさん』『たのしい川辺』(岩波書店刊)『ピーターラビットの絵本』(福音館書店刊)など数多くの翻訳を通して、英米の児童文学をわが国に紹介した。また1951年に本書『ノンちゃん雲に乗る』が文部大臣賞を受けたのをはじめ『山のトムさん』『 3月ひなのつき』(福音館書店刊)などの童話、数々の幼年童話や絵本の創作により日本の児童文学の発展に尽くした役割も大きい。1953年、児童文学に貢献したことにより 菊池寛賞を受けた。 2008年没。
そうか、菊池寛賞なんてあったんだ。
目次
ある春の朝
雲の上
ノンちゃんのお話
1 ノンちゃんの家
2 おとうさん
3 おかあさん
4 おかあさんつづき にいちゃんのよくばり
5 にいちゃん にいちゃんのあだ名
6 にいちゃんつづき にいちゃんぶたれる
7 にいちゃんつづき にいちゃんのいじわる
8 にいちゃんつづき にいちゃんとエス、にいちゃんのうそつき
9 ノンちゃんのある日
おじいさんの話
1 ある日のにいちゃん
2 ハナ子ちゃんの冒険
小雲に乗って
家へ
それから
感想。
あぁ、ノンちゃん。。。かわいい。。。セツナイ。。。。
こんなおはなしだったっけ?!?!
雲に乗るお話だった記憶はあるけれど、どのようなお話だったのかはすっかり忘れていた。
ノンちゃんは、本名・田代ノブ子。2年生。もう、一年坊主じゃなくて、2年生。2年生といったら、まだ、6歳とか、7歳とか、、、。そんなノンちゃんは、10歳のおにいちゃんと二人の兄妹。
ある春の朝、起きたら、おかあさんとおにいちゃんは、ノンちゃんをおいて東京にお出かけに行ってしまっていた。2年生になったら、ノンちゃんも東京に遊びにつれてってくれるって、おかあさん、約束したのに。
おかあさぁんのうそつき~!!!
といって、泣きわめく朝から物語が始まる。トシおばちゃんと、お父さんが、なんとかノンちゃんをなだめようとするけれど、ノンちゃんは悲しくて悲しくて、涙が止まらない・・・。ノンちゃんは、ちっちゃい時(5歳)に赤痢にかかって、生死を彷徨ったことがあるから、大人はみんなノンちゃんが東京の雑踏でまた病気になっちゃうことを心配しているのだ。
おかあさんのばかぁ。
おとうさんのばかぁ。
だまされた~~~。
何をいっても泣き続けるノンちゃんに、トシおばちゃんも、おとうさんもあきれはててしまう。
もう、だれもこの気持ちをわかってくれないのなら、、、ひとりでどっかいっちゃおう。
そして、ノンちゃんは、遊び慣れた氷川様(氷川神社?)の境内に飛び出す。飼い犬のエスもノンちゃんの後をついてくる。エスは、悲しんでいるノンちゃんのよこで、ノンちゃんといっしょに、キュウキュウと泣いてくれた。池はこのところの雨で水かさがまして、ノンちゃんの足元まで水が来ていた。水の上には静かな空が浮かんでいた。
ノンちゃんは、もし水の底が抜けて、あの深い空に落ちてしまったら!と本当はこわくてたまらない。そして、氷川様の境内の紅葉の木にのぼるノンちゃん。池の水には、鳥の影が見える。鳥は、水の中を泳いでいるんだ。わたしだって、鳥のように・・・・。
パシャン! どうん!
”ノンちゃんのからだは、ふわっと空中にうかんでいました。”
そう、そうしてノンちゃんは雲に乗ったのだ!!
そして、雲の上でであったおじいさんとノンちゃんのお話が続く。
おじいさんが、ノンちゃんの話を聞きたがるので、ノンちゃんは、お家のこと、おかあさんのこと、おとうさんのこと、にいちゃんのことを話して聞かせてあげるのだ。
それが、本書のメインパート。
おかあさんのことは、、、、。ノンちゃんをおいていっちゃったおかあさんだけれど、やっぱりおかあさんのことは大好き。お父さんのことも大好き。だからたくさんたくさんおじいさんにお話してあげる。にいちゃんのこともきかせておくれ、っておじいさんがいうから、にいちゃんは意地悪だっていったんだけど、、、、。だいきらいのにいちゃんのはずなのに、にいちゃんがどう悪い子なのか教えてくれっておじいさんにいわれても、にいちゃんのわるいところをうまくおはなしできないノンちゃん。でも、いじわるするんだもん。
とまぁ、こういう、子供の言葉であっても、家族愛に弱い私は思わず、涙腺がゆるむ・・・。
おじいさんは、成績表はいつも甲ばかりのノンちゃんを妹に持ったにいちゃんは、けっこうたいへんなんじゃぞ、っていう。ノンちゃんは、どうしてにいちゃんが乙をもってくるのかわからない。にいちゃんのたちばになってかんがえてみないといけないなぁ、っておじいさん。ノンちゃんはそうなのかなぁ、と。
兄妹で、妹の方が成績がいい場合、そりゃ兄ちゃんは大変だ。。。。
ノンちゃんからたくさんお話をきいたおじいさんは、大いに楽しんだ。「わっはっは。それはゆかいじゃ」って。そして今度は、おじいさんがノンちゃんにお話を聞かせてくれる。
それは、おじいさんが雲の上からみつけた、3人の物語。お父さんと弟一緒に海に行ったハナ子ちゃんが、3人で波に流されてしまい、弟を助けるために先に弟と岸をめざしたお父さんを信じて、一人で海の上で助けをまっていたお話。ハナ子ちゃんは、お父さんを信じて、海の上でぷかぷかお父さんを待っていた。あたりは暗くなっても、泣いたりしないで、お父さんを信じてまっていた。おじいさんは、潮にながされてしまうハナ子ちゃんを、一生懸命岸にむかって流してあげようとする。そして、みんながちゃんとハナ子ちゃんを助けに来てくれた話。お父さんも弟も、ハナ子ちゃんも無事にお家にかえれました、って。
ノンちゃんは、その話をきいたら、急にお家が恋しくなっちゃうのだ。雲のうえで、おじいさんと話をしているのが楽しかったのに、急に、キュンって、おうちが恋しくなっちゃう。そしたら、涙が止まらなくなっちゃったノンちゃん・・・。
あぁ、こういう子供の時のキュンっていう感じ。。。セツナイというのか?なんという言葉で表していいのかわからないけれど、お家に帰りたいっていう、キュンって気持ち。赤ちゃんが夕方に泣く感じ?!?!ノンちゃん、可愛すぎる!!!
そして、涙が止まらなくなっちゃったノンちゃんをつれて、おじいさんは雲を急転回。ノンちゃんは、おかあさんのもとへぴゅーーーっ!こわいから、ぎゅーーって目をつぶって・・・。
”そうです。ノンちゃんの帰るところは、世界中にただひとつです。それは、おかあさんのふところでした。”
おじいさんは、びゅーーんて雲を飛ばしてノンちゃんをおかあさんのところへ。ノンちゃんはきゅーーって目をつぶって、おじいさんにしがみついていた。
ノンちゃんは、誰かが泣いている声に気が付いて、ぎゅーーってしていた目を開けてみる。すると、
「ノンちゃん!!」おかあさんの声。
おかあさんはノンちゃんの耳元で、「ノンちゃん、くるしい?」と聞いてくる。おばちゃんもノンちゃんの側に座っている。みんな目を真っ赤にしている。ノンちゃんは、長い間寝ていたみたい。枕もとには、お薬の瓶・・・・。
にいちゃんも、ノンちゃんの顔を心配そうに覗き込んでいる。
みんな、ノンちゃんを心配しているみたい。ノンちゃんは、きっと木から落ちて、、、おじいさんと一緒に雲に乗ってしばらく遊んじゃったみたい。気が付いたら、ノンちゃんはお家にいた。みんながノンちゃんを病人あつかいするけど、ノンちゃんは元気だもん。
気が付いたら、ノンちゃんはすっかりお腹が減っていました。
やれやれ、ノンちゃんは、無事だったみたい。
とまぁ、、、、。
ノンちゃんのお話の物語。最後は、ちょっと大人になったノンちゃんが、級長さんとして活躍し、ガキ大将の長吉にもやさしくなれる。でも、戦争が始まって、、、。戦争の間に子供だったノンちゃんは大人になりました、って。ノンちゃんが自分のことを語る。
そうか、こういうお話だったのか。。
『ノンちゃん、雲に乗る』
ワクワク、ドキドキ、ちょっぴり冒険。一人で遊びに行くのだって大冒険だった2年生のノンちゃんは、いつかおじいさんに聞かせてあげたお話を、子供にきかせるお母さんになっているかも、、って、最後は大人になったノンちゃんの語り。
1967年、昭和42年の本。昭和の香りが強い。戦争が身近な物語だし。
なるほどなぁ。
児童書だけれど、読み応えのある一冊だった。
ほんと、なるほど、だわ。
なるほど、こういう本で、石井桃子さんは日本の児童文学の世界を発展させたんだ。
よく知らなかったなぁ。
石井桃子さんの本がもっと読んでみたくなった。
児童書、素晴らしい。