『1からわかる日本の城』  西脇総生 

1からわかる日本の城 
西股総生 
ワニ ブックス 
2020年11月12日 初版発行

 

通訳案内士試験対策用に日本の城について勉強してみるか、、、と、図書館でかりてみた。

 

日本の城についての本は、図書館にいっぱいあったけれど、本書は、大判のカラー印刷本ではないので、コンパクトで手ごろそう。ということでかりてみたのだけれど、これ、大当たらり!これは面白い。別に、勉強とおもわずに楽しくてすらすら読めてしまった。発行が比較的新しいのもありがたい。

 

著者の西股さんは、1961年北海道生まれ・神奈川県在住。発掘調査員をへてフリーライター日本考古学協会・城館史料学会・戦後史研究会会員。 ドラマ『真田丸』で戦国軍事考証を担当、とのこと。著者紹介には、軍事的点から鋭い分析が持ち味 だが、 ビギナー向けの軽妙なトークも好評、とある。まさに!!口語調で書かれた文章がとても読みやすく、楽しい!なるほど。この人の本なら、もっと読んでみたい!って思う。


目次
まえがき 城歩きは知的パズルだ!
第一章 城の盛り上がりポイントはココだ!
第二章 戦いの中で進化した日本の城
第三章 城を楽しむために知っておきたいこと
第四章 城のいろいろな楽しみ方
あとがき 城は待っていてくれるから

 

感想。
面白い!面白い!


あぁ、この間、犬山城に行く前に読んでおきたかった!!
これは、次にどこかのお城を観に行くときには、絶対に参考になる。って、覚えていられないけれど・・・・・

うん!なるほど!っておもったことを覚書。

 

だいたい、最初の「第一章 ①城とは何か」から惹きこまれる。

ページをひらくと姫路城の写真がでていて、「この写真をみて『姫路城だ』と思った人、残念でした」って。
え?!?!どういうこと?これ、姫路城でしょ??

と、正解は、「姫路城の天守」ということ。天守は、城のパーツのひとつであって、姫路城そのものではない、と。

おぉ!そうだった!知識としてはしっていても、天守閣=お城っておもっちゃう。

 

そう、
城とは、油断のならない場所なのです!”って。

 

うわぁ、たのしい!!それでそれで?!?!って、おもわず、うれしくなっちゃう。

 

城は、戦うために築かれた。ゆえに、敵の攻撃を防ぐために、侵入してきたものをダマし、ワナに陥れ、命まで奪おうとする。油断のならない場所なのだ、と。

そして、城として大事なものが次々に紹介されている。

 

第一章の詳細は、次の通り。
① 石垣の仕組み
② 曲輪と建物
③ 犬走・腰曲輪・帯曲輪
④ 外郭・惣構・城下町
⑤ 橋と堀
⑥ 縄張り
⑦ 占地
⑧ 土の城の世界
⑨ 虎口と横矢掛り
⑩ 陣屋 しられざる小宇宙

どれも、あらためて知ってみると、なるほど、なるほど。

 

石垣が奥深いというのは、よく聞く。そして、皇居の石垣が身近なように、いまでも私たちの暮らしのおとなりさんに残っていたりするのが石垣。攻めてくる敵がいないなら、わざわざこんなものは作らないって。なるほど、そりゃそうだ。そして、城はその土地の要所にたてられているので、いまでは県庁や市役所になっていて、そのまわりが石垣や塀でかこまれている、という場所が多く残る。

城とは、敵から自分たちをまもるためのものなんだ。当たり前のことに気づかされる。そして、城づくりがはじまったのは、戦国時代になってから。

城を訪れたら、まずは石垣をながめてみることが大事、って。眺めてみると、フリークライミングで登れそうっておもっちゃうって?いやいや、戦国時代は、甲冑に身を固めて、手には槍や鉄砲を持って、、、それで登れるかって?!

なるほど。そりゃそうだ。お堀についても、泳いで渡れそうと思ったら大間違い。甲冑を着て泳いでわたれるか?!って。そりゃそうだ。

 

石垣については、その種類について説明されている。

野面積み:とってきた石をそのまま積み上げる
打ち込みハギ:ある程度形をととのえてから積み上げる
切り込みハギ:ブロックのように形を整えてから積み上げる

乱積み:大小の石をランダムに積み上げる
布積み:段ごとに石のサイズをそろえて、横に目地が通るようにつみあげる

たしかに、皇居の石垣にも色々あるらしいけれど、わりと綺麗な目のそろった石垣が多い。あらためて、先日熊野旅行の時によった新宮城跡の石垣の写真をみると、切り込みハギが確認できた。

新宮城の石垣。きれいにカットされて積まれている。

一方で、犬山城は野面積みっぽい。

犬山城のしたの石垣。大きさも形もばらばら。

また、石垣の角をつくるのに、角柱形の石を互い違いに組み上げる積み方は、「算木積み」というのだそうだ。新宮城跡の石垣が、まさにそれらしい。

 

石垣と同様に、敵の侵入防ぐのがお堀。水をはった水堀と水のない空堀がある。空堀といっても、水が無いからといってあなどれない。V字断面となるように掘られた空堀は、一度落ちるとなかなか上がってこれない。もたもたしていると、上から矢がとんでくる。あ~れ~~~。。。こわいこわい。

 

天守を見分けるポイントでは、
1 天守のサイズ
2 壁の色
3 バルコニー
等が紹介。

サイズは、そのとおり、大きさ。色は、白か黒か。白壁は白漆喰のいろで、姫路城が代表的。黒壁は、板張りといって、漆などをぬって強度をあげた板を壁に張っている。カラス城の別名をもつ松本城がその代表。漆をぬった板は堅くなり、耐火性を増すとともに、耐弾性も追求できたのだという。
バルコニーとは最上階にある廻縁(まわりえん)あるいは、高欄とよばれるもの。あったり、なかったりする。廻縁や高欄は、飾りの意味がつよくて、つけるか付けないかは趣味らしい。で、犬山城の高欄が、ななめっていてこわかったのだけれど、あれは、老朽化でたわんだわけではなく、「水はけをよくするため、床板を外側に傾斜」させていたのだそうだ。なるほど・・・。

結構怖かった、犬山城のバルコニー。



他に天守を見分けるポイントとして、屋根にはめられた破風(はふ)の形。

千鳥破風:小さな三角
入母屋破風:屋根の端から端まである大きな三角
切妻破風:への字形
唐破風:曲線タイプ

 

本書の中では犬山城の破風が取り上げられていて、右側に切妻破風を飛び出して作っている破調の美を褒めている。また、正面の唐破風は、なければ、ネクタイをはずしたオジサンみたいで、しまらない感じになっちゃうって。笑える。 

たしかに、、、。

megureca.hatenablog.com

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他にもいろいろ城にまつわる解説が。

そもそも、天守をつくったのは織田信長安土城に5重の壮麗な天守をつくった。それまでは、天守なんかなくて、もっと実用的につくられていた。信長が安土城をつくってから、秀吉も真似をするようになった。武田も、上杉も今川も北条も伊達も、毛利も長宗我部も大友も島津も、、みんな天守はなかった。

 

では、なぜ天守をつくったのか?権威の象徴だという説がよくあるけれど、そんなわけではない、というのが著者の考え。だって、権威の象徴だったら、明暦の大火で燃えてしまった江戸城はすぐに再建したはず。でも、しなかった。天守は、城の要で、最も守りを堅くするべきところだった。でも、戦国が下火になったら、そこまで堅固な天守は必要ではなくなった。明暦の大火(1657年)の頃は、もう、パクストクガワーナで、敵から守るべき鉄壁の天守なんて、いらなかったのだ。

やはり、天守は最強の戦闘施設であり、ただ壮麗であればよかったわけではないのだ。

だいたい、殿様は天守には住んでいない。戦闘のための建物に、普段は住んだりしないのだ。

 

観光でお城に行って、天守閣にのぼって、「あ~~きもちい~~~、お城からの景色は最高!」なんていっていたけれど、殿様が天守の最上階にのぼるというのは、敵にせめこまれてヤバい!!という状態だったということだ。ながめたのは、のどかで美しい景色ではなく、戦況、せまりくる敵の姿、、、ということ。

 

現存天守といわれているのは、いまは12しかない。

弘前城
松本城
犬山城
丸岡城
彦根城
姫路城
備中松山城
松江城
丸亀城
伊予松山城
宇和島城
高知城

江戸時代にあったたくさんの天守は、明治になって廃藩置県でとりこわされ、熊本城は西南戦争で焼け、多くは第二次世界大戦で空襲で焼け、広島城は原爆で吹き飛んだ・・。

 

五稜郭は、ヨーロッパの城の形をまねてつくった陵堡式築城の城。琉球のグスクは、石垣がメイン。アイヌの城チャシは、堀でかこんだもの。城といってもほんとに様々だ。

 

また、縄張りというのは、石垣・堀・城門・天守・櫓などをどうやって組み合わせるかという戦略。本丸の天守にたどり着くまでに、坂道、曲がり角、そして建物をどう組み合わせるのか。お城に入ったら、どうしたら侵入できるのかを想像しながら歩いてみると楽しそう。

 

さらに、視野を広げると、「占地(せんち)」というのも重要なのだと。山城、平城、平山城、、、どういう地形にお城をたてるか、ってこと。実は、一番だいじなのでは?
「守る」だけなら山城がいいけど、「攻める」には味方も苦労する。平城は、住みやすいし、交通の便もよさそうだけれど、石垣や堀でしっかり守らないといけない、などなど。どこに城をたてるか!それが、一番重要ということ。占地をきめ、縄張りを考える。城づくりって、まさに戦略作りで楽しそう。


最後の方は、城の写真の撮り方講座みたいになっていて、それも面白い。わたしは、写真の趣味はないけど、被写体へ一歩近づいてみるとか、なかなか素人でもちょっと素敵な写真へのヒントが。

 

ほんと、1からわかる日本の城だった。コンパクトに良くまとまっている。

お城にいくなら、これで勉強してからいってみよう!

天守閣が無くても、お城跡には楽しめるポイントがたくさん!まぁ、今の皇居だってそういう目で見ると、なかなか新たな気づきが。。。城跡ならば、結構たくさん身近にあるはず。そんなところ散歩してみるのも楽しいかもね。