『かないくん』 by 谷川俊太郎

かないくん
谷川俊太郎 作
松本大洋 絵
糸井重里 企画・監修
株式会社東京糸井重里事務所
2014年1月24日 第1刷発行
2014年2月15日 第2刷発行

 

2024年4月13日の日経新聞『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子著)の紹介の記事で、言及されていた本。記事には、

”「優しく楽しい世界」にとどまらない絵本の表現を豊富な例を挙げて解説した。谷川俊太郎が文、松本大洋が絵を担当した『かないくん』の主題は死。大胆に空白を取り入れた画面から「死んだ後の何もない時間の価値」が伝わるという。近年の作品にも注目する。ロシアによるウクライナ侵略を受けて作られた一冊は難民の生活を描く。言葉と絵を駆使して読み手の視野を広げる絵本の力強さが垣間見える。(平凡社新書・1210円)”

とあった。

 

『世界をひらく60冊の絵本』も気になるのだけれど、、、とりあえず、『かないくん』を読んでみたくて、図書館でかりてみた。

なるほど、たしかに、大胆な空白。

 

絵本は、

”きょう、となりのかないくんがいない”
という文字が見開き2ページの右上に二行ではじまる。


そして、ページの上半分に、鉛筆がのような画風で、坊主頭でセーターをきた少年が、学校の机?の上に、隣を眺めるように、顔をよこにして、自分の左腕を枕につっぷしているすがた。

ちょっと、大人な雰囲気の絵。

物語で、かないくんは、欠席が続き、入院している先生から聞かされる。そして、ある日先生は、
「かないくんがなくなりました」と、みんなにつげる。

 

お葬式。
新学期。
隣の席の子がかわる。
教室にはかないくんのかいた絵もまだはってある。

かないくんが亡くなって、お葬式でないていた、みちことあきこも、もう、いつもとかわらずあそんでいる。

 

絵のみのページ。

 

次に、おじいちゃんがでてくる。どうやら、かないくんのお話を絵本にしてかいているのは、おじいちゃんらしい。おじいちゃんは、絵本作家で、どうやら病院に入院しているらしい。点滴をうけている姿。

「金井君てほんとにいたの?」と聞く少女。少女は、おじいちゃんの孫ってことだろう。

 

おじいちゃんは、「ほんとにいて、ほんとに死んだんだ、4年生の時に、」と。

そして、おじいちゃんは、ホスピスにはいる。少女が、スキーに行って、リフトに乗っているときに、携帯にメールが入る。おじいちゃんが、死んだ。

 

”真っ白なまぶしい世界の中で、突然私は「始まった」と思った。”

 

そして、「私」は、泣いているんだか、笑っているんだかわからない自分を抱えながらゲレンデを滑り降りる。。


なんだか、不思議な絵本だった。

 

死んでも、その人の作品は残る。
死んでも、その人の想い出は残る。

たしかに、テーマは「死」だねぇ。

 

「死んだ後の何もない時間の価値」がわかる、というけれど、何もない時間の価値って、なんだろう。。。死んだ人にとっての価値なの?生きている人にとっての価値なの?価値なんて、死んだ人には関係ない?

こういう難しい絵本は、さらっと読むに限る。
やさしい、素敵な絵だった。


色使いが結構好き。
おじいちゃんが死んだあとのページに広がる、大きな木の幹の絵。

表紙の少年は、かないくんなのかな。おじいちゃんなのかな。
最初に、机に突っ伏している少年がおじいちゃんだとすると、髪型からして表紙の少年が、かないくんかもしれない。

何をみつめているのか。

 

文字が少ない絵本の方が、妄想が膨らむ。
文章も、シンプルな方が想像が搔き立てられるのかもしれない、なんて思う。

 

絵本も好き。

 

そして、『世界をひらく60冊の絵本』をポチってしまった。