『超訳 孫子の兵法 「最後に勝つ人」の絶対ルール』 by  田口佳史

超訳 孫子の兵法
「最後に勝つ人」の絶対ルール
田口佳史
三笠書房
2021年1月31日 第1刷発行
2023年7月25日 第6刷発行


本屋さんで 平積み されていたので思わず手に取った。東洋思想研究者である田口さんの本。1300円(税別)ならば、まぁ、暇つぶしにいいか、、と。副題にある「最後に勝つ人」という言葉には、もう、そんなに興味をそそられないけれど。

表紙には、”「ビジネス孫子の決定版” とあるから、まぁ、ビジネスで勝つための戦略ってことなんだろう。今の私は、「誰かに勝つ」ということにあまり興味がない。「己に克つ」のは大事だと思っているけれど。

 

帯には、
”ライバルとの競争、取引先との交渉、 トラブルへの対応
 ビジネスマンなら100回読んでも損はない!
孫子を知れば「駆け引き」と「段取り」に圧倒的に強くなる。
 最後に勝つ人は「この鉄則」を知っている
 ・「水面下の動き」も 察知せよ 
 ・「ケンカ別れ」は愚の骨頂である
 ・ 結局、一番強いのは「勢いに乗った人」
 ・「連戦」だけは絶対に避けること
 ・「 一番」を狙っている人についていってみよ
と。

いかにも、ばりばりビジネスマン向けっぽい。一歩間違えると、キャリアポルノっぽいけれど、東洋思想、孫子の言葉に基づいているので、自分なりに孫子の言葉を解釈するための参考書となる感じ。

 

表紙の裏には、
”「孫子」のどこがすごいのか
それは、”きれいごと”ではなく、極めて現実的な「人間の本性」「 戦いに勝つ方法」「賢い生き方」を説くところだ。 たとえば孫子は、「人間関係は持ちつ持たれつ」 なんて甘っちょろいことは言わない。「自分が徹底的に優位に立って思うように事を運べ」と教える。この世界最高の「戦略書」の知恵は、そのまま「実学」として、日々の仕事、人生に生かせる。”

と、ここまでくると、やっぱり中身が気になるだろう。2021年初版なのに、まだ本屋で平積みってことは、それなりのスタンダード本になりつつあるということか。「孫子の・・・」の類は色々あるけれど、田口さんの本なので、あんまりチャラくないところがいい。

 

目次
はじめに 「孫子の兵法」は、現代ビジネスパーソン必読の”実益書”
第一講 「計篇」 最後に勝つ人は「この戦い方」を知っている
第二講 「作戦篇」 これからの時代を生き抜くための「武器」を持て
第三講 「謀攻篇」 「戦わずして勝つ」 これが「孫子」の鉄則
第四講 「形篇」 思い通りにならない状況をいかに突破するか
第五講 「勢篇」 結局、一番強いのは「勢いに乗っている人」
第六講 「虚実篇」 「主導権」を握って、ライバルを圧倒する
第七講 「軍争篇」 頭を使った、「 急がば回れ」の目標達成法
第八講 「九変篇」 いつ、何が起きても「動じない人」になる極意
第九講 「行軍篇」 勝者と敗者を分ける「人生航路の歩き方」
第十講 「地形篇」 「自分の置かれた状況」の正しい見極め方  
第十一講 「九地篇」 勝利をより確実にするための「心の整理術」
第十二講 「火攻篇」 自分の「評価」「印象」を高めるテクニック
第十三講 「用間篇」 孫子が教える「精度の高い情報」の集め方

 

感想。
まぁ、盛りだくさんだこと・・・・。
30代、40代の頃に、これを知っていると、ビジネスマンとして要らぬ苦労をしないですむかもしれない。とはいえ、、、これらの言葉が本当に腹落ちするのは、自分で色々なことを経験した後なのだと思う。

これらを頭に叩き込んで、教科書通りに生きていけば、いわゆる勝者(ここではビジネスで儲けるとしてみよう)とは慣れるかもしれないけれど、人生が豊かになるかとは関係が無い気がする・・・。

聞き分けのいい幼児が、ちょっと危ない感じがするように、ここに書いてあることを全て実践できる20代がいたら、ちょっと、いやぁな感じしちゃうかも。。。。。
「なに、人生わかったような気になってんだ」なんてね。

 

まぁ、でも、知っておいて損はない。頭の片隅に置いておいて、それでも、そのように行動できずに危うきにちかづいてしまい、、、あぁ、あの言葉はそういうことか、、、と腹落ちするくらいで、ちょうどいい気がする。

文字で学ぶことは、情報でしかない。それをどう生かすかは、やっぱり、自分の頭で考えて、自分で決めるってこと。

 

50代の私が読めば、そんなの、あたりまえじゃ、、、とおもうけれど若い時の私はそれを理解していなかったから、痛い目にもあったし、失敗もたくさんした。でも、それはそれで、人生の色どりみたいなもんだ。

 

こう言っちゃなんだが、幸せも、不幸も、ずっとそれが続くと退屈になる。勝ち続けるのはプレッシャーになるし、幸せすぎると他人の不幸に気づけなくなる。。。

だから、失敗して、どん底になったときに、こういう本を手にすればいいのだと思う。そして、もう一度がんばる勇気をもてれば、それでいい。

勝ち続けることは、豊かな人生とイコールではない。
幸せとは、勝ち続けることではない。
と、私は思う。

 

とはいえ、55歳の私が読んで、心にひっかかった言葉をちょっとだけ覚書。

 

本書は、全部で78個の孫子の言葉が引用されている。それぞれに、超訳があって、その後に田口さんの解説がつく。

 

13:国の師に貧しきは、遠く輸(いた)せばなり。
 → 不得意分野でムリして戦うな
   超訳
 来た仕事は何でも受ける。そういう気概は必要だが、その仕事をするには明らかにまだまだ実力が追いついていない、不得意な分野のものであるなら、無理して受けてはいけない。 うまくいかないだけでなく、失敗による停滞 ダメージを受けその敗北感から立ち直ることが容易ではないからだ。その分野の実力を磨くことが先決である。

 

まぁ、それはそうなのだよ。そうだれど、ムリしてでも挑戦しないと、、、失敗したことで身につくことはたくさんあるのだよ、とも思う。
もちろん、「その分野の実力を磨く」というのが大事であり、その努力なしに一定のレベルから向上することはない。一方で、個人の成長に関して言えば、命にかかわることでもない限り、「やってみたい」「これができるようになりたい」と思うのであれば、仕事として引き受けてもよいのではないかと思う。  特に、サラリーマンなら、よっぽどのことをしでかさない限り、クビになることはない。そういう、挑戦ができるのがサラリーマンの特権でもある。個人事業主なら、失敗したら信用をなくして仕事を失うリスクがある。だから、慎重になるべきだろう。あまりにも、顧客の期待とレベルの違う仕事をしてしまえば、二度と仕事はこないかもしれない。でも、私は、経験しか人を成長させない、というのもあると思う。

サラリーマンは、失敗できる世界だったということに、脱サラしてきがついた。失敗は、多くは自分の実力不足であり、それは、スキルとか知識といったことだけでなく、「人間として」の未熟さだったり、自己過信だったり。

 

不得意、かつ、自分がやりたいと思っていないことなら、ムリしてやってみることはない。まだ不得意、でも、やってみたい!!のなら、引き受けるのも一つだ。

ただし、重要なのは、上手くいかなかったときに人のせいにするのではなく、自分にたりなかったところは何なのかを考えること。そして、「実力をつける」ための努力を続けることなのだと思う。

 

本書では、
「不得意分野の仕事がきたら功を焦って、ムリして引き受けない。次は自信をもって引き受けられるよう、実力を磨くことを考えるのが賢明というものです」としめくくられているけれど、
「チャンスの神様は、前髪しかない」の方が、私にとっては大事に思える。

だいたい、常識的な上司なら、部下が絶対にできそうな仕事は与えない。これをやれば、この子はさらに伸びる、と思うから、仕事をふるし、出来なかった場合のバックアップも考えている。と、思うけどな・・・。性善説すぎるかな?でも、そうであってほしいと思う。


54:凡そ軍を処き敵を相するに、山を絶れば谷に依る。生を観て高きに処る。
 →人生、より高きを目指せ

   超訳
上昇気流に乗っている時も有頂天にならず、どん底の時代を思い出しなさい。 どこまで上がっても、そこは人生の通過点。 決してゴールに到達したと思ってはいけない。

 

これは、うんうん、そうだそうだ、と思った。
どこまで行っても、終わりがない。だからこそ、色々チャレンジできて楽しい。と、私は思う。

人生も、区切ってみれば、時代ごとのゴールがある。受験生なら、志望校への合格は一つのゴールだし、希望の仕事につくのも一つのゴールだ。そして、会社人生だって、大きな目標のもとに、小さな目標があるからそれをゴールにめざす。ゴールに到達したとたん、新しいスタートが始まるのが人生ってもんだ。

脱サラは、サラリーマンのゴールかもしれない。でも、そこから新しい生活がスタートする。ゴール=スタート。それが、人生ってもんだろう。

 

「より高き」ではなくてもいいと思う。「あたらしい」目標があることが大事なのだ。
人生最後は、「苦しまずに死ぬ」が目標でもいいんじゃない? 

 

他にも、うんうん、と思った言葉。


15:「ケンカ別れ」は愚の骨頂
 ほんと、敵をつくっていいことは、何もない。建設的対話をめざそう。


21:「逃げ」の一手は卑怯にあらず
 うん、相手にするべきじゃなかった!やばい!と思ったときは、逃げる!

 

28:「現場」には必ず「一番乗りせよ」
 そう。遅刻すれば、大きなビハインドになる。何事も、時間に余裕をもって行動すれば、心の余裕も生まれるってもんだ。

 

49: 常に「身軽」でいる
 フットワークが軽いにこしたことはない。私の場合、脱サラしたら、身軽になった。それまでを重いと思っていなかったけれど、やめてみたら、身軽になった。脱サラしたからこそ、「〇〇お願いしたい」という人からの誘いに「はい!はい!」となんでも答えられるようになった。フリーランスという「身軽」は、私に大きな武器になった。

 

62:負ける理由は必ず「自分」にある
 そう。負けたのは、自分に何かが足りなかったから。不合格は、勉強が足りなかったから。その日体調がわるくて実力が発揮できなかったとすれば、自分の健康管理ができなかった。自分に原因がないことは、自分の結果にはならない。

 

今日は、2024年1月1日。

365日のうちの、1日でしかないけれど、やはり新年の始まりであり、特別な日でもある。といっても、とりたてて、、、、なんてこともないのだけれど。お空は青い。

まぁ、毎日がこれからの人生で一番若い自分なわけで、できることをやっていこう。

継続は力なり!

 

よい一年になりますように!