「みちのく いとしい仏たち」 @東京ステーションギャラリー

みちのく いとしい仏たち
東京ステーションギャラリー
The Beloved Gods and Buddhas of Northeastern Japan

監修:須藤弘敏(弘前大学名誉教授)

 

2024年初のアート鑑賞は、東京ステーションギャラリーで開催中の「みちのく いとしい仏たち」に行ってきた。

仏像好きな友人が、ほっこりして、「一つくださいな、って雑貨さんと勘違いするユルサ」でお薦め、といっていたので、早速行ってみた。

東京駅丸の内北口、ドームから出ることなく、徒歩数秒、東京ステーションギャラリー辰野金吾設計、建設当時のレンガが残る建物。

 

パンフレットになっているのは、岩手県八幡平市、兄川山神社に祀られている山神像。たしかに、なんだこりゃ!可愛すぎるぞ!

 

ギャラリーの入り口は、丸の内北口改札を抜けてすぐ右手にある。でも昨日は、東銀座で用事をすませてから行ったので、東京駅までてくてく歩いた。いやぁ、お正月気分が抜けない銀座も東京駅周辺も、結構な人出。有楽町駅から丸の内側をあるいたけれど、それでも結構人がいた。みんな、どこへ行くのだろう・・・。まさか、みんな、みちのくいとしい仏に会いに?!?!なんてことはなかった。

 

1階の入り口を入ると、受付のお姉さんは立っているけれど、チケットは自動販売機で購入。大人ひとり、1400円。あぁ、私はJR東日本の株主だった・・・。株主優待の50%割引チケットがあったのに、持ってくるのを忘れたので、そのまま1400円でチケット購入。

1階に、無料で使えるロッカーがある。もどってくる100円玉も要らない。これはいい。駅のコインロッカーみたいな感じ。いや、感じじゃなくて、同じものかもしれない。でも、お金はかからない。普通にがちゃって回す鍵がついていた。大きいカバンとコートをロッカーにいれて、いざ、入場!

エレベーターで3階へ。

 

エレベーターの扉が開くと、そこは、ギャラリー。

パンフレットにもなっている「山神像」がお出迎えしてくれる。

これは、、、、、ほっこり、、、微笑まずにはいられない。どれもこれも、どれもこれも、、、。へたうまというのか。造形もそうだし、表情もユルイ。

これは、、、なんと表現していいのか。まさに、「いとしい」仏たちが勢ぞろいって感じ。

 

パンフレットの言葉をそのまま紹介しよう。
”江戸時代、寺院の本堂の形状や荘厳(しょうごん)が均一化され、上方や江戸で造られた立派な仏像が日本各地の寺院でご本尊として祀られるようになったいっぽうで、地方の村々では小さなお堂や祠などを拠り所として、素朴でユニークな仏像・神像が祀られました。仏師でも造仏僧でもない、大工や木地師(きじし)の手によるこれら民間仏は、端正な顔立ちや姿のご本尊と違って、煌びやかな装飾はありません。
その彫りの拙さやプロポーションのぎこちなさは、単にユニークなだけではなく、厳しい風土を生きるみちのくの人々の心情を映した祈りのかたちそのものといえます。
青森・岩手・秋田の北東北のくらしのなかで、人々の悩みや祈りに耳をかたむけてきた個性派ぞろいの木像約130点を紹介し、日本の信仰のかたちについて考えます。”

https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202312_michinoku.html

 

ほんとに、姿勢が悪い感じがしたり、左右アンバランスだったり、どう考えても、身体の大きさと手の大きさのバランスわるいだろっ!ってつっこみたくなる可愛らしい手とか。中には、おぉぉ、ヨクゾこれだけ彫り込んだ!って拍手したくなるようなものも。不動明王や、閻魔様もなぜか可愛らしい雰囲気が・・・。

そして、猫背だったり、左右アンバランスな感じが、今にも歩き出しそうな感じをかもしているのだ。みんなが寝静まった夜には、木造たちは踊り明かしているのではないか、、っていう躍動感。これは、本物の仏師がつくる像とは違う躍動感。なんともいえず、身近な感じがするのだ。うん。いいわ。

 

展示室は、3階から2階にかけて。結構満喫できる。2階のギャラリーショップを出ると、ビデオが上映されていた。そこで、しばし、みちのくの仏のビデオ鑑賞。なるほど、その土地の人でもよく知らない仏像もあるそうで、山神は、林業に携わる人たちが守ってきたし、海の神様は、漁師たちが守ってきたのだそうだ。なるほどぉ。。。。そして、常に危険と隣り合わせである自然と対峙する彼らにとっては、やはり「神の声」が自分たちを守ってくれていることを感じるときがあるのだと。

ベテランきこりらしき人は、「毎日、山神様にお祈りするし、そうすることで気を引き締めているんだと思う」と。

 

みちのくという、厳しい自然の中で生きてきた人々が、心のよりどころとしてきた仏たち。あぁ、日本人は、アニミズムだなぁ、って思う。厳しい自然の中で生きてきたことで、自然と自然に対する畏れの気持ちが芽生えたのだろう。

ほっこり。なんとも言えない。
美しい国宝の11面観音もいいけれど、こういうのもいい。

そうそう、11面観音と題された仏像はいくつかあったけれど、どこにも11面がないんだけど、、、どういうことなのか???それは、不明のままだった。 

 

いいなぁ、「みちのく いとしい仏たち」。それにしても、英語のタイトルは「みちのく」がNortheastern Japan になってしまっているけれど、ただの東北じゃないんだよなぁ。「みちのく」という言葉に、郷愁の響きがあるというのか、時の流れが刻まれているというのか。

翻訳って難しい。

 

言葉を発しない木造たちが、ゆるい笑顔で伝えてくれるみちのくの空気。

言葉にならなくても、伝わるものはあるんだよね。

 

ゆるく、ほっこりしたい人にお薦め。

2024年2月12日まで開催中。