ひげのサムエルのおはなし
ビアトリクス・ポター さく・え
いしいももこ やく
福音館書店
1974年2月28日 発行
2002年10月1日 新装版発行
2019年11月5日 新装版改版発行
ピーターラビットの絵本ー14
石井桃子さん翻訳の絵本をもとめて、ピーターラビット、シリーズ14。ひげのサムエルは、ねずみ。これも、12,13と同様に、白黒のイラストもまざっていた。
ひげのサムエルはねずみ。でも、最初は、
”あるところに、タビタ・トウィチットさんという名の おかあさんねこがいました。”とはじまる。
タビタ・トウィチットさんは、シリーズ4で、初登場したねこのおかあさん。つまり、 モペットとミトンとトムのお母さんねこ。シリーズ12では、ジンジャーとピクルズのお店が閉店したのをいいことに、商品の値上げをしたやり手かぁちゃん。
そして、今回は、タビタおくさんは、パンを焼く間、子どもたちを押し入れに閉じ込める。これも、、、幼児虐待だ・・・。でも、モペットとミトンはうまく押し入れにいれられたけれど、どうしても、トムが見つからない。そうこうしていると、リビーおばさんがパンのイーストを借りにやってくる。
「また むすこのトムが いなくなったんです。」といって、いっしょにトムをさがしてもらう。タビタおくさんは、トムがねずみにつかまったことを恐れている。
家じゅうをあちこちさがすけれど、トムの姿は見当たらない。そうこうしている間に、モペットとミトンは押し入れから飛び出して、台所に隠れていた。
粉の樽に隠れて、からだ中粉だらけになっていたモペットは、タビタ奥さんにみつかり、樽から出してもらう。モペットはとても脅えているようで、
「ああ、おかあちゃん。年取った おんなねずみが、お勝手に出てきて、ねり粉をぬすんでいったよ!」と告げる。
牛乳置き場にかくれていたミトンは、おかあちゃんにみつかると、「ねずみがバターをぬすんでいった」と告げる。
そう、ねずみは、タビタ奥さんの台所から、粉やら、バターの塊やらを盗んでいたのです!!くわえて、麵棒まで!!
床下では、ぺたぺたとなにかが歩く音がしているけれど、正体がわからない。
リビーおばさんは、大工のジョンさんにノコギリを持ってきてもらわないと!と。
そんな中、一方のトムには、大変なことが!
押し入れに入れられるのなんて嫌だと思ったトムは、台所の煙突に隠れることにした。でも、煙突の中にいると、ずっと下の方でぱちぱちと燃える音がしてきたので、あわてて、てっぺんまで登ることにした。けれども、のぼってものぼっても、たどり着かない。そして、トムはすすで真っ黒になっちゃう! てっぺんまで登り切る前に、壁の石がずらされて、隙間のあるところにたどり着く。 あたりには羊の骨が散らばっている。だれが???
イラストからすると、いわゆる、ラムチョップの骨。誰かの食べ残し、、、。こんなところに?!
そして、 壁にあいていた穴に潜り込むと、 すってんころりん。きたない、おおきなねずみのすみかに転げ落ちてしまった!
「わしのベッドに、すすだらけで転がり込んでくるとは 何のつもりじゃ!」おおきいじいさんねずみに怒鳴られてしまう、このじいさんねずみこそ、ひげのサムエル。
「アナ・マライア!」と奥さんを呼ぶと、飛び出てきたばあさんねずみは、あっという間に、トムの上着をはがし、ぐるぐる巻きにして、ひもできっちりしばってしまう。
「わしに、ねこまきだんごをつくってくれ」
「ねり粉とバターと、麺棒がいるわねぇ。」
そうして、ばあさんねずみとじいさんねずみは、タビタおくさんの台所から、材料を盗んでいっていたのです!!タビタおくさんとリビーおばさんの足音はきこえていたので、近くにいたはず。けれど、二人はトムをさがしていたので、ねずみには気が付きませんでした。
トムの大ピンチ!ねこまきだんごにされちゃう!!やねうらに一人とりのこされたトムは、助けを求めようとするけれど、口の中はすすとクモの巣だらけ。きつく縛られているので、声もでない・・。ただひとり、天井のすきまからクモがやってきたけれど、トムを助けようとはしてくれませんでした。
そして、材料を手にいれたばあさんねずみとサムエルは、トムをねこまきだんごにし始める。ねり粉がたりなかったようで、
「しっぽがつきでとる!」と文句をいうサムエル。「しかも、すすくさくて、いいだんごにはなりそうにない。」と。
そうこうしていると、のこぎりの音が。大工のジョンが、床に穴をあけたのです。
そうして、トムは、ねこだんごにされることなく、無事に救出されました。
タビタおくさんは、トムを助けてもらったお礼に、ジョンにおひるをご馳走したかったけれど、ジョンは、まだとりごやをふたつつくらないといけないから、といって帰っていきました。
サムエルたちは、これを機会に、バレイショさんのお家に引っ越し、バレイショさんのおうちでは、ねずみがどんどん増えて、たいへんなことになりました。
タビタおくさんのいえには、長い間ねずみはでませんでした。
モペットとミトンは、大きくなるとねずみとりが大変上手になり、街に出かけて、ねずみとりで稼ぎ、あんらくに くらすことができました。でも、トムは、ずっとねずみが怖くて、とてもねずみとであうなんて、我慢できませんでした。
おしまい。
と、今回もちょっと怖いお話。だいたい、パンを焼く間、いたずらしたら困るからと子猫を押し入れに閉じ込めるタビタおくさんは、現代なら逮捕もんだな。
そして、大きくなってネズミ捕りが上手になったモペットとミトンは、とったネズミのしっぽを納屋や戸口に、何ダースもさげました・・・、といって、ネズミのしっぽが釘で壁に打ち付けられているイラストが、、、、。怖い・・・・。
ねこまきだんごにするために、ぐるぐる巻きにされているトムも、、、怖い。
やっぱり、ピーターラビットって、残酷物語のような気がする。
でも、読んでしまう・・・。
なんというか、事件が起きても、粛々と日常が続いていく感じが、何とも言えずにシュールなのだ。命が助かったんだからいいでしょ、ってな感じ。いや、たまには、卵がたべられちゃったりもするんだけど、、、そんな悲劇が起きても、また明日はやってくる、って感じ。また、そのたんたんとした感じが、石井桃子さんの翻訳でなんともいえない雰囲気をかもしている。
ピーターラビット、大人の絵本だな。