『こぶたのロビンソンのおはなし』 by ビアトリクス・ポター

こぶたのロビンソンのおはなし
ビアトリクス・ポター さく・え
まさきるりこ やく
福音館書店
1993年9月15日 発行
 2002年10月1日 新装版発行
 2019年11月5日 新装版改版発行
ピーターラビットの絵本 24

 

石井桃子さんの翻訳シリーズを求めて読み始めた福音館書店ピーターラビットも、とうとう最終巻。シリーズ24は、これまでで最高の分厚さ。絵本ではあるけれど、圧倒的な文字の量。絵本というよりは、子供向けの本にイラストがたくさん、といった方がいいくらい。
ちゃんと、お話でした。

 

主人公のロビンソンは、デボンシャーのブタゴヤ・ポーコム農場にすむ、小さい子ブタ。ドーカスおばさんとポーカスおばさんという、あいそのいい、太った黒ブタとすんでいた。でも、おばさんたち、お話の中で登場したかとおもったら、

「でも、このおはなしの中では、ふたりのことはあまりでてきません。さいごは、ふたりともベーコンになりました

って、、、。

さすが、ピーターラビットシリーズ。忘れていない、ブタの本来の運命。

 

最後はベーコンになったという、このふたりのぶたにロビンソンがお使いを頼まれてスタイマスまで1人で出かけたことから、大冒険が始まる。

 

ロビンソンは、おばさんふたりに頼まれたお使いをしっかりはたそうと、いっしょうけんめい、スタイマスまで歩いていく。途中、農場を通ったり、カモメ、ミヤマガラス、ヒツジなど、たくさんの動物にもであう。馬車で通りかかったおじさんには、「気を付けて」とやさしく声をかけられたり。

 

たどり着いたスタイマスの街では、予定通りに品物をうったり、かったり。田舎育ちのロビンソンには、大きな町の物音は、とってもびっくりするもので、ちょっと心細くもなったけれど、たくさん人(動物)に助けられて、無事におつかいをはたす。

町の中では、ロビンソンやドーカスおばさんのことを良く知る人にも出会い、ブタゴヤ・ポーコム農場に帰るなら馬車を使った方がいいなど、たくさんの親切な申し出をうけるロビンソン。そして、街中を歩いているときに、船乗りに声をかけられる。「ノーといえない」ロビンソンは、誘われるままに船乗りについていく。ロビンソンは、小さいこぶたのわりにしっかりしているけれど、「ノーといえない」気の小さいところもあったのだ。

 

そして、、、船乗りにすすめられるままに船に乗り、、、おもてなしをうけ、、、すっかり眠りこけてしまうロビンソン。

 

次にロビンソンが目をさますと、ロビンソンをのせたローソクどっさり号』は、港を離れて海の上だった。。。

 

きぃきぃきぃ!!!泣きわめくロビンソン。でも、だれも助けてくれない・・・。泣き疲れたロビンソンは、次に起きた時には、船員たちがみんな優しく、たくさんご馳走をくれるので、こんな生活も悪くないかと思い始める。

みんな、ロビンソンにたくさんのご馳走をくれた。
だって、、、船長さんのお誕生日のお祝い用に、ローストポークを作らなきゃいけないから・・・・。


自分が、ローストポークになるとも知らずに、気ままに過ごすロビンソン。与えられた食べ物をむしゃむしゃたべるので、気がつけば脂肪がたんまりついて、ぶくぶくに・・・。

そして、、、或る時昼寝をしている最中、ロビンソンは聞いてしまうのだ。自分はローストポークにされてしまうことを!!!!

 

自分の運命を知って泣き続けるロビンソンを救ってくれたのは、船の上で靴磨きをしていたネコだった。ネコは、ロビンソンに「ボートをこげるだろう」といって、見張りをしていた時に島を見つけたから、その島までボートで逃げるようにという。そして、船乗りたちが宴会をしているスキに、ロビンソンは無事にボートで島までにげるのでした。。。

 

たどり着いた島は、ボング樹が生い茂り、海岸にはカキ。木々にはアメやお菓子がなっている。そこは、夢の島のようなところだった。

「この島のことをもっと知りたかったら、ロビンソン・クルーソーという本を読んでください。ボング樹の島は、ロビンソン・クルーソーの島にとてもよくにています」

だってさ。

おわり。


なんと、ロビンソンの名前は、『ロビンソン・クルーソー』からきていたか!!

ブタの冒険物語。

 

シリーズ最初は、うさぎの話。そして、ねこ、ねずみ、人形、イヌ、にわとり、、たくさん出てきたけれど、最後はブタでしめくくり。

ぶたは、お行儀よく二足歩行するし、ボートもこぐ。もっとも、ロビンソンはボートを漕ぐには足が短くて難儀したのだとか、、、。

 

シリーズ全体を通して感じるのは、動物が身近な生き物、ということ。そして、食べられちゃいもするし、人間にだまされたりもする。それでも、それが共生ともいえる。

 

服をきている動物たちに違和感がないのがピーターラビットシリーズ。よくかけているよなぁ、って思う。やさしい色合いの絵は、どんな画材だろうかと調べてみたら、水彩画のようだ。私は、もともと、素描の線が残った水彩画が好きなのだが、そうか、ビアトリクス・ポターの絵は、線の残る水彩だから好きだったんだ、と気が付いた。絵具の白を混ぜずに光を表現することが可能な水彩。だから透明感が残る。もちろん白も使っていると思うけれど、透明感のあるこの色彩が好きだ。

 

やっぱり、絵本っていいなぁ。

 

ピーターラビットシリーズは終わってしまった・・・。次は何がいいかな。。。。