『世界は経営でできている』  by 岩尾俊兵

世界は経営でできている
岩尾俊兵
講談社現代新書
2024年1月20日 第1刷発行 
2024年2月21日 第4刷発行

 

友人がSNSで面白かったとあげていたのと、新聞の広告でも宣伝されていて、「大反響!ベストセラー」となっているので、読んでみようと思った。
図書館で借りようかとおもったら、すごい予約の数だったので、買って読んでみた。

 

幅広帯には、おびただしい広告宣伝の文字、、、。

”みんな 人生の経営者!
 大反響!ベストセラー

「 資本主義から仕事の楽しさと価値創造を取り戻す 痛快エッセイ集」
斉藤幸平氏 推薦!
 仕事から家庭、勉強、恋愛、孤独まで、 笑いながら読めて、ものの見方が変わる。

 私たちはいつまで価値を奪い合うのか?
 今、 日本に足りない「経営」の正体!
・老後の人生「大失敗する人」の共通点とは?
・なぜ優秀な部下が無能な上司に変わるのか?
・頑張れば頑張るほど成果が遠のくのはなぜ?
・飲み残しを放置する夫は経営が下手?
・注意書きを増やすと 事故も増える理由とは?
・人間とサルの違いは 経営にあった?

本書の主張
①  本当は誰もが人生を経営しているのにそれに気づく人は少ない。
②  経営概念によって人生に不条理と不合理がもたらされ続けている。
③  誰もが本来の経営概念に立ち返らないと個人も社会も豊かになれない。

と、まぁ、これだけでちょっと読んだ気になれるくらい、、、。

 

そして、裏表紙の裏の説明には、「はじめに」からの抜粋が。
” 結論を先取りすれば、本来の経営は「価値創造(=他者と自分を同時に幸せにすること) という究極の目的に向かい、 中間目標と手段の本質・意識・有効性問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を作り上げること」だ。
この経営概念の下では、誰もが人生を経営する当事者となる。
 幸せを求めない人間も、生まれてから死ぬまで一切 他者と関わらない人間も存在しないからだ。 他者から何かを奪って自分だけが幸せになることも、自分を疲弊させながら他者のために生きるのも、どちらも間違いである。「倫」理的な間違いではなく、「論」理的な間違いだ。”

なるほどね。

 

著者の岩尾さんは、慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県有田町生まれ。組織学会評議員、日本生産管理学会理事を歴任。著書もいくつかあるらしい。

 

目次
はじめに: 日常は経営でできている
1 貧乏は経営でできている
2 家庭は経営でできている
3 恋愛は経営でできている
4 勉強は経営でできている
5 虚栄は経営でできている
6 心労は経営でできている
7 就活は経営でできている
8 仕事は経営でできている
9 憤怒は経営でできている
10 健康は経営でできている
11 孤独は経営でできている
12 老後は経営でできている
13 芸術は経営でできている
14 科学は経営でできている
15 歴史は経営でできている
おわりに:人生は経営でできてる
謝辞:本書は他力でできている
タイトルはパロディでできている

 

感想。
なるほど、、、。面白いけど、私には、「おわりに」だけ読めば十分って感じがした。〇〇は経営でできているということを15例あげているわけだが、、、考え方の基本は一つ、「共同体をつくる」なので、若干、事例がくどい、、、。そして、有名な著書や名言からのパロディが踏んだんに織り交ぜられているのも、若干、くどい・・・。

読んでいて、若いなぁ、、、、っておもったら、やっぱり若かった。平成元年ということは、1989年生まれか?なるほど。そうか、30代かと思うと、がんばって書いているなぁ、という気がした。

うん、自分の今持っているものを表現しようとしてくれている熱意を感じる。言っていることは間違っていないと思うし、うんうん、そうだね、って思う。こういうのが好きな人は好きだと思う。大ベストセラーになるのも、わかる。目からウロコ、、っていう人もいると思う。自分で書いて、自分に突っ込みいれる、、、みたいな表現も多くて、こういうのが好きな人には面白いし、読みやすいと思う。


最後の、「タイトルはパロディでできている」で、参照作品が列挙されているところが若者向けっぽい。もちろん、私にももと文献がなにかわからない言葉もあったけれど、こうして参照元をかいて置いてもらえると、あ、そうそう、、ってわかって、モヤモヤが解消する。
そう、こうして情報を提供するというのも、「経営」なのだよね。

あらゆることにおいて、自己の利益だけでなく、「共同体」としての利益を頭に置いておくべき、ということ。それが、人生を経営するということ。
最後の参照作品リストを提供するというのは、いってみれば、著者と読者の共同体を豊かにするため、ってことだろう。

 

帯にあった質問の答えを本書から抜粋すれば、こんな感じかな。

・ 老後の人生「大失敗する人」の共通点とは?
 「目的と手段の不整合」:その場にふさわしくない手段で、自己の目的を達成しようとする
 → 会社や組織の上下関係の延長線で、共同体に接する。
  (例)介護施設で、介護士にえばりちらす
  (例)自宅で、配偶者にえばりちらす

 

・ なぜ優秀な部下が無能な上司に変わるのか?
 顧客不在の仕事が無能な上司をつくる。
 →  「価値を作り出す」仕事ではないことで、お給料をもらって当たり前になってしまう。
 (例) 裸の王様組織。知らず知らずのうちに、無意味な仕事を作っている。 
 
・頑張れば頑張るほど成果が遠のくのはなぜ?
 →無能な上司のつくった、無意味な仕事をしている。部下もその無意味さに気が付かない。

 

・飲み残しを放置する夫は経営が下手?
 → 夫婦関係に母子関係を求める夫。妻との共同体をつくることを忘れている。

 

・ 注意書きを増やすと 事故も増える理由とは?
 → 人の集中力には限界がある。伝えたい事をたくさん伝えようとすると、何も伝わらない。
 (例) 〇〇禁止、✖✖禁止、△△禁止、とたくさんの貼り紙をだすと、何が重要かがわからなくなって、どれも守ってもらえなくなる。

 

・ 人間とサルの違いは 経営にあった?
 → サルも人間も、「虚勢合戦」をしている。上下関係の形成を通じて、自分の順位をあげようとする。人間社会でのマウンティングは、まさにサルといっしょ。そこに、「ともに豊かな共同体をつくる」という経営の概念をいれることができるのが人間のはず・・・。

 

最後に、人生を経営しようと思ってもうまくいかないときは、「究極の目的は何か」を問い直せばいい、といっている。対立する手段、対立する意見がそれぞれどの目的に寄与しているのかを考える。手段自体ではなく「手段への目的への寄与・役割」に着目することで、解決策はみえてくるはず、と。

 

そう、近視眼的になると「究極の目的」をわすれてしまいがち。長い目でみて、広い視野でみることが大事だよね。

 

それをわざわざ「経営」といっているわけだ。だから、世界は、世界は経営でできている。まぁ、「世界は思いやりでできている」とかより、キャッチ―なタイトルで、目をひきやすい。

 

「経営する」を英訳してみると、run、manage。

人生は、run。

人生は、manage。

そこには、常に主体性がある。

ということ。

 

自分の人生は、自分で考えて、自分で決めよう。