『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』 by  川上弘美 

恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ
川上弘美 
講談社 
2023年8月22日 第1刷発行

 

知り合いがSNSでコメントしていて、ちょっと興味をそそられた。川上弘美、読んだことないような気がする。図書館で予約してみた。ちょっと待った。そして、順番が回ってきたので、読んでみた。借りたその日のうちに、読み終わってしまった。

 

川上弘美は、1958年、 東京都生まれ。1994年『神様』でパスカル短編文学新人賞を受賞。1996年『蛇を踏む』で芥川賞。他にも数々の受賞作品あり。

でも、わたしは、読んだことが無かった。興味を持ったこともなかった。

 

本の紹介には、
”小説家の私、 離婚と手術を経たアン、 そして 作詞家のカズ。 カリフォルニアのアパートメントで子供時代を過ごした友人たちは、半世紀ほど後の東京で再会した。 積み重なった時間、経験、恋の思い出。・・「年取るのって、いいじゃん」じわり、 たゆたうように心に届く大人の愛の物語。”とある。

 

目次
恋ははかない、 あるいは、 プールの底のステーキ
遠ざかる馬の後ろ姿
あれから今まで1回も マニキュアをしたことがない
夜中目が覚めた時に必ず 考える
そういう時に限って冷蔵庫の中のものが
吉行淳之介だけでどもともとは 牧野信一
不眠症の伯爵のために
2番目に大切なものを賭ける
小面、若女、増、孫次郎、万媚など
流れるプールに流される
すでに破いて中身が空になっている部分
ロマン派
最初に読んだ 三島由紀夫の小説は
水で濡らすと甘い匂いがする
袋いっぱいに黒い種が
山羊はいなかった
栃木に飛んでいく

 

感想。
なんじゃこりゃ。。。

最近、なんじゃこりゃ、って本が多いなぁ、、、っておもいながら、なんじゃこりゃ。

 

はじめて川上弘美をよんだけれど、、、う~ん、多分、他の作品は読まないかな。。。面白くないわけではないけれど、ちょっと、心動かされるし、最後まで読み通したくらい、次がしりたい、、、って感じがあるのだけれど、、、私にとってはなにかが足りない・・・・。いつ、盛り上がるの??って思いながら読んでいると、気が付いたら終わっていた・・・。

読み終わった後に、空白だけ残る感じ・・・。


こういう虚無感みたいなの、好きな人は好きだろうなって思う。いやいや、虚無にかんじるのは私だけかもしれない。

こういう作品を、情熱的作品、って思う人もいるかもしれない。

 

物語は、昔を思い出しながら今を生きている中年以降の男女たち。結婚、出産、離婚、病気、介護、、、誰の人生にも起こりそうな、ふつうのことがたんたんと続く。

ちょっと、せつなく、きゅんとするのは、年をとってもかわらない友情かな。女同士も、女と男も。別れた妻についていった娘と父とか、子どもを持たないままに離婚した主人公の姿とか、娘と馬が合わないけど孫娘とは馬が合うと言い切ってしまう中年女とか、、、。

なんというか、まぁ、人生、そういうもんだよね、って淡々と。

 

つまらないこと、かなしいこと、嫌なことがあっても、淡々と生きている。そして、生きていると楽しいこともある。ちょっと、恋の気分になってみたり、恋のつもりはないのに、ジェラシーを感じてみたり。

 

主人公たちが子供の頃に出会った場所が、カリフォルニアの日本人が集まるアパートメントだった、というところが、また、ちょっと、セツナイ。それぞれ、日本の学校に戻ってきたときに、辛い思いをする。英語の発音がいいことでイジメられちゃうとか、小学校にピアスをしていったらいきなり怒られたとか。

 

不寛容と寛容
そんな、言葉が読みながら頭の中でちらつく。

 

そして、音信不通になってしまった昔の友人を思い出してみたり、連絡がきて驚いてみたり。

 

しかし、目次を見てわかるように、なんというか、説明的なんだな。全体に。 

だいたい、本のタイトルも長すぎるだろ!って突っ込みたくなる・・・。

 

ふ~~ん、こういう作家さんがいるんだね。

微妙に、主人公たちの年齢が自分よりも年上(60代)というのも、そんなに心に染み入らなかった理由かもしれない。

 

なんというか、余韻がみじかいってことかな。私にとって、ちょっと物足りなさがあるのは。結婚に対する不満とか、子供に対する不満とか、、私にはまったく共感できないから、、、読んだ端から、すぅぅっと記憶から消えていく感じ。

 

でもね、昔の同級生が集まったときに、そこにいない同級生の話題で盛り上がる、あの何とも言えない、年寄り臭い盛りあがりというのか、、、話題が過去のことにかたよっていく中年の性、、みたいなのが、ちょっと向き合いたいたくない現実って感じで、痛かったのかもしれない。

 

思い出もいいけど、前向いて、いこうぜ!

ってね。

 

途中、数々の文化芸能の話題がでてくる。吉行淳之介もそうだし、能の話では白洲正子だとか、三島由紀夫だとか。かといって、その作品に興味が惹かれる、って感じでもなかったんだなぁ。

 

なんだか、不思議な作家さん。

拍子抜けって言うか、肩透かしっていうか、、、。

ま、こういうのも、あるよね。