『薤露行(かいこうろ)』 by 夏目漱石

『薤露行』夏目漱石

漱石全集 第二巻』(全28巻)
岩波書房
2017年1月11日 第一刷発行 より

 

先日、ジェイムズ・ノウルズの『アーサー王物語』をよんだときに解説で紹介されていた、夏目漱石が書いた『アーサー王物語』というのを読んでみたくなった。それが、『薤露行(かいろこう)』。

megureca.hatenablog.com

ウィキからそのまま引用すると、
”『薤露行』(かいろこう)は、日本の小説家・夏目漱石(1867年 - 1916年)が、1905年(明治38年)に発表した短編小説。アーサー王物語を題材にした創作としては日本初の作品であり、円卓の騎士ランスロットをめぐる3人の女性の運命を描く。本作のテーマをめぐっては後年、文芸評論家の江藤淳(1932年 - 1999年)と小説家・評論家の大岡昇平(1909年 - 1988年)との間に論争が起こっている。”

薤露行 - Wikipedia

 

吾輩は猫である』の後に発表された、漱石の二作目、ということらしい。

 

検索してみても、「青空文庫」はでてきたけれど、一冊の本として出版されているものは見当たらない。なので、本作が掲載されている漱石全集』(二巻)を図書館で借りて読んでみた。

全集の単行本の中の、40ページ程度の短いお話。

 

最初の1ページは、なぜ自分がアーサー王物語を書くのか、ということが漱石調で語られている。

 

”世に伝うるマロリー『アーサー物語』は簡浄素樸という点において珍重すべき書物ではあるが古代のものだから一部の小説として見ると散漫の譏(そしり)は免がれぬ。”
だから、自分が、ちょっと場面設定とかを変えて小説風に書いてみようって。
別に、マロリーを称えるために書くんじゃないから、そこんとこよろしくね!みたいな説明が。いかにも、漱石らしい。

 

そして、物語は、ランスロットアーサー王の家臣であり、円卓の騎士のひとり)を中心に進む。ランスロットは、アーサー王のギニギア王妃と浮気をしているのだが、ギニギアが不吉な夢をみたといって、ランスロットを他の円卓の騎士と同じように北に戦いに行くことを促す。そして、北に向かう途中で、マーリン(アーサー王の中に出てくる魔術師)の魔法の街を通ったり、一夜の宿を求めてアストラットのある一家にとめてもらい、試合に望む。アストラットの家の主人からは、息子の一人を北の試合に一緒に連れていくことを頼まれ、盾を預かる。また、一家の娘・エーレンは、ランスロットに一目ぼれする。

そして、北の試合に向かったランスロットとエーレンの兄だったが、試合が終わった兄は1人で自宅に戻り、ランスロットはけがをした後、行方がわからない、、と。悲嘆にくれたエーレンは、悲しみのあまり絶食して命を落とす。そして、亡骸は小舟にのせられ、ギニギアのいるカメロットの館に流れ着く。
その亡骸は、
「うつせみの世を、
うつつに住めば、
住みうからまし、
むかしも、今も。
うつくしき恋、
うつす鏡に、
色やうつろふ」
と、マーリンの魔術の街にいたシャロットがうたった詩を握り締めていた。

その詩をよみ、美しい娘の亡骸をみたギニギアは、「美しき少女!」と涙を流す。
周りにいた騎士たちは、目と目を見合わせた。

THE END。

 

えっと、、、よくわからないけれど、なんとなく、文章が美しい・・・。
文語なのだ。
おもわず、声を出して読んでしまう。。。 

 

物語には一応、項がついていて、
一 夢
二 鏡
三 袖
四 罪
五 舟

確かに、ちゃんと小説風だ。ドラマチックな小説風。クライマックスもある。けど、文語体で、今一つ意味が掴み切れていない。。。それなのに、なんか、いいなぁ、、、って思っちゃうのは、リズムだろうか。

最後のエーレンが流れ着くところでは、

”・・・雪よりも白き白鳥が、収めたる翼に、波を裂いて王者の如く悠然と水を練り行く。長き頸の高く伸したるに、気高き姿はあたりを払って、恐るるもののありとしも見えず。うねる流れを傍目もふらず、舳に立って、、、、”

と、なんだか、神々しい感じすらしないだろうか。

こういう文体、かっこいいなぁ、、、って思う。

 

しかし、、、やっぱり、『アーサー王物語』は、トマス・マロリーの作品を読まないとダメかな。古典に返るって大事だね。

 

ちょっと、未消化な感じはのこるけれど、なるほどこれが、漱石アーサー王か、と満足。

 

ついでにいうと、漱石アーサー王伝説 『薤露行』の比較文学的研究』(講談社)という江藤淳の作品がある。文庫本を借りて読もうと思ったのだが、活字のあまりの小ささに、、、挫折。

 

漱石夏目金之助が、二年有余にわたる英国留学から帰朝したのは、明治36年、、、”とはじまる序説。いかんせん、文字が小さすぎる、、、出版は、1991年が第一刷となっているけれど、、。パラパラとめくると、実に興味深い。薤露行の解釈だけでなく、夏目漱石の研究本といっていい。

いつか、単行本で借り直そう・・・。

 

漱石は、この先もまだまだ楽しめそう。

 

ちなみに、岩波書店漱石全集は、全28巻。揃えたら、テンションあがりそう・・・・。でも、今はやめておこう・・・・。積読にしてしまいそうだ。