家をせおって歩く かんぜん版
村上慧(むらかみさとし) 作
福音館書店
2016年3月1日 発行
2019年3月10日 増補版第1刷
『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)、第一章 自分らしくいきる、からの紹介。
装丁は、白黒のイラストで、なかなかポップな感じ。いったいどういう絵本かな?と思って、表紙をめくって、びっくり。
白い家をかついで、公園のベンチの前を歩いている人の写真。。。
え?!?!
” このおもちゃのような家は私の家です。私は自分の家を発泡スチロールで作り そこに住むということをしています。”
と。
絵本というか、写真と絵。物語ではなく、究極のミニマリスト生活?!?!のレポートだった。
著者の村上さんは、1988年生まれ、 東京都育ち。 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。アーティスト。2014年4月から自作した発泡スチロールの家を使っての生活を始める。 他の著書として、この生活を1年分の日記にまとめた『家をせおって歩いた』(夕書房)がある。
ページを進めていくと、家の紹介では詳細な家の作りがイラストで説明されていたり、背負い方、寝るときの変形の仕方などが語られていたりする。
材料は、発泡スチロールや角材などで、「合計2万円くらいでした」と。
バックパックと、この発砲スチロールのお家で、過ごしたらしい。持ち物の紹介には、リュックサックから、着替え、洗面道具、家の補修道具、携帯やパソコン、バッテリーなどなど。
そして、歩きながら、夜になると家を置かせてくれる土地を探す。お寺や、神社、お店などを尋ねて、置かせてもらうのだそうだ。そして、そこのトイレや洗面所を自宅の間取り図にみたてて、いくつかの事例が図解されている。ときには、銭湯も間取り図の中にあったりして。
まぁ、、、なかなかサバイバルな記録である。
さすがに、真似してみたいとは思わないけど、、、。
すごいこと考えるもんだ。
1988年生まれで、2014年から、、、、というから、26歳くらいか。若いなぁ。。。
「おわりに」の中で、
”住む場所は変えることができます。住み方だって変えることができます。するといつもと同じ町が全然違うものに見えてきます。私たちはそうやって世界を変えていくことができます。”って。
本書は、子供向けに作られたものだけれど、『家をせおって歩いた』という、東北から九州まで移住生活をした日記の本もあるそうだ。
東日本大震災後、2014年から家をおいた場所180か所が、写真で紹介されている。
確かに、住む場所を変えることはできる。住み方も、生き方も変えることができる。それを実証してみせた、ってこと。
住む場所がかわると、世界が変わる。
世界の見方で世界は変わる。
子どもが読んだら、真似したい!っていいだす子はいるだろうな、って思う。親としては、心配でしょうがないだろう。
可愛い子には旅をさせろ、、とはいうけど、家を背負って歩けってのは聞かないね。
家をおいた場所180か所の写真も、並べてみるとあっというま。色々な人に助けられての移動生活だったことが良くわかる。人の親切に触れて生きていると、きっと当人の表情も変わっていったのではないだろうか。
普通、家は自分を悪天候から守ってくれるものだけれど、発泡スチロールの家は、自分が台風から守ってやらなくてはいけない、って。そして、家を守るための場所を提供してくださるかたに、彼は守られる。
よく考えてみれば、自分の家だとしたって、誰かがその家を頑丈に作ってくれたから、そこで安心して暮らしていけるのだ。だれも、自分一人の力で生きている人なんていない。きっと、身をもって24時間そんなことを感じながらの移動生活だったのではないだろうか。
特に、教訓めいたことが直接かかれているわけではない。
しいていうなら、
「世界は変えられる」ってことかな。
ユニークな本だった。
というか、ユニークな著者だった。