『暗殺』 by 柴田哲孝

暗殺
柴田哲孝
幻冬舎
2024年6月20日 第1刷発行 
2024年7月26日 第7刷発行

 

知り合いが、『暗黒自治区』の著者・亀野仁さんが面白いと言っていた、というので、読んでみようと思った。

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図書館で予約しようと思ったら、すごい人数の順番待ちだったので、エイヤッとポチった。フィクションの単行本で1800円(税別)。まぁ、映画をおもえば安いもんか・・・。

 

内容は、亡き安倍総理の暗殺事件にまつわる様々な憶測をフィクションで表わし、、、って感じだろうか。知り合いの警察庁OBの方に言わせると、「まぁ、フィクションの世界だから、どうともでも書ける。興味なし・・・」という感じだった。

 

帯には、たくさんの文字。

” 元内閣総理大臣が凶弾に倒れ、その場にいた一人の男が捕まった。
日本の未来を奪った二発の銃弾。
本当に’彼’が元総理を打ったのか?
政治家、 フィクサー、 警察、 巨大宗教団体が 複雑に絡み合った陰謀。 真相は、 1人の記者の共時が明かすのか、 闇に葬られるのか・・・。
『 北山事件 最後の証言』の著者が精緻で膨大な取材で描く、衝撃のサスペンス”

文字は、裏にも続く。

奈良県で元内閣総理大臣が撃たれ、死亡した。その場で取り押さえられたのは41歳の男性。 男は手製の銃で背後か 被害者を強襲。 犯行の動機として、 元総理とある宗教団体とのつながりを主張した。
 日本史上最長政権を築いた元総理の殺害という前代未聞の凶行。 しかし、この事件では多くの 疑問点が見逃されていた。 致命傷を与えた銃弾がいまだに見つかっていない。 被害者の体からは、容疑者が放ったのとは逆方向から打たれた銃創が見つかった。 そして、警察の現場検証は 事件発生から5日後まで行われなかった。

 警察は何を隠しているのか?
 真犯人は誰だ?
 35年前に起きた ある未解決事件との繋がりが見えたとき、全ての陰謀は白日の下に晒される。”

 

著者の柴田さんは 1957年 東京都武蔵野市 生まれ。日本大学芸術学部 中退。 2006年『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞 (評論その他部門)と日本冒険小説協会賞大賞(実録賞)を受賞。

 

目次
序文
プロローグ
第一部 影の男
第二部 暗殺
第三部 陰謀論
第四部 蘇る亡霊
エピローグ 追憶

 

感想。
なるほどねぇ。。。。
安倍総理陰謀論ってことね。

 

物語は、あくまでもフィクションなので、安倍首相をモデルとする人物は、田布施博之という政治家になっている。また、統一教会、山上徹也被告も、 世界平和合同家族教会、上沼という名前ででてくるけれど、母の巨額の献金の元凶が宗教団体にあり、そこと強いコネクションのあった元総理を手製の銃で襲撃、と、実際の安倍総理殺害事件と同じ背景。

正直、私は、実際の元安倍首相銃撃事件について、その後の事件解明がどう進んでいるのかについてはあまり詳しくない。とんでもない事件であることは間違いないし、起きてはいけない事件だったのもわかる。陰謀論が囁かれているということも知らなかった。

要するに、ケネディー大統領の暗殺事件のように、オズワルドは囮であって、本当の犯人は別にいる、、、という噂?と同じストーリーのようだ。

*1963年11月22日、第35代アメリカ大統領・ジョン・F・ケネディが何者かに狙撃され、暗殺された。事件直後に逮捕され、“暗殺犯”とされたリー・ハーヴェイ・オズワルドは、犯行を否認したまま殺された。犯人は別にいるとされているが、情報公開は、2039年の予定。

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帯にある、35年前におきたある未解決事件とは、朝日新聞 阪神支局』でおきた襲撃事件。小尻記者が散弾銃の犠牲者となった。もう一人の犬飼兵衛記者は重症。犯人は、その場に居合わせたもう一人に三発目を発砲することなく立ち去った。
事件のあと、「赤報隊」を名乗る犯行声明文が報道機関に送られ、朝日新聞を狙った犯行が繰り返されたが、いずれも未解決のまま時効となっている。

赤報隊の正体も、不明なまま・・・。

本作は、この赤報隊を含め、裏で政治家、官僚、さまざま陰謀があったというフィクション。

いやいや、、、ないでしょ。それは、、、とおもうけれど、あるのかもしれない。
いわゆる裏の世界ともちょっと違う。。。表の世界の裏の顔の世界というか。。

 

以下、ネタバレあり。

 

序文で、元首相暗殺事件勃発。41歳の男が取り押さえらえる。

プロローグで、朝日新聞阪神支局襲撃事件発生。赤報隊からの犯行声明。
そこででてくるのが「 日本民族独立義勇軍」、別名「民独」。赤報隊の事件と前後して、領事館襲撃事件などを起こしている。そして、未解決のままの事件の数々。

第一部で、影の男、つまりは右翼の巨魁、高野晃紀が登場。高野は、『日本皇道会』総裁として政治活動の傍ら右翼の客論、思想家、作家などとしても活躍。

私には、高野のモデルとなった人物がいるのかはわからない。詳しいひとなら、わかるのかもしれない。。わかれば、私よりずっと楽しんで読めるだろう・・・。

そして、高野と息の通じた人物たちは、防衛省、警視庁OBなど、、、つまり、右翼と防衛省や警察関係も右翼とグルになって、、、という話。

 

高野は、「令和」という年号をつけたところからし田布施のことを憎んでいた。
なぜなら、「令和」というのは万葉集からの引用などではなく、日本人を支配する多民族の主導者が日本人を掟で縛り、令旨を下すという意味に他ならない、というのだ。

 

本来の”令和”の”和”は、穏やか、和む、総じて調和の意味を持つ。だが、この”和”には、もう一つ和人即ち、日本人の意味もある。令は、言いつけ、令旨・命令のこと。要するに、令和というのは、日本人が命令される、、ということだ、と。そして、命令を日本人にくだすのが、世界合同教会の指導者・韓国人、と。

 

ここまで読んで、私には、なんだか突飛なこと言うよなぁ、、、という感じだけれど、巷にはそういう陰謀論があったのか?私にはわからない。

 

そして、高野は人をつかって「田布施暗殺計画」を企てる。そこで、暗殺者として選ばれたのが、上沼。上沼は、もと自衛官で、自衛隊を辞める時に防衛省に忠誠を誓っていたのだった。そして、高野の陰謀のコマとして動き始める。
一方で、素人の狙撃で暗殺できると考えてはいない高野の一派は、「シャドウ」と呼ばれる謎の男を日本に入国させ、田中道夫として潜伏させる。シャドウは、狙撃の名手。要するに、過去の襲撃事件もシャドウの仕事だった?!

 

第二部では、暗殺に向けての準備。
シャドウは、高野一派に、銃と銃弾を用意させる。用意させた銃弾は、「アマルガム」(水銀とインジウムの合金で、水銀の割合によって融点が可変、人体で溶けてなくなる)。銃は、極力消音できる、エアライフル。

一方の、上沼は火薬、銃器の自製を指示され、自宅で凶器づくりを続ける。黒色火薬の作り方が、詳細に記述されている。、、、火薬は正しく使うには文明の利器だけど、、、、、、。

 

場所の選定も、高野らの一派によって選択される。街頭演説をやるには、ちょっと錆びれているが、狙撃しやすい場所。奈良県大和西大寺駅の北口。これは、実際の事件と同じ場所。

銃撃。
そして、上沼の逮捕。現場を立ち去るシャドウ。

 

第三部では、一連の事件に疑問を持った雑誌記者の一ノ瀬正孝登場。かれが、事件の真相を追う。そのための情報とりに協力してくれた記者仲間の美穂は、駅のホームで何者かに突き落とされ、死亡。事故として処理される。

 

第四部では、世間の犯人に関する興味が、「合同教会関連」にうつっていく。まさに、安倍首相暗殺事件はいつのまにか統一教会の話題にすり替わっていたという事実とかぶる。この元首相暗殺計画から実行までの間、3年以上の潜伏期間があるのだが、その間に物語の中で起こるアメリカの大統領選は、事実といっしょ。トランプ大統領の誕生。そして、トランプと日本の首相の蜜月・・・。そこに防衛力整備に関する密約があり、それをうやむやにするために、田布施首相は体調不良を理由に辞任・・・。

 

安倍さんの体調不良による辞任は、一期目のときだけれど、なにかの密約をうやむやにするために辞任した、と、、おもわれていたのだろうか?このあたりも、私には思い当たらない。政治に疎い・・・・。でも、安部さんの難病潰瘍性は、本当に大変な病気なので、あることないことで後ろ指刺されるのは気の毒。。。

 

そして、国葬にまつわる様々な憶測も並べられている。日本の天皇陛下が出席しない国葬なんてありえるのか?と。。。実際に、安倍首相の国葬天皇は出席していない。なるほど、、、そんなことも当時わだいになっていたのか?私にとっては興味の対象外で、これも特に記憶にない・・・。

 

で、ことの核心に近づいていく一ノ瀬記者は、とうとう、なぞの男の手で、交通事故に見せかけて殺され、、そうになる。すんでのところで命はすくわれるのだが、、、その謎の男こそ、シャドー?

 

最後のエピローグでも、高野一派が、親切を装って一ノ瀬の見舞いに来るのだが、
おそらく、一ノ瀬殺害を指示したのも高野一派・・・。

誰が信じられる人物なのか?

最後、シャドーは、なんなく日本から出国。
いったい、シャドーはだれだったのか?
これから、暗殺を繰り返すのか?


なるほどねぇ。
381ページの単行本。


安倍首相暗殺事件に興味があって、陰謀論とか好きだったら面白いと思う。

 

私には、やっぱり、ただのフィクションでしょ、としか思えない。
というか、真犯人がどうであっても、私の人生には影響しない、、、って感じかな。

1800円の価値があったか?というと、微妙・・・。
でもまぁ、話題の本を読んだってことでいいことにしよう。

事件に興味のある人には、おおいに楽しめると思う。

 

とある筋の人によれば、確かに安倍首相暗殺事件の捜査には疑問点もあるようだ。でもね、、、死んじゃったものは死んじゃったんだよね。。。それはやはり、痛ましい。

日本ではアメリカのような銃乱射事件は起こりにくいけれど、暗殺の歴史は長い。2.26事件だって、原敬だって、安部善次郎だって、、、。江戸時代なんて敵討ちが当たり前だったわけだし・・・。しかし、正当化されえる殺人は絶対にありえないと思う。

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政治とか、右とか、左とか、、、経済と同じくらい複雑性の世界。

フィクションで楽しんで学ぶ、、くらいでいいかも。

 

やっぱり、読書は、楽しい。