ブッダ【第7巻】ダイバダッタ
手塚治虫
潮ビジュアル文庫
1993年2月10日 第1刷
1996年2月20日 第20刷
第6巻の続き。
目次
第四部
第1章 剣士と風来坊
第2章 決闘者
第3章 対決
第4章 危難
主な登場人物
・シッダルタ:シャカ族の王子。ブッダ。
・タッタ:山賊。バリア(人間以下とされた最低身分階級)出身。子供の時にシッダルタと出会っている。ダイバダッタに剣士としてスカウトされる。
・ダイバダッタ:バンダカの忘れ形見。大人になっている。
・ビンビサーラ王:マガダ国王。息子であるアジャセ王子に殺される運命にあると、アッサジに予言されたことがある。ダイバダッタとタッタが仕えることになる。
・アジャセ王子:マガダ王国の王子。8才だが、賢い。
舞台は、マガダ王国。ダイバダッタは、ずる賢く人びとをダマし、剣士を探しているうちにタッタに出会う。マガダ国の兵隊になれば、コーサラ国(タッタの故郷の仇)に攻め込むことができるかもと思って、マガダ王国の近衛兵として雇ってもらえるように、ダイバダッタに剣と勉強を教えてもらう。二人は、無事に、近衛兵として城に入った。
ある日、アジャセ王子が人を襲う凶暴な象に連れ去られてしまい、タッタはその象退治に向かう。無事に凶暴な象を退治し、アジャセ王子は城に戻ったが、タッタは瀕死の象が自分を殺さずに、山に向かって歩き出したことを不思議に思ってその後を追いかけた。すると、瀕死の象は、槍が刺さった小象の元に行き倒れた。タッタは、人間が小象を殺したことを憎んで、人を襲っていたのだと知る。そして、子供のころは動物と心を通わせることができたことをふと思い出す。
アジャセ王を無事に救い出したことで望み通りの褒章を与えると王から言われたタッタは、あの象をそっとしておいてやってほしい、という。子を思う象の気持ちを理解した王は、そのまま象を静かに死なせてやることにする。
ダイバダッタは、タッタが象にとどめを刺さなかったことも、王がそれを許したことも理解できなかった。不機嫌なダイバダッタは、ミゲーラにタッタが思いやりを持つよう変わったきっかけをつくったというシッダルタの話を聞き、シッダルタに会いに行く。
シッダルタは、洞穴の中で修行中だった。樹の下での悟りから7日7晩、悪魔の誘惑と戦ったという。しかし、悪魔は去ってはいなく、「私の心の中に取り付いている」といった。
弱肉強食の世こそ真理だというダイバダッタに、それは違う!と、否定するものの、戦争、殺人、奪い合いという現実にうなだれるシッダルタだった。
ダイバダッタは、アジャセ王の遊び相手をするようになる。
ある日、ビンビサーラ王(マガダ国王)の元に、バセーナディ王(コーサラ国王)から、領土問題の交渉の使いがやってくる。領土問題の決着をつけるために、両国からの代表剣士が戦って、勝ったほうが問題の土地の所有権を得るということになる。
マガダ国代表にタッタ、コーサラ国代表にヤタラが選ばれる。が、決闘の前に偶然出会った二人は、互いにシッダルタに出会ったことを知り、シッダルタへの尊敬の念を共感し合う。
翌日、剣士として二人は城で対決した。接戦は長く続き、二人は勝負がつかないままに疲労困憊。試合は翌日に持ち越しとなる。
翌日の試合で、ヤタラはタッタの剣ではなく、何者かの吹き矢で倒れる。タッタは、卑怯な手を使って勝つことは良しとせず、ヤタラに最後の一撃で殺すことはしなかった。吹き矢をは、ダイバダッタの命令。ビンビサーラ王も、卑怯な手で勝利をてにする気はないと言って、ヤタラを手当てするように命令する。
ダイバダッタは、トリカブトの毒をつくらせた老人に、今度は飲むと口がきけなくなる薬をつくらせ、ミゲーラに飲ませ、ミゲーラを吹き矢の犯人にしたててしまう。ミゲーラがそんなことをするはずがないと信じるタッタだったが、口がきけなくなったミゲーラは城の外へ追放されてしまう。ダイバダッタは、ミゲーラはコーサラ国で裁かれるから、ここからコーサラ国へ向かうコーサラ軍を追って、ミゲーラを救えばいいとタッタにいった。タッタは、ミゲーラを救うため、一人でコーサラ軍を追い、無事にミゲーラを救い出す。
二人は、マガダ国には戻れないので、苦行林に向かい、シッダルタを探すのだった。そして、悟りを開きブッダとなったシッダルタに再会する。ミゲーラの仇をうつというタッタに、それよりミゲーラを治してやった方がいいというシッダルタだった。
シッダルタは、ミゲーラの心の中に入り、奇跡を起こす。ミゲーラは再び話せるようになった。
タッタの後をこっそり追っていたダイバダッタは、その様子をのぞき見していた。シッダルタの起こした奇跡を目の当たりにして、弟子入りしたいと申し出た。そして、ずっとそばにいたいというダイバダッタだったが、
「 今自分は何をしているのか、 自分のしていることは自分にとって大事なことなのか。 人にとって大事なことなのか。 大勢の人にとって大事なことなのか。 国中の人にとって大事なことなのか。 世界の人にとって大事なことなのか。 この自然にとって、あらゆる生き物にとって大事なことなのかをよく考えなさい」
とシッダルタに言われる。
自分は、一人の力で生きてきたから、なぜ他の人のことを考えなくてはいけないかがわからないというダイバダッタに、
「この世はすべてつながっている。ごはんを料理する人、その米を育てた人、いろんな生き物、いろんな人たちの恩を受けて生きているのだ」とシッダルタはいった。
子供のころ、ナラダッタという男にもそんなことを言われたことを思い出したダイバダッタは、シッダルタの教えを広めようと考えるのだった。
このダイバダッタという男は、4巻から登場しているのだが、ブッダに憧れながらも、私欲を捨てきれずに、後にブッダを裏切る男。
第8巻に続く…。
