「悩むことは生きること 大人のための仏教塾』 by 平井正修

悩むことは生きること 大人のための仏教塾
平井正
幻冬舎新書
2023年1月20日

 

全生庵、平井住職の新刊。先日の坐禅会で、一冊いただいたので、早速よんでみた。

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帯には、住職の写真と広告の文字。
”「人生の悩み」も、「この世の疑問」も、2500年前から仏教が解決してきた!
何もかも大きく変わる時代だからこそ役に立つ仏教が説く「人間の原点

・生きることにどんな価値があるのか?
・死ぬことが怖いのはなぜ?
・「本当の自分」「自分らしさ」とは何か?
・いい学校、いい会社に入ることに意味はあるのか?
・キレる人は、なぜキレる?
・お金がないと幸せになれないのか?
・いじめや殺人がいけない理由は?
・「自由」とはどういうことか?
・「あの世」とは何か?
・「悟り」とは何か?
・「ご利益」は本当にあるのか?
今さら人に聞けない95の疑問。”
・・・とある。

たしかに、今さら、人に聞いて確かめたことはないけれど、、という疑問がたくさん。

裏の内容紹介には、
”生死のこと。心に浮かんでしまう良くない感情。抑えきれない不安。あなたの抱える悩みや苦しみに、2500年も前から向き合い、救いと解決の手を差し伸べてきたのが仏教だ。その教えは我々の生活や教養の一部となり、心を整える一助となっている。けれど仏教のことをちゃんと知っていますか?釈迦の教えを日々実践している禅僧が、いまさら人に聞けない、シンプルだか本質的な95の疑問に答える。情報が溢れ、変化の激しい現代だからこそ、仏教が説く人間の原点に立ち返り、生き抜く智慧を身につけよう。”

 

著者の平井正修さんは、臨済宗国泰寺派全生庵住職。学習院大学法学部政治学科卒業。1990年静岡県三島市龍澤寺専門道場入山。2001年同道場下山。2002年より中曽根康弘元首相や安倍晋三元首相などが参禅した全生庵の第7世住職に就任。全生庵にて坐禅会、写経会を開催。2016年より日本大学危機管理学部客員教授。2018年より大学院大学至善館特任教授。臨済宗国泰寺派教学部長。

たくさんの書籍もある。また、昨年は銀幕デビューも!

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感想。
うんうん、そうだそうだ、と、おもわず頷きながら、あっという間に読んでしまった。住職のばっさばっさと明快な語り口が目に浮かぶ、って感じ。気持ちが楽になる一冊。
さら~~っと読める、幻冬舎新書。Q&Aの形になっているので、とても読みやすい。目次をみて、気になるところだけを読んでもいいかもしれない。


帯に「仏教が解決してきた」とあるけれど、読んでいても仏教の教えを聞いている気がしない。それだけ、日本人の日常になじんだ教えということなのかもしれない。

 

目次
第1章 私たちは何のために生き、なぜ死ななくてはならないのか
第2章 「本当の自分」とはどういうものか
第3章 悩みから逃れられないのはなぜか
第4章 「みんながいっていること」の本当の意味とは
第5章 仏教でよく聞く言葉の意味を知りたい
第6章 そもそも仏教とは、どういう宗教なのか
第7章 仏教を理解するために覚えておきたい基本
第8章 私たちの暮らしの中に根付いている仏教
第9章 今更聞けないお寺とお坊さんに関する疑問
第10章 修行とは何か
おわりに 静かに考える時間を持ちましょう 

 

章ごとに、さらに質問が目次になっている。知りたい質問をみつけるのも簡単。
そして、全ての質問に、シンプルな答えが提示され、そのあとにその説明がついている。まさに、Q&A集。

 

たとえば、第1章から

”Q 生きていることに、どんな価値があるのですか?
A ただ生きているだけで、人には価値があるのです。

これは答えるのが、とても難しい問題です。
なぜ、難しいのか?それは、生きることの価値を測る”ものさし”や”はかり”がないからです。何を基準にして「価値」といったらいいのかわからないからです・・・・。”と続く。

 

他には、
Q 私の命は、私のものですか?
A あなたのものですが、あなただけのものではありません。

 

Q 自殺は、どうしていけないのですか?
A 自殺は自分への「裏切り行為」だからです。

などなど、、、、。
Aに続く、住職の説明をよむと、ふむふむ、なるほど、、、と納得してしまう。

 

心に残ったQ&Aをちょっとだけ覚え書き。

 

Q すべては「運命」によってきまっているのですか?
A 生き方は「運命」ではなく、あなたが決めることです。

そうそう、自分でえらんで、自分できめること。

 

Q いい学校、いい会社に入ることに、意味はありますか?
A 「いい所」には成長のためのすぐれた環境があります。

そう、離れてみてわかる、そこがいい場所だったのかどうか。。。私が30年間務めた会社は、やはり、いい会社だったのだと思う。本当に全ての機会が、成長のための機会だったと思う。学校ならば、私は、小学校~高校が公立だったけれど、大学より高校のほうが、いい学校だったように思う。。。そうなのだ、いい所には、いい仲間がいる。いい仲間がいるというのが、なによりいい所なのだ。それは、学校や会社に限らない。

 

Q 失敗が怖くて、何もできません。
A いっぱい失敗していいのです。失敗からしか学べません。

これは、このAがきになったというより、この中で、
失敗しないと次には進めません。もし、次に失敗したくないと思ったら、今失敗しておくことです。そうすれば、どうすれば失敗しないかわかるはずです。”という一文に、ガツンと殴られた感じがした。

そうなんだよなぁ、、、、でも、失敗を繰り返すのは、どうすれば失敗しないか、、、、と、そこまで考えてないからなんだよなぁ。。。。と、本書のなかでいちばん深くこころに響いた。
失敗の本当の原因を見つめずに、「運が悪かった」とか、「今日は調子が悪かった」とか、、、他に言い訳を求めていると、いつまでも改善されない・・・・。
失敗の原因と同様に、成功の原因を追求するというのも実は大事。。。なぜうまくいったかわからずに成功したことは、再現することができない・・・のだよね。

 

Q いじめられています。どうすればいいですか?
「逃げる」ことも、自分を守る「強さ」です。

大賛成!!!

 

Q やる気が起きません。
A やる気がなくても、とにかく始めてみることです。

これは、なかなか、斬新!とおもったけど、確かに・・・。脳科学や心理学の専門用語、「作業興奮」という言葉が引用されている。いやいや始めたことでも、やっているうちにやる気がでてくる、って話。行動することで脳の「側坐核」が刺激され、そこからドーパミンがでてくるのだそうだ。ちょっと、わかる気がする。

 

Q 「プライド」とは何ですか?
A 間違った行いをしないよう、自分を律する仕組みです。

「プライド」というのは、辞書には誇り、自尊心などと書かれているけれど、わかりやすく言えば「自分が大事」ということだそうだ。プライドとは本来、他人とは関係のないもので、あくまでも自分自身を律し、自分自身を高めていくためのもの。
人になにかを言われたりして「俺のプライドがゆるさない」とか「私のプライドが傷ついた」というのは、プライドとの付き合い方を間違っている、と。
「俺はそんなことはしない。それは自分のプライドがゆるさない」という言い方ならわかる、と。

「○○さんは、プライドが高いから」というと、一般的にはあまり肯定的な感じがしないのは、間違った使い方の一つかも。鼻持ちならない奴、、、みたいな。

でも、確かに、プライドが高いというのは、自分を律する気持ちが高いということであって、人と比べてどうのこうのいうものではないんだな。

住職曰く、
”他人が何をいおうが、何をしようが、それで自分のプライドがどうなるものでもありません。”

 

Q 何のために坐禅をするのですか
A 本来の自分自身に気づくのが坐禅の目的です。

そうか、そんなに深く坐禅をする理由を考えたことがなかったけれど、そうなのかもしれない。。。自分探しではなくて、自分に気づく。だって、自分なんか探さなくたって、今ここにいる。気づくこと。それが目的。シンプルなこと。

 

静かな環境で、ぱらぱらと読みたい一冊。

きっと、だれもに一つや二つ、腹落ちしてすっきり!となれる言葉があると思う。

そうか、それでいいんだ、って。

 

悩むことは生きること。

まさ、その通りだ。

でも、だから、生きることは、楽しい。

 

読書も、楽しい。