小林古径 生誕140年記念特別展 @山種美術館 

小林古径 生誕140年記念特別展 山種美術館 
小林古径速水御舟
 画壇を揺るがした二人の天才

 

昨日、日曜の午前中、渋谷方面に用事があったので、ついでに山種美術館に行ってきた。

山種美術館は、日本画専門の美術館。

美術館のHPによれば、山崎種二(1893-1983・山種証券[現SMBC日興証券]創業者)が個人で集めたコレクションをもとに、1966(昭和41)年7月、東京・日本橋兜町に日本初の日本画専門美術館として開館したとのこと。

日本画の専門美術館 山種美術館(Yamatane Museum of Art)

 

いつか行ってみたいと思いながら、行ったことがなかった。今回は、午前中に近くで用事があり、せっかくなので歩いて行ってみることにした。企画展示が何であるのかも調べずにいったのだが、開催していたのは、「小林古径速水御舟」だった。

広尾高校の目の前にある小さな美術館。青山から恵比寿に向かう通り沿いにあるのだけれど、イヤホンでオーディオブックを聞きながら歩いていたら、うっかり通り過ぎそうだった。

 

建物に入ると、すぐに受付。左手には、小さなカフェがある。カフェというより、ロビーの続きみたいな、、、。朝から出かけて用事をすませ、すでに12:30過ぎ。お昼ご飯を食べていなかったので、美術館にレストランがあったら、そこでランチにしようと思っていたのだけれど、とても私のお腹を満たしてくれるメニューはなさそう。和菓子とお茶がメインのカフェだった。一応、にゅう麺が、メニューにあったけど。。。。ランチは、美術館を鑑賞したあとに、どこかでガッツリたべよう、、、と。入場券購入へ、

 

入場料は、大人1400円。100円(戻ってくるタイプ)ロッカーに荷物を入れ、展示会場へ。展示会場は地下。いったい、どれほどの大きさの美術館なのかも知らなかったのだけれど、ほどほど、、と言ったらいいだろうか。順路に迷うまでもない広さだった。
館内無料WiFiで、美術館アプリからいくつかの作品の解説を聞くことができる。無料の解説は、ありがたい。せっかくなので、解説を聞きながら絵画鑑賞。いわゆるコンピューター音声なのだろうか。俳優さんのナレーションのような声ではないけれど、無料で聞ける解説としては、十分。すべての作品について解説があるわけではないけれど、やっぱり、無料でこういうサービスを提供していただけるのは、ありがたい。ほかの美術館や博物館も、どんどんやってほしい。有料の解説だと、貧乏根性で全部聞かなきゃ損とかおもっちゃうけど、無料だと思うと、解説が聞きたいと思うものだけを選択して聞く余裕があって、これまたよろしい。解説を聞くのも聞かないのも、自分の選択だけどね。

 

展示会場は、混んではいない。と言って、ガラガラでもない。こんな場所まで、足を運ぶ人ってやっぱりいるんだなぁ、、、なんて思いながら鑑賞。外国人の方も数人いらした。日本画に浸るには、たしかに、良い美術館。コンパクトなところもまたいい。みなさん、日本画がめあてなのか?小林古径速水御舟がめあてなのかはわからないけれど、なかなか人気の展示会である。

 

最初の無料解説アナウンスによれば、小林古径(1883-1957)と速水御舟(1894-1935)は、11歳の年の差があるけれど、互いに尊敬し合い、切磋琢磨した中だった。二人とも、院展で活躍し、渡欧体験もある。展示されている作品の中には、油絵もあった。油絵の静物画だったのだが、日本画の中にあっても違和感がない。静謐なかんじが、なんとも、、、素敵だった。

 

二人の作品は、日本画という共通項はあるけれど、それ以上に何とも言えない、、、共通点があるというのか、お互いの作品が対話している感じというのか、ちょっと、不思議な感じがした。ぐるっと一周見てから、もう一度、どちらの作品なのかをこだわらずに全体を回り、自分が好きなのはどっちなのかな?と考えてみた。私は、御舟の方が好きみたい。ちょっとやわらかく感じる。そして、植物をシンプルンに描いた作品が、どちらも素敵だった。特に、「」をモチーフにした作品がいい。柿の実の色って、オレンジっぽくもあり、黒っぽくもあり、、その微妙な色合いが「うわあぁぁ、私も描きたい」と思った。日本画独特の色のまじっている感じ。重ねるでもない、まぜるでも、でも、、、色と色がひとつの色をつくる。油絵とはまったく違う、ほんわかさが好きだ。

 

今回のお二人、私はよく知らずに鑑賞していたのだが、第二展示室に展示されていた作品をみて、足がとまった。うわっ、何だこりゃ!すご!!!吸い込まれるようだった。燃える炎と、そこに群がる蛾。くっきりと描かれているわけではないのに、炎も蛾もすごい存在感。そして、炎と対比した周りの赤黒さ、、といったらいいのか、なんとも不思議な色合い。なんだか、すごい。。。

すごい絵だなぁ、、、と感動しつつ、十分鑑賞したので、展示会場内にあるミュージアムショップへ。何か買いたいなぁ、、、と、古径の「菖蒲」のA5クリアファイルを購入した。あぁ、ちょっとした贅沢。満足。

そして、ミュージアムショップの中をさらに物色していると、あ!!!これだ!!

三島由紀夫の『金閣寺がおいてあったのだ。そう、この表紙!!

megureca.hatenablog.com


そう、それこそ、私が思わず足を止めて吸い込まれた、、速水御舟『炎舞』だった。
そうか、この焚火の炎が、金閣寺の炎だったんだ、、、、。

 

速水御舟 『炎舞』 重要文化財 1925
[作品解説](山種美術館HPから)
《炎舞》は昭和52(1977)年に重要文化財に指定され、御舟の最高傑作として、また近代日本画史上における傑作としても評価の高い作品である。
作品の制作にあたっては、大正14(1925)年の7月から9月にかけて約3ヶ月間家族と共に滞在した軽井沢での取材をもとにしている。毎晩、焚き火をたき、そこに群がる蛾を写生したり、採集した蛾を室内で写生したという。蛾に関しては克明な写生がいまも残されている。

 

 なるほど、そうだったか。

一度見たらわすれられない、それぐらい、強烈な絵だった。 

 

柔らかな植物の静物画が素敵と思ったけれど、御舟には、こんな強烈な絵もあったのだ。面白い。

 

コンパクトな美術館だったけれど、結局1時間以上滞在した。最後は、あまりにもお腹がぐぅぐぅなるので、美術館を後にすることにした。

 

こういう企画展って、誰かひとりに焦点をあてつつ、他の人の作品もあったり、美術展の企画の仕方って、実はセオリーがあるのかな、って気が付いた。ないかもしれないけど。。。一人の作家の作品ばかり見ていると、その人の世界に入り込みすぎちゃって、鑑賞というより、共感の世界に入ることがある。そこに、他の人の作品があると、自分が現世に引き戻されるというか、、、。そして、またある作品の世界に引き込まれ、、、。同時代の人の作品を並べてあったり、あるいはあるテーマで並べてあったり。

あんまり、なぜ、これらの作品が一緒に飾られているのか、って考えたことがなかったけれど、原田マハさんの作品をたくさん読んでいて、キュレーターの話をたくさん読んでいて、美術の企画展を企画する人の気持ちになって見てみると、また面白い鑑賞があるのかもしれない、なんて思った。企画する人は、一度限りの企画に、どの作品をどうやって飾るか、何を選ぶか、それこそ魂を込めて考えているんだよなぁ、って。ただ、作品の一つ一つを鑑賞するのではなく、なぜ、この順番?なぜこの位置?て、、、企画した人と対話しながら鑑賞するっていうのも、楽しいかもしれない。

 

と、何も下調べせずに訪れた山種美術館。新たな気づき。

やっぱり、美術館、好きだなぁ。

 

満たされた気分になり、でも超腹ペコ。最寄りの駅で、遅めのランチをして帰った。

 

満足の一日だった。

 

山種美術館 特別展 小林古径速水御舟