まちねずみジョニーのおはなし
ビアトリクス・ポター さく・え
いしいももこ やく
福音館書店
1972年5月1日 発行
2002年10月1日 新装版発行
2019年11月5日 新装版改版発行
ピーターラビットの絵本ー９
石井桃子さんの翻訳絵本をもとめて、ピーターラビットシリーズ９。また、新しい登場人物（ねずみ）。
ジョニーはまちねずみ。あるいえの食器戸棚のなかでうまれた。
チミー・ウィリーは、田舎のねずみで、野菜畑でうまれた。
チミ―は、農家の出荷用荷物の籠の中で居眠りしている時に、うっかり籠ごと荷馬車にのせられて、まちまでつれていかれてしまう。騒々しく、慌ただしい街中までやってきた馬車。そして、やさい籠はコックさんのもとへ荷物として届けられる。
はたけでくらしてきたチミ―は、騒々しい街が怖くてたまらない。コックさんが家の中で籠をあけると、チミ―はあわてて飛び出した。
「ねずみ！ねずみ！はやくねこをよんできて！セーラ、火かき棒をもってきて！」とさけぶコックさん。
チミ―は、一目散に逃げ場をめざす。壁にあなをみつけたチミ―はそこへとびこんだ。
がちゃん！
チミ―は、穴から転げ落ちて、ねずみのジョニーたちのパーティー会場に！！そしてテーブルのうえのコップを３つ、わってしまう。
「いったい、なにものだ？」とびっくりしたジョニー。でも、気を取り直して、丁寧にチミ―をほかのねずみたちに紹介したジョニー。そこのねずみたちは、みんな白いネクタイをして立派なしっぽをしていた。
チミ―のしっぽは、「まことにおそまつでした」。
ねずみたちは、チミ―のしっぽのみすぼらしいことにすぐにきがついたけれど、
「そだちのよいねずみだったので、ひとのようすのことなどはくちにしませんでした」。
立派な食事に驚いているチミ―。デザートがなかなか来ないのは、若いねずみがねこに追いかけられているからだときくと、チミ―は気分が悪くなるくらい怖くなってしまう。
ゼリーものどに通らないほどに気分が悪くなったチミーは、ベッドで寝るようにすすめられたけれど、そのベッドはネコの匂いがしみついていたので、チミ―は、暖炉のそばで、みじめに夜をすごしました。
次の日も、ぜいたくなご馳走がつづいたけれど、一日中さわがしく、チミーは自分の穴にかえりたくなってくる。そして、ジョニーに自分のいたところがどんなに素敵かを話して聞かせる。そうこうしていると、またねこがでた！と穴に逃げ込むねずみたち。
ジョニーは、チミ―の話の続きをきき、こういいました。
「チモジー・ウィリアムくん、ぼくはしょうじきにいってすこしがっかりしました。あなたにたのしんでいただこうとおもって、ぼくたちはいっしょうけんめいおもてなししたつもりですよ」
でもチミ―は、
「ええ、ええ、それはよくわかります。みなさん 本当にごしんせつにしてくださいました。。でも、わたしは、からだのぐあいが わるいのです」と。
すると、だったら籠にはいって、元の家にかえればいい、というジョニー。かごは、毎週土曜日には、田舎に帰るのだという。
チミ―は、田舎にもどる籠に隠れて、無事に自分のお家に帰り着く。そして、土曜日にからの籠がもどってくると、いつかチミ―を訊ねる、といっていたねずみたちがやってこないかとのぞいてみたけれど、だれもやってこなかった。
冬が過ぎて、陽が温かくなった季節、なんと、ジョニーが茶色のカバンをかかえてチミ―のもとにやってきた！
ジョニーをもてなし、他のみんなの様子を尋ねてみると、家の人たちは春休みで長く留守にするので、コックさんがねずみたいじの大掃除をはじめたという。チミ―は、ジョニーにこっちで暮らすことを提案する。でも、ジョニーには、牛の声も、草刈り機の音もこわかったのだ。
そして、ジョニーは、お家の春休みが終わって、ふたたび野菜籠が街に運ばれるのと一緒に街に帰っていった。
「あるひとは あるばしょがすきで、またべつなひとは べつなばしょが好きです。わたしは どうかといいますと、チミ―とおなじように いなかにすむほうがすきです。
おわり」
都会に行って、肌が合わずに痩せてしまったチミ―。
田舎に来てみたけれど、たいくつであきてしまったジョニー。
みんなそれぞれ、好みがあるってことね。
多様性を学ぶ一冊。深い！
ピターラビット、深い！！
