『パイがふたつあったおはなし』 by ビアトリクス・ポター

パイがふたつあったおはなし
ビアトリクス・ポター さく・え
いしいももこ やく
福音館書店
1983年6月25日 発行
2002年10月1日 新装版発行
2019年11月5日 新装版改版発行
ピーターラビットの絵本ー19

 

石井桃子さん翻訳の絵本をもとめて、ピーターラビット、シリーズ19。これは!!なんと、複雑なお話・・・・だと思う。これは、、、深層心理というか、色々が重なり合っていて、楽しいおはなしというよりは、なんとも、いたたまれないような、、、やっぱり、嘘はいけないね、、、ってお話。

 

登場するのは、リビーというねことダッチェスという犬。リビーは、シリーズ14でタビタおばさん(シリーズ4、こねこのトムのおかあさん)のところにパンイーストを借りに来たねこと、同一猫と思われる。。シリーズ19では、パンではなく、パイを焼く。

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そのリビーおばさんが、ダッチェスという黒い犬を、「パイをやいているところだからおちゃにいらしてください。白とピンクのパイ皿で。全部あなたがたべてください」といって、お茶にお招きする。
ダッチェスは、リビーが焼くパイが、「ねずみのパイ」でなければいいな、、、と思いながらも、「よろこんで!」とお返事をかく。

でも、ダッチェスは、リビーのつくるねずみパイは食べたくない、、、そこで、リビーと同じ白とピンクのパイ皿でつくった「牛とハムのパイ」と、こっそり入れ替えることを思いつく。パイ皿に焼型をいれてつくった子牛とハムのパイは、あとは焼くだけ。

リビーのパイ皿も、ダッチェスのパイ皿も、まったく同じもの。だって、同じ、ねこのタビタの店で買ったから。

 

リビーは、ねずみのパイを準備すると、「上のだんだと火が強すぎる」から、オーブンの下の段にいれると、お家の中を片付け、テーブルの用意をしてから畑の向こうのお百姓のところへ牛乳とバターを買いに出かけた。帰ってくるころに、ちょうど良い具合にパイは焼けているはず。

 

同じころ、ダッチェスは、自分でつくったパイを籠に入れてリビーの家を目指した。リビーとは、タビタの店のちかくでであったけれど、このあとゆっくりおしゃべりするからと挨拶だけでわかれた。そして、ダッチェスは一目散にリビーの家へ。自分のパイとリビーのパイをすりかえるのだ!

ところが、ダッチェスがパイ皿をオーブンにいれようと上の暖をあけたけれど、リビーのパイ皿は見当たらない。そこに、リビーが帰宅する音!

ダッチェスは、とっさに、自分のパイ皿だけをオーブンに入れて裏ドアからこそっと逃げ帰った。家に帰ると、自分の黒毛にブラシをかけながら、「ねずみのパイは、どこかにすててしまいたかったけれど、、、どこいっちゃったのかしら?」と思った。

 

リビーは、帰宅すると、なぜ扉があいていたりするのかしら?と思いながらも、お茶の準備をする。

 

4時15分きっかり、約束通りにとんとんと戸を叩く音。ダッチェスがやってくる。
「まぁ、なんておいしそうなにおいでしょう!」
パイは、まだオーブンの中。とっても美味しそうな匂い。

 

お茶の前に、おしゃべりをする二人。そして、リビーにおだてられて、上手にちんちんしてみせるダッチェス。面白がって、鼻の上に角砂糖をのせてちんちんしていたら、角砂糖をテーブルの下に落としてしまう。ダッチェスが、テーブルの下に顔を突っ込んでいた。顔をあげると、テーブルの上には、焼きたてのパイが!

 

全部召し上がれ!というリビーの言葉に、ダッチェスは、自分がこっそりオーブンにいれたパイだとばかり思って食べ始める。「焼型」は残さなきゃ、とおもっていたのに、おいしい!おいしい!と全部たべても、焼型はでてこない!!

「ベーコンをもうすこしさしあげますか?ダッチェスさん」
「ありがとう リビーさん、あたし、焼型を 探しているところなのよ」
「焼型ですって?ダッチェスさん」
「パイの皮がへこまないように いれといた ちいいさい焼型よ」
「まぁ、あなた、焼型なんか、 このパイにはいれてありまんよ」

 

それでも、ダッチェスはお皿をスプンでかき回して、焼型を探してみる。
ダッチェスは、自分が焼型を飲み込んでしまったもんだと思い込んで、具合がわるくなってしまう。

「あたし 死ぬんだ! あたし 死ぬんだ! 焼型飲んじゃった」

すっかり、具合が悪くなってしまったダッチェス。

 

リビーは、カササギせんせいを呼んでくる。

「あのかた とりのなかでも、マグパイのしゅるいで、じぶんも、パイのなかまですものね」

 

リビーが、カササギせんせいを呼んでくる間、ダッチェスは暖炉の前に座って考えた。焼型はどこへいってしまったのか??そして、まだ、オーブンからしゅーしゅーとなにかが焼ける音がしていることに気が付く。

そう、リビーがだしたのは焼型のはいっていない「ねずみのパイ」で、ダッチェスが仕込んだ「子牛とハムのパイ」は、まだオーブンの中だったのです!!ダッチェスが美味しい美味しい!とたべたのは、ねずみのパイだったのです!!!

 

「わたしが気分わるくなったのは、焼型をたべたからじゃなくて、ねずみをたべたからだったんだわ・・」

気が付いたダッチェスは、あんまりにもきまりわるくて、こっそり、自分のパイを裏庭にだしておいて、いつか、持って帰ることにした。

リビーがカササギ先生を連れて帰ってくると、ダッチェスは、少しは気分が良くなったようにみえた。カササギ先生は、ギャーギャーとやかましく鳴くだけ鳴いて、帰っていった。帰る前、裏庭のパイをつついて、、、。お皿をひっくり返してコナゴナにして、、、。

 

後から裏庭に割れたパイ皿と焼型をみつけたリビーは、おかしなことがあるもんだわ。こんどは、おちゃにはねこをよぶことにしましょう、と思った。

 

おわり

なんじゃ、こりゃ!!でしょ、でしょ!!

 

ねずみのパイは食べたくないって言えなかったダッチェス。しかも、こっそり入れ替えようとするなんて、、、。私なら、そんな危険は冒さない・・・・。

でもって、結局ダッチェスは、ねずみのぱいを美味しい美味しいといって食べているのだ。食べず嫌いもよくないね。

 

しかし、ピーターラビットシリーズは、容赦なく何でも食べモノにしちゃうなぁ。。。そのちょっとリアルな感じがスリリング。。。