かっかどるどるどう
若竹千佐子
河出書房新社
2023年5月20日 初版印刷
2023年5月30日 初版発行
半年くらい前、出版されてすぐの頃、知り合いが、なかなか良かったといっていたので読んでみようと思った。 図書館の予約待ちはいっぱいだったけれど、 以前に 若竹さんの本『おらおらでひとりでいぐも』を読んで、ふ~~~ん、って思った程度だったので、 図書館の予約の順番を待つことにした。
そして、順番が回ってきたので借りて読んでみた。
表紙の裏には、いきなり、登場人物の紹介がある。
”萬葉通り商店街の人々
里見悦子(さとみ・えつこ)・・・女優になる夢を捨てきれず、つましい暮らしを送る60代後半の女性。アパートの立ち退きが迫る。
平芳江(たいら・よしえ)・・・舅姑の介護に明け暮れ、自分をもたぬまま気づけば68歳。路上で見かけた悦子に思わず声をかけ、自らの人生が動き出す。
田口理恵(たぐち・りえ)・・・大学院を出たものの就職氷河期に重なり、非正規雇用の職を転々とする30代の女性。出来心からスーパーで財布を盗んでしまう。
木村保(きむら・たもつ)・・・生きることに不器用で、自死を考える20代の男性。河川敷で「困ったらここに行け」と見知らぬ人から紙切れをわたされる。
片倉吉野(かたくら・よしの)・・・古いアパートの一室を開放し、食事をふるまう。”
要するに、こういう人々が、商店街で知り合いつつ、お互いの人生に関与し合い、生きていく。。。みんなで生きていく、って話。
感想。
う~~ん。『おらおらでひとりでいぐも』よりは、面白いかなぁ。でも、やっぱり、ちょっと年寄りの説教臭い感じが無きにしも非ず。でも、本作の方が、東北弁がいい効果をもたらしている感じ。登場人物の会話に時々でてくる。そして、わざわざそれを解説してやる人物もでてくる。だから、ちょっとは読みやすい。
お話としては、やっぱり、、、裏寂しい感じがするのだ。ハッピーエンドであり、無常の物語でもある。人はみな、互いに支え合って生きている。それがテーマなのだとおもうのだけれど、ちょっと、重い。普通のことすぎて、重い。『52ヘルツ のクジラたち』の重さとは違う重さ。。。なんだろうな。。。「虐待」のような圧倒的な悪がでてくるわけではないところが、本書の方が微妙に救いがないような気がするのだ。
なんとなく、メンタルに元気がある時に読むのがいい気がする。弱っている人間がでてくるのだ。まぁ、その人たちが再生していく話だから、明るいといえば明るいのだけれど、命の儚さが滲みでてきて、老人的悲しさがあるっていうのかな・・・・。
タイトルの、『かっかどるどるどぅ』も、その言葉がストーリーのなかで1人の女性が再生するきっかけのときにでてくるのだけれど、タイトルにするほどの重要な言葉の様には感じない。普通に、『萬葉通り商店街の人々』っていうタイトルの方が、すっきりするのに、、、って感じが、、、、。
なんだろう、この、恣意的な感じというか、、、なにかへんな違和感を感じる一冊だった。『おらおらでひとりでいぐも』の作者を売り出す!っていう強い意図を感じるというか、、、。
223ページの単行本。後ろの方に書き下ろしの短編も入っている。1時間ちょっとで読み終わった。じっくり読みたくなる感じではなかった。。。かな。
以下、ちょっとネタバレ。
登場人物は、先の紹介の通り。悦子さん、芳江さん、吉野さんが、おばちゃん3人組。それぞれひとり身だけれど、過去にいろんなものを抱えていた。吉野さんは、家族を捨ててきた人生だったのが、今では、めぐまれない大人たち?!に食事を提供しているボランティア精神にあふれる人。そこに集まる萬葉通り商店街の人々の話が、それぞれの章になっている。
みんな、それぞれがそれぞれの悩みをかかえ、絶望したり、あがいたりしている。おばちゃんたちに救われる若者が、理恵と保。理恵も保も貧困にあえいでいる。だから吉野さんのまかないごはんに救われる。そして吉野さんの元でであった二人は、最後は結ばれる、、という、なんとも普通の物語。
でも、良いこともあれば、悪いこともある。
最後は、吉野さんが突然倒れ、みんなに見守れつつも、最期のときを迎える・・・。孤独死ではないことに救いがあるのか?よくわからない。
なんか、下北沢の小劇場での舞台脚本にでもなりそうな、、、というか、終わり方が、しんみりしているのだ・・・。
まぁ、それでも人は生きていく。。。そういう無情感がなんか空しい・・・。
と、私は感じた。
でも、こういうお話に、元気が出た!っていう人もいるんだろうな。
そうそう、こうして、色々あるから小説は楽しいんだけどね。
もっと、年を取って、、、70代くらいになったら、、また違う感想になるのかな。ちなみに、面白いと言って薦めてくれた方は、70代。。。
同じ本でも、自分の経験値によって感想はだいぶ変わる。私には、まだ三人のおばちゃんの領域はよくわからないし、貧困にあえぐ若者も領域もよくわからないのかもしれない。
けど、吉野さんみたいな人がいたらいいな、って思うし、自分も吉野さんみたいに食べ物で人を助けることができたらいいな、とは思う。人間、食べているうちはまだ死なない・・・。