『完璧という領域』 by 熊川哲也

『完璧という領域』
熊川哲也
講談社 
2019年5月27日 第1刷発行

 

友人が、FBの読書レポートにあげていて、あぁ、そういえば、熊川哲也の本が出版された時、読んでみたいと思ったなぁ、、、と思いだした。
で、せっかくなので、思いついたので図書館で借りて読んでみた。

 

熊川哲也、バレエダンサーである。15年前、40歳の手習いでなんちゃってクラシックバレエを始めた私としては、超有名人であり、スーパースター。本書でもでてくるのだけれど、英国ロイヤルバレエを辞めて日本に帰ってきてから、TVへの露出も高まり、様々なCMにもでていたから、バレエに興味が無い人でも、存在は知っているだろう。ネスカフェゴールドブレンドの「違いの分かる男」でもCMになっていた。だばだ~だ~だ~ってヤツ。最近、TVを観ないので、今でもネスカフェのCMって同じような音楽でやっているのかは知らないけど・・・。

 

熊川哲也は、1972年、北海道生まれ。 10歳よりバレエを始める。バレエダンサーとしては、決して、早い方ではない。1987年、 英国ロイヤル・バレエ・スクールに入学。 1989年 ローザンヌ国際バレーコンクールで日本人初のゴールドメダルを受賞。 同年、東洋人として初めて英国ロイヤル・バレエ団に入団し、同団史上最年少でソリストに昇格。 1993年 プリンシパルに任命された。 1998年に英国ロイヤル・バレエ団を退団し、翌年 Kバレエカンパニーを設立。 数々の舞台を手掛け、数多くの受賞、今に至る。

昔は、熊川さん自身が踊るKバレエの舞台チケットを取るのは、至難の業だった。いまでは、そうでもないけれど、それでも、人気は根強い。The熊川ワールドが繰り広げられる舞台は、クラシックバレエであり、新鮮なストーリー解釈になっていることもあったり、と、素晴らしい。私も、観たことがある。熊川さんがステージに出てきた瞬間に、会場はうわぁぁぁっと熱気が高まる。そして、彼の「俺をみてぇぇ!!!」の踊りも、すごい圧!!
自己主張が踊っているようなというか、、べつに、悪い意味でなく、バレエダンサーなんて、ナルシストでないとやってられない。いやぁ、別格ですよ、熊川さんは・・・。

で、そんな彼が2019年に、これが自伝的な本を書くのは最後だとおもう、といって出版した本。表紙が、自分の写真っていうのも、The熊川哲也!!!って感じ。

 

表紙の裏には、
「 完璧なぞ存在しない」 と人は言う。 だがそれは失敗から目をそらしたり 夢を諦めたりするための言い訳にすぎない。 たしかに作品を「 完璧という領域」 にまで到達させるには 、ダンサーの心技体だけでなく、オーケストラやスタッフ、 観客、劇場を含むすべてが最高の次元で調和しなければならない。 それは奇跡のようなことかもしれない。 しかし「 完璧という領域」 は確かに存在する。 偉大な芸術は全てそこで脈打っている。僕はつねにその領域を志向してバレーに関わってきた。 (「はじめに」より抜粋)”と。

 

ようするに、おれは、完璧を目指してやってるんだー宣言。いやぁ、似合うよ、そういう言葉が、あなたには、、、って思う。

 

目次
はじめに
プロローグ
第一章 Kバレエカンパニー始動
第二章 母なる『白鳥の湖
第三章 ダンサーの身体
第四章 試練のとき
第五章 いにしえとの交感
第六章 舞台の創造
第七章 才能を育てる
第八章 カンパニーとともに
第九章 見えない世界

 

感想。
あぁ、熊川節炸裂!!いいよいいよ!きみはそれでいいよ!!本音で、本気で、ばんばんすすんでくれぇ!!って感じ。魂が踊りを愛している。そのまっすぐさ、潔さが、パワーとなっている。けど、、、辛いこともあったんだね。でも、それでも、すすんだんだね!!
あっぱれ!!

と、熊川哲也、やっぱりすごいやっちゃ!って思った。


「はじめに」によれば、自伝のような本をだすのは、本書が21年ぶりだそうだ。Kカンパニー設立から20年を経て、ダンサーよりも芸術監督や経営者としての比重がたかくなるにつれて、踊りで表現するとともに言葉で伝えることも大事だと、、、思って、出版にいたったとのこと。あくまでも、本当のこと。建て前ではなく、その時本当に思っていたことを書いた、って。

 

そして、振り返っている言葉が、パッションの塊。

 

Kカンパニー設立後、まだ資金のめども立っていないのに、 何億円ものローンを抱えるスタジオ 購入に踏み切ったときのことを振り返り、
” 僕は杖も持たず、 石橋を叩くこともせず、ジャンプを繰り返してきたように思う。そこにあったのは、あれが欲しい、これをしたいという猛烈なパッションと自分の才能に対する自信だった。”と。

「自分の才能に対する自信」。こんな言葉が、似合っちゃうからすごい。

 

第三章のダンサーの身体については、訓練によって獲得するパフォーマンスアートの他に、生まれ持った骨格や容姿、身体能力が決定的だといっている。そして、それは残酷な世界でもある、、と。


”特に、 女性ダンサーには特別高いハードルが課される。 絵画や彫刻の世界では濁った色や崩れた形が一つの美として認められるが、見るものに夢を与えるバレエは、まず姿形から洗練された 美を示さなければならない。”

 

ひゃ~~~。でも、本当にそうなのだ。そうなのだよね。私が、趣味としてなんだかんだと10年以上も踊れもしないクラッシクバレエのレッスンを受け続けているのは、先生が美しいからに他ならない。舞台にもたっているプロのバレエダンサーである私の先生は、美しい。若くて、美しくて、踊れて、、、、。そんな姿をみているだけでも、レッスンが楽しい。レッスンをうけるものに夢を与えてくれているのが私の先生のように思う。

 

完璧、というテーマで言うと、ビジネスや人間関係においては、100%でなくても、グレーゾーンがあっても許されるけれど、熊川さんの中には、そんな曖昧なものは存在しなかった、と過去を振り返っている。自らの理を追求し、何事も白黒はっきりつけて生きてきた。でも、組織の長として決定しなければならない立場になると、それだけでは物事が円滑にすすまないということを理解した、と。

 

自分の理想で全てを白黒つけてやってきたけれど、組織の長になったときに、それだけでは上手くいかないことを学んだ、って、東浩紀さんのことをふと思い出した。

megureca.hatenablog.com

 

二人とも「自分への自信」でやってきて成功し、そして失敗や苦労の中で、白黒つければいいだけではないと学んだ、というところが共通している。

 

凡人でない彼らに共通しているのは、失敗から学ぶところかもしれない。


でも、熊川さんは、「情を優先して、その後に理を添えるリーダーでは組織は絶対に長続きしない」とも言っている。それも、また、しかり。

 

いやぁ、熊川哲也、面白いなぁ。舞台で大きなケガもしている。それを乗り越え、再び、舞台へ。。。これからも、素晴らしい作品を世に送り出してもらいたい。
芸術は永遠だ!!!

 

クラシックバレエは、音楽も踊りも両方楽しめる。素晴らしい芸術だと思う。

夢、だね。