『外国人にささる日本史の12のツボ』 by 山中俊之

外国人にささる日本史の12のツボ
世界96カ国をまわった元外交官が教える
山中俊之
朝日新聞出版
2020年3月30日 第1刷発行

 

図書館の歴史の棚で見つけたので、面白そうだなと思って借りてみた。パラパラとめくってみると、本の厚さの割には上下余白が多い。割と文字少なめ?ちょっと、キャリアポルノ系?!と思いつつ、読んでみた。

*キャリアポルノ:谷本さんの造語

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参考文献含めて251ページ。割と簡単にさらっと読める。

 

表紙の裏には、
”キーワードは、「共生」と「創意」。
グローバルのビジネス現場での「雑談」に欠かせない、日本の歴史文化のトピックス、関心を引くポイントを厳選して解説。
海外の人に刺さるポイントはこの5つ!
1  海外と比較して、唯一性・独自性
2  特に、江戸時代の経済・文化・教育水準の高さ
3  東アジア諸国との関係・交流
4  絵画や演劇などの芸術
5  現在の日本に対する固定観念を覆す史実 ”
とある。

 

感想。
まぁまぁ、1つの見方として面白いかも。
さーっと読んでいくと、世界あちこちを飛び回った人が、自分の経験に基づいて、話が盛り上がったトピックスを紹介していると言う感じ。全体をさらっと表面を触っているような感じで、あんまり深い本ではないけれど、それなりに面白かった。じっくり読むというより、さらっと読むのに適した本。かつ、基本的日本史をわかっていないと、著者の言うポイントが刺さらないかも。

 

著者の山中さんは、株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長。神戸情報大学院大学教授。1968年兵庫県西宮市生まれ、東京大学法学部卒業後、外務省入省。外務省退職後、2000年、株式会社日本総合研究所入社。全国の自治体改革の案件に多数関与とのこと。テレビにも結構出演されているらしい。私は、よく知らない。ただ本書だけを読むと、一体何の専門家なのかよくわからない。。まぁ別に専門家じゃなくても良いのだけれど、なんとなく話が表面的で、TV受けしそうな表現だなぁという感じがした。あえて易しくそういう書き方をしているのかもしれない。

 

著者が言うところの外国人に刺さる5つのテーマは先に本の紹介の通りだが、「はじめに」で、その理由が色々と書かれている。

 

1 独自性について
天皇のように太古の時代から現在まで継続している王族皇族は、世界にあまりなく、外国人から見て唯一性・独自性のある歴史文化として天皇制は、興味を持たれやすい。

 

2 文化や教育水準について
日本の文化や教育経済などが様々な時代において、海外よりも高いレベルであったと言う事実から、江戸時代の教育や社会制度にまでさかのぼって説明したり、禅思想との関係に言及したりすると、大変興味をもたれる。
 確かに、藩校、寺子屋昌平坂学問所など、今の受験対策学校よりも、幅広く色々学んでいたという歴史は、現代の日本人にとっても興味深い。

 

3 外交
他国との関係、交流の歴史や世界史における位置づけについては、植民地化や、第二次世界大戦などの戦争を中心とした歴史になりがち。でも、もっと古くから東アジアなどの他国との日本の関係を絡めながら、日本史を語ることができれば良い。
 確かに、白村江の戦いでは、惨敗したけど百済を助けようとしたのだ。ま、そうしなければ自分たちが唐に侵略されるとおもったから、出ていかざるを得なかったともいうが。。。またキリスト教の受容についても、江戸時代に激しい弾圧があったにも関わらず、潜伏キリシタンが存在し続けたというのは世界に例を見ない。特殊な形態であったことなどを話せると面白い、と。長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産世界遺産にもなったわけだし。そのすごさは、キリスト教ではない日本人の方が、理解できていないかもしれない。


4 芸術
芸術については、どんな国の人と話をしても、政治や宗教のように対立することがないので、雑談として重要なテーマ。日本の芸術は、海外にしても、演劇にしてもユニークな特徴を持ち、浮世絵など世界に影響を与えたものもある。これらの芸術について語れるというのことが重要。ゴッホの『タンギー爺さん』の背景には浮世絵があるという話とか。ゴッホは日本に憧れていた。結局、来日することはなかったけど、、、。ゴッホのことをよく理解しておくことも、浮世絵を語る上で大事かも。

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5 ステレオタイプを覆す
海外から見て、日本に対する固定概念を覆すような内容を含む歴史について語ることも重要。今でこそジェンダー平等性では、世界で大きな遅れをとっている日本だが、かつては、日本では、女性が多く活躍していたということ。そういう歴史を話せると興味を持ってもらえると。推古天皇とか、北条政子とか、大正時代の「職業婦人」とか。

 

これらのことを中心に日本の歴史を振り返っていく一冊。

 

目次
第1部 共生を生んだ宗教観
第1章 深く自然を崇拝する心
第2章 無駄を省く禅の思想
第3章  世界最古のロイヤルファミリー

 

第2部   日本経済飛躍の原点、創意工夫の江戸時代
第4章 世界最先端の先物取引・物流
第5章  ハイレベルな江戸庶民の教育水準
第6章 サステナブルな江戸の暮らし
第7章 世界の美意識を変えた葛飾北斎
第8章 ユニークに進化した日本の古典芸能

 

第3部 ダイバーシティな日本文化
第9章 吸収と融合とオリジナリティーが同居する文化大国
第10章 キリスト教と日本人
第11章 地方の多様性・独自性
第12章 室町以前の女性の活躍

 

それぞれの上の最初に要旨がついているので、そこをざっと読むだけでも、なんとなく全体が把握できる感じ。

ちょっとだけ覚書


「いただきます」という言葉は、生きとし生けるものとの共生への感謝の念が染み込んでいる日本文化らしい表現。
確かに、英訳できない日本語。決してlet's eat!ではない。

 

・禅の無駄を省く思想は茶道へとつながる。明治維新以降、茶道は古いものだから、なくしてしまえばよいと考えた人たちもいたらしい。茶道や華道のない日本なんて、私には考えられない。どうやら、私もそこに日本らしさを感じているらしい。私は、お茶はやらないけれども、お花は長いことやっている。フラワーアレンジメントではなく、日本の「お生花」の美しさ。天地人。そして、空間。

 先日、犬山の有楽苑でお抹茶を戴いたとき、ちゃんとお茶のお作法を知っていた方がいいな、と思った。有楽苑では、気軽にお茶が楽しめるけれど、ちゃんと掛け軸やお花の説明もしていただいて、いい年してちゃんとしたお作法を知らないと恥ずかしいな、、、って思った。お茶、本格的にやるつもりはないけど、教養としてはそれなりにもっているともっと楽しめるかも。

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・日本の禅を語るなら、鈴木大拙西田幾多郎は外せない。うん、それはそうだ。

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天皇家は少なくとも1500年以上続いている。
女性女系、天皇の問題は、海外からの関心も高い。最近日本ではあまり話さなくなってしまったけれど。、、、古事記』や『日本書紀を読み直してみると楽しいかも、と思った。

 

・江戸時代の日本の米商いにおける先物取引は最先端のフィンテックだった。かつ、商売における道徳を守るためには厳しい慣行があり、犯罪や賄賂などは極めて少なかった。だからこそ、お金にまつわるあれこれが、落語ネタになったりするのだろう。

 

・1549年日本にやってきたザビエルは、「日本は読み書きのできるものが多いので、伝道に有利である」といったらしい。それぐらい日本においては、庶民の教育レベルが高かった。本の数においても、江戸時代の日本は世界的に見て突出して多かったと推察されている。

 

・江戸の暮らしはサスティナブルだった。また江戸の街は上下水道が整備されており、上水道の規模は世界一だったとも言われている。
ローマ時代から、治水が文化発展の基本だったけれど、日本はそんなことを言われなくてもしっていたのかもしれない。日本史を勉強していると、かなり治水の話は多い。武田信玄明智光秀、もちろん江戸の治水。雨も多い国だから、治水をしっかりしないと命に関わることだったからだろう。とはいえ、今年も雨による災害が起きているのだけれど、、、、、。
 江戸時代は、紙も洋服もリサイクルしていた。肥溜めだって、究極のリサイクル。それでいて、日本人の毎日お風呂に入るという清潔さ。毎日生まれ変わるって感じなのかな。 

 

確かに、雑談のトピックに困ったときに、こういうことが頭に残っていると役に立つかも。宗教や政治の話は場合によっては難しい。世界大戦のころの話だって、まだ難しいこともある。それに比べると、江戸時代以前の話だと、たとえ政治的な話でもわりとしやすいかも。ま、いずれにしても、相手の興味次第だけどね。日本人同士の雑談だって、、、、ね。

 

誰とでも共有しやすい雑談ネタの引き出しが多いのは、悪くない。

特に、外国人と話すのであれば、やはり日本のことを知らないと、ね。

しかし、鈴木大拙も、西田幾多郎も、一言では言い表せない。。。

アニミズム八百万の神とかも、一神教の人がわかるように説明するのは意外と難しい。

宮本武蔵の『武士道』くらいの方が、ネタ的にはわかりやすいか・・・。けど、外国人は武蔵をしらないか、、、、。

 

たしかに、ネタの引き出しをつくるのも楽じゃない。参考にしておこう・・。