『点と線』 by 松本清張

点と線
松本清張
新潮文庫
昭和46年5月25日 発行
平成15年5月30日 97刷改版
平成20年6月10日 120刷

 

英語の先生に、「情死心中」って「suicide(自殺)」と違うのか?と聞かれて、なんでそんな言葉?!?!って思ったら、読書好きな彼は、『点と線』を読んでいるのだ、と。
ほほぅ。なるほど!

 

情死心中。。。要するに、不倫の挙句心中をはかった男女だろう、、、って思って、「夫婦ではない男女がいっしょに自殺すること」って説明したのだけれど、、、あとから、あれ?ほんとか?って自分の日本語が怪しくなった。「情死」って、広辞苑をひいたら、相愛の男女がいっしょに自殺すること。とでてきた。ってことは、夫婦でも情死なの?なんか、、、夫婦心中と情死とは違う気がするのだけれど、、、。

 

ってまぁ、それはさておき、おぉ、松本清張かぁ!と思って、私も読んでみた。

 

『点と線』といえば、鉄道時刻表好きには、たまらん!!っていうアリバイ崩しの推理小説。読みながら、犯人のめどはほぼついているのだけれど、どうやってそのアリバイを崩すのかを刑事と一緒になって考えちゃう。新潮文庫の装丁は、時刻表が。。。私の愛読書でもあった時刻表。とはいえ、20代の貧乏なころは、毎月買うなんて言う贅沢なことはせず、大きなダイヤ改定のある3月号だけ、、、購入していたっけ。私はJTB時刻表がすきだった。日本地図にうまいこと線路をのせて、地方のバス路線もでていて、これさえあれば、日本全国どこでも鉄道とバスの旅ができる、、そんな相棒だった。今では、すっかり時刻表なんてつかわなくなっちゃった・・・。

 

本の裏の説明には、
” 九州博多付近の海岸で発生した、 一見完璧に近い動機づけを持つ心中事件の裏に潜む恐るべき奸計。 汚職事件に絡んだ複雑な背景と、 殺害時刻に容疑者は北海道にいたという鉄壁のアリバイの前に立ちすくむ捜査陣・・・・。 列車時刻表を駆使した、 リアリスティックな状況設定により、推理小説会に” 社会派ミステリー”の新風を吹き込み、空前の推理小説 ブームを巻き起こした秀作。”とある。

 

感想。
おぉぉ、時代を感じる!!国鉄だ!青函連絡船だ!赤坂割烹料亭の女中と、役人の心中が、仕組まれた殺人だったというお話。背後に潜む、政治家の汚職疑惑。あぁ、、、昭和の時代も、令和の今も政治家の汚職はネタとしてかわりばえがない・・・・。

 

心中したと思われる二人が発見されたのは、福岡市の香椎駅近くの海岸。潮風にさらされた死体は、頬は生きている人のように血色よく見えた。青酸カリを飲んだ死体の特徴だった。足元に転がるオレンジジュースの空き瓶・・・。昔は、青酸カリが簡単に手に入ったんだよね・・・。

 

仲良く、心中したと思われた二人。身元はすぐに、××省の課長補佐・佐山憲一と東京赤坂×× 割烹料亭小雪・時と判明する。二人は、東京駅で特急《あさかぜ》に乗り込むところを知り合いに見られていた。だれも二人が恋仲にあったとは知らなかったが、仲良く特急に乗り込む二人を目撃した小雪の女中仲間は、時が恋人との旅行に行くものとばかり思っていた。ところが、、、その「時」は、そのまま帰らぬ人となった。。

心中として片づけられたものの、地元のベテラン刑事・鳥飼重太郎は、男の所持品にあった「列車食堂の受取証」に疑問をもつ。人数がお一人様だったのだ。女と一緒に電車でやってきたのではなさそうと見た。違和感を感じた鳥飼は、1人で事件について捜査をつづけた。食堂車も今はなき、、、過去の遺物・・・。

 

東京の警察もまた、汚職事件の重要参考人だった佐山に死なれてしまったことで、事件の捜査に影響がでていた。そして、捜査二課の三原警部補は佐山の最後を調べるために鳥飼らのもとを訪れる。

三原と鳥飼、それぞれにこの心中事件に隠された事件について追求を続ける。東京駅で、みられた佐山と時が電車に載る姿は、仕組まれたものだと疑う。小雪の客のひとり、安田がわざと小雪の女中仲間にその姿を目撃させるようにしくまれたものだったのだ、と。安田は、汚職疑惑のある政治家らとの付き合いもある会社の経営者だった。

安田がしくんだ、佐山と時とが恋人であるかのようなしつらえ。そして、二人の死亡推定時刻には、安田は北海道にいた、というアリバイが浮上する。だれか、共犯者がいるのか?

最後、アリバイは崩され、思わぬ共犯者が明らかとなる。

ほぉ、なるほど、、、、、。

 

推理小説なので、あっという間に読める。けど、ちょっと頭をつかう、、かな。昭和の、あの頃の社会情勢、鉄道事情、航空機事情、そして電報の発信地追求、宿にかけられた客宛ての電話、、今の時代なら、電報も使わなければ、宿の電話が使われることもないだろう。。。

そう考えると、携帯電話って、いろんな足跡を見えなくしちゃうんだな。。。一方で、GPS機能があれば場所が特定されてしまう、、、っていうのもあるけど。

テクノロジーの発達によって、推理小説もかわったんだな、、って思う。今なら、1日のうちに札幌と博多を数時間以内に行った証拠を残す方法、とか、チャットGPTに訊いたら出てきたりするんだろうか。。。って、やってみたら、やっぱり出てきたよ。ちゃんと・・。全部、飛行機を使えってさ。
そして、この推理小説のなかでは、電車に乗っていたというアリバイ作りも必要なのだ。


これ以上の詳細は、ネタバレになるのでやめておこう。
やっぱり、昭和のこういう小説は面白い。

ちなみに、心中遺体の発見された香椎駅の海向こうには、”志賀島の山が海に浮かび…”と出てくる。志賀島。「漢委奴国王印」の金印が発見された島だよ!

megureca.hatenablog.com

 

読書は、楽しい。