『師匠』 by 立川志らく

師匠
立川志らく
集英社
2023年11月10日 第1刷発行

 

新聞の広告でみたのだったか?、、、忘れてしまった。けど、気になったので、図書館で予約していたのが回ってきたので、読んでみた。

 

著者の 立川志らくさんは、1963年東京都生まれ。1985年 立川談志に入門。 95年、真打ち昇進。

タイトルの通り、師匠である立川談志との思い出話、、、のような本。談志師匠のことをネタにして、どの弟子たちも稼いでいるなぁ、、、、なんてね。でも、談志も本望かもしれない。弟子たちが稼いでくれて。

 

立川談志が、喉頭がんの闘病の末に亡くなったのは、2011年。もう一回り以上昔のことなんだ。。。それでも、今なお新鮮な談志の面影。あぁ、、、あの声が、あのだみ声が、あの怒鳴り声が、もう聞けないのかと、、私ですら思ったのだから、弟子たちはほんとに、、、。大きなものを失った感じだったんだろうなぁ。

 

と、本書の最後の方は、闘病中の談志を見舞う志らくさんら弟子のはなしもでてきて、最後は沖縄、渡嘉敷の海への散骨の場面も。

 

あっという間に読める一冊。志らくさんの落語はきいたことがないけど、、、談志の愛弟子だったというのだから、きっと、、、面白いんだろう。志の輔さんや、談春さんとの話もでてくる。TVで見かけると、落語家であることを忘れてしまうけれど、みんな、真打ちなのだよね。近頃では、ゆっくり落語を聞くってこともなかなかないけど、、、オチを知っているのにほろりとしたり、笑わせたりできる噺家さんって、やっぱりすごい。落語が聞きたくなる。

 

本書の中でも、立川談志のとんでもないっぷりがふんだんなく披露されている。めちゃくちゃだけど、めちゃくちゃ、愛していたのだ。落語も、弟子も。そもそも、談志が教会を脱退したのだって、自分の弟子が不当に評価されなかったとの怒りからだ。

 

志らくさんは、大学生の間に師匠の下へ弟子入りしにいく。でも、大学の先生に「金原亭 馬生(きんげんてい ばしょう)論」を卒論にかいていると告げたところ、金原亭馬生を「「きんばらてい・・・馬?まう?」と言って、落語を文芸として認知してもらえていなかったことから、こんなやつに落語論を提出してもしかたがない、と大学を辞めてしまう。
志らくさんも、談志に弟子入りするだけのことはある、、、なかなかの、、、人である。

 

談志のハワイ独演会に同行したときのエピソードでは、当時談志と仲良しだった療養中の石原裕次郎のもとを突撃訪問し、志らくさんは、外で待たされたけれど、裕次郎の奥さん・北原三枝さんに、優しくまねきいれていただいた、とか。そして、談志は、志らくさんに裕次郎と自分の姿をビデオに残しておくようにと、カメラマン役を指示する。でも、その映像は、、原因不明でうつっていなかったらしい。その後、裕次郎は亡くなってしまい、談志が、「俺との会話を他の奴に聴かせたくなかったに違いない」といって、志らくを責めなかったとか。。

談志は、裕次郎との別れ際、裕次郎の目を見なかった。永遠の別れになることをしっていたのかもしれない、、、って。

 

ハワイの場面で、吹き出して笑ってしまったのは、ワイキキで泳ぐといいだした談志の姿。芸人の日焼けはご法度だといって、歌舞伎役者のように日焼け止めをぬりまくり、らくだのTシャツに股引、両手に軍手、足は地下足袋、、。さらには、女もののチューリップハットをかぶって、、、。誰にも、談志だと気づかれなかったらしい。そりゃね、ただの怪しいおっさんだ。。

そして、談志の弟子として修行し、志らくさんは兄弟子の談春さんより先に真打ちとなる。そのお祝いの席で司会をつとめたのが、その兄弟子・談春さん。談春さんも、そうとうなきもったまというか、大胆不敵な方のようだ。やさしげなお顔だけれど、なんでもばくちも大好きとか。。人生ばくち、ってタイプかも?

流石は、談春さんと志らくさん。来賓スピーチで、二人のこころを解放させる歌を歌ってくれる人がいた。ダンシング・オールナイトの替え歌。

談春立場ない(ダンシング・オールナイト
 このまま二つ目~

うまい!!!

って、昭和世代の私には、おおいにうける!!

真打ち昇進後、調子ののった志らくさんは、映画をつくったりもした。でも、お金が無い。師匠に借金をいいだそうとおもったら、「だったら、奉加帳をこしらえてやるから、それで金を集めろ!」って。
あぁ、奉加帳って、、、今日日もあるのか。。。。三島由紀夫の『宴のあと』で、かづが自分の料亭を取り戻すために、夫の政敵のところへ御金集めに回ったときにもってまわったのが、「奉加帳」だった。

megureca.hatenablog.com

そして、志らくは談志のおかげで資金集めに成功する。できあがった映画はさんざんだったみたいだけど、、、。知らない、どんな映画だったか、、、しかも、1本ではないみたいあ・・・。

談志のことをネタにしつつも、談志の弟子であったことの誇りと、、、その愛、、にあふれた一冊。

 

やっぱり、談志は談志だ。
だれも、あの立川談志の名前なんて継げないと思う・・・。

 

談志の周辺の人たちの話もでてきて、TV界と落語会とを駆け回った談志さんの想いが、ちょっと伝わってくる。

 

芸人って、すごいね。