『さいはての彼女』(原田マハ) ナギちゃんのもう一つ能力は?

さて、、、『さいはての彼女』ナギちゃんのもう一つ能力は?

なんだと思う??

 

原田マハさんの『さいはての彼女』を読んだという英語の先生が、

「What is ナギチャン's second 能力?」って、訊いてきた。

彼は、

”They didn’t tell.
That’s annoying!!”
って。

 

私が大好きな本だよ、といって薦めておきながら、訊かれて答えられなかった。。。

え~~?そこまで覚えてないよ。。。

けど、笑っちゃった。さすが、若者だ。答えが欲しいんだね。

 

ってことで、再び、原田マハの『さいはての彼女』をよんでみた。
短編集の中の1作目。

megureca.hatenablog.com

 

女社長の涼香が、憂さ晴らしに秘書に取らせた旅先が、ラグジュアリーリゾートのはずが「女満別」でびっくりして、おまけに、ポンコツレンタカーに八つ当たりしていたところで、ライダーのナギちゃんに出会い、癒されていくお話。

 

ナギちゃんは、耳が聞こえない。
最初はそれに気が付かなかった、涼香。
でも、ナギちゃんが通うログハウスのおじさんから、

「小学生のときに聴力を失って、それっきりなんだ。でも、あの子にはなくした聴力を補う能力がふたつある。一つは読唇できること。だから、会話をするときは正面をむいて、できるだけゆっくり、口を大きく動かして話してやってくれないか」
と、いわれてておどろく涼香。

そして、もう一つの能力は、、、「あんたが自分でみつけてやってくれ」と。

 

いっしょにライダーの泊まる宿にとまったとき、涼香はナギの後姿に大きな火傷の後をみてしまう。それは、16歳の時にトンネル火災事故に巻き込まれてしまったときの傷だ、とナギは涼香に話す。父は、全身で娘をかばい、燃え盛る炎に包まれながら、「ナギ、生きるんだ。越えていくんだ。」と、、、。ナギちゃんに、読唇を強く勧めたのはお父さんだった。

ナギちゃんは、「だから、この背中の傷は、お父さんだと思って、大事にしているの。」「私、ずっと走り続けるって、決めたの。やっと吹き始めた風を、もう止めたくないから」と。

ナギちゃんと二人のタンデムツーリングがつづくのだが、、、途中で、ヤンキーのような男性団に嫌がらせをされて、ハーレーのキャブレターが壊れてしまう。しかも、涼香の帰りの羽田行の飛行機に間に合わせようとした矢先に。

 

でも、ナギちゃんは、キャブレターを手持ちの整備道具で修理する。ぜったいに涼香を無事に飛行場までおくりとどけるのだと、目の前の絶体絶命の状況に立ち向かうナギちゃんの目は、輝いていた。

そんな、ナギちゃんを応援するだけで、何もできない自分、、、。それでも、ナギを信じて祈ろう!そんな気持ちになれた涼香。

そして、ナギちゃんは、見事に修理を完了。だがしかし、エンジンがかからない。キックしても、キックしても、カッッ、カッッ、カッッ、カッッ、カッッ、。。。
「わたしにやらせて」といって、ナギちゃんにかわってグリップを握り、ペダルを踏み込む涼香。

 

”私は、ナギがやっていた通り、根気よくペダルを踏み続けた。
どっと汗が吹き出す。肩が、腿が重くなってくる。それでも私はペダルを踏んだ。踏み続けた。命を吹き込むように。一回踏み込むごとに、ひとつ、何かを越えるように。
父のこと。
母のこと。
彼のこと。
高見沢のこと。
いままでの、私のこと。
みんな、みんな、みんな。
越えていくんだ。
生きるんだ。
カッ、と一瞬ペダルがかるくなった。
あっ。
パラッパラッ、パラパラパラララララ。

とうとう、エンジンがかかる。

そして、ログハウスへ戻り、おじさんにおどろかれる。
「おいおい!オイルだらけじゃないか!何が起こったってんだまったく!」

 

そして、ナギちゃんとのツーリングを楽しんだ私の顔をみて、おじさんは、
「どうだ、わかっただろう。ハーレーのよさが」
「うん」
「で、あっちの方もわかったのかい?ナギちゃんの第二の能力」

涼香は、こくんと首を縦に振る。

 

そう、答えはでてこない!!!
確かに、、、。

 

最初に読んだ時は何とも思わなかった。

「人を幸せにする能力」とか「こんなんに立ち向かう勇気」とか、、、「風を感じることで音を聞く能力」とか、、、。


さて、ナギちゃんの第二の能力はなんでしょう?

「越える勇気」を「人に与える」ってこと?

あるいは、「壁を越える能力」そのものか。

 

『さいはての彼女』、読んだ人にきいてみたい。
別に正解をもとめているわけではないけどさ。

 

二度目に読んでも、泣けた。

やっぱり、原田マハさん、好きだわぁ。

 

ちなみに、annoying! といった彼は、映画、Lost in translationのようにannoyingだと。2003年の監督ソフィア・コッポラの自伝的な映画で、ラストシーンで、耳元でささやく言葉が何だったか明かされない、という映画らしい。ちょっと、観てみたくなった。

通訳者にとって、Lost in translationは、実に大きな壁だ。だけど、越えられない壁ではないはず、、、と思うから、通訳を続けているし、勉強を続けている。。。でもね、いつも、壁だらけだ。。。

 

答えは、知らない方が楽しいこともある。

あるいは、後から、答えが変わることだってある。

 

そう、絶対、なんて言葉は、絶対にない。。。なんて、言えない・・・。

絶対、なんてないほうが人生楽しいよ。

 

『さいはての彼女』、やっぱり、素敵なお話です。

読書は、楽しい。