『3日ずつのおくりもの』  by レミ・クルジョン

3日ずつのおくりもの
レミ・クルジョン 作
こだましおり 訳
文溪堂
2016年12月 初版第1刷発行

 

『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第六章  老いの姿を見つめる」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

表紙の絵は、2羽のウサギ。若いウサギが、おじいちゃんウサギをリヤカーに乗せて野菜と一緒に運んでいる。おじいちゃんウサギは、長靴履いて、泥だらけで、元気に畑で仕事をしたあとみたい。3日ずつ、なにがおくられるのかな??って思いながら本を開いた。

 

著者のレミ・クルジョンは、1959年パリ郊外のショアジー・ル・ロア 生まれ。パリの 美術・ グラフィック 高等学院で学び、 出版、 広告業界で働きながら絵を書き続けた。これまでに絵本をおよそ30冊 出版しているほか、児童小説の挿絵も多数ある。国内外で絵の展覧会も開催する。 ファンタジーと独自性にあふれる ストーリー と 独特の味がある絵で、今後が期待される絵本作家、と紹介されている。今後が期待って、、、まぁ、いいお年だけどね。うん、今後にも期待。

 

訳者のこだましおりさんもまた、1959年、広島県生まれ。 神戸市外国語大学英米学科卒業。 1989年に渡仏し、パリ第3大学現代フランス文学修士課程修了。在仏邦字紙の編集を経て、現在は フリーライター・翻訳家としてパリで活躍している。

 

表紙を開くと、一面にロウソクの、、、、畑かな?おじいさんの年の数??


カバーそでには、
”リトルの ひいおじいさんのホープは、 とても としを とっています。
なぜなら、まいとし たんじょうびの プレゼントに みんなが
「3日ずつ よぶんに ながいきしてほしい」
と ねがって くれているからです。

ところが あるとしの たんじょうび、
ホープじいさんは ながいきの おねがいの かわりに べつの
ものが ほしいと リトルに つたえました・・・・。”

と。

 

ページをめくっていくと、色画用紙に直接色をのせたような、カラフルな色合いで、水色、黄緑、モスグリーン、と、さわやかながらしぶい色合いの背景に、あざやかなニンジンのオレンジ、ウサギの白。うん、たしかに、独特の味があるイラスト。

 

ホープじいさんは、顔がしわくちゃで、こしも曲がっている。リトルは、おじいさんの畑をよく手伝って、いろんなことを教わった。

 

あるひ、畑仕事をしながら、リトルがたずねた。
「ひいおじいちゃんは、どうして そんなに としよりなの?」

 

ホープじいさんは、ある日弟に「誕生日になにがほしい?」と聞かれた時、
「寿命を 3日余分に貰えたらなぁ」と答えた。そしたら、みんなが3日ずつ長生きするようにねがってくれるようになって、つもりつもって、こんなにながいきしているんだとリトルに教えてくれた。

 

そして、二人で畑の雑草を抜いていると、おじいさんが言った。
「そうだ。こんど みんなに いってくれないか。
3日ずつ ながいきするように ねがうのは、もうやめてくれと。
わしは、もう じゅうぶんに ながいきした。
こんどの たんじょうびには、ほんや CDや、DVDが いいとな」

 

そして、そのことをリトルがみんなにはなしたので、おじいさんの願いは、みんなのしるところとなった。

 

ホープじいさんの誕生日がやってきた。
歳の数だけのろうそくがたてられるほどの大きな大きなキャベツのケーキ。たくさんの本。
おじいさんは、家の中で本を読んだり、音楽をきいて楽しむようになった。そしてそのことをリトルにたのしそうに話して聞かせた。

 

リトルは、畑仕事をだいたい1人でできるようになった。
ホープじいさんは、だまって、畑仕事をするリトルをみまもっているだけでよくなった。

 

月日がかわりなく、でも、確実に、過ぎていった。
リトルは また 少し大きくなり、
ホープじいさんは、 日に日に 弱っていった。

 

ホープじいさんに、次の誕生日は来なかった。
ある日、大好きなCDを聞きながら、しずかに息をひきとった。

 

かなしいできごとだった。
みんな、3日ずつ長生きするように願わなくなったことを悔やんだ。
けれども、リトルには、ホープじいさんの願いがわかっていた。

 

最後のページは、リアカーに赤ちゃんをのせて元気に運ぶリトルの姿。

 

生まれてきた弟は、ホープじいさんのように 背中が少しまがっていて、しわだらけだった。

”きっと、ホープじいさんのように、しあわせに、ながいきを するだろう。
おとうとは、ホープと なづけられた。”

THE END

 


うんうん、、、、。
そう、人はいつか死ぬんだよね。
そして、生まれて来るんだよね。

 

静かに語りかけてくるような絵本だった。ちょっと、素敵。

たしかに、赤ちゃんは丸まっているし、しわくちゃだね。

生きること、死ぬこと、どちらも私たちの日常の中にある。そんな当たり前のことを思う。

 

絵本は楽しい。

 

どうせ死ぬのになぜ生きるのか。

養老孟司先生が語ってくれそう。

 

こういう、静かに淡々と語ってくれる絵本、好きだな。