ウクライナ民話 てぶくろ
エウゲーニ・M・ラチョフ え
うちだりさこ やく
福音館書店発行
1965年11月1日 発行
1979年12月15日 第39刷
谷川俊太郎の『かないくん』を読んでから、結局購入した『世界を開く 60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書) の最初のページで紹介されていた絵本。
その「まえがき」で、
”2022年2月24日 ロシアが ウクライナへ軍事侵攻を始めた。世界戦争を呼び起こすかもしれない恐れのある侵攻が、いくつかのメディアで取り上げられていた。
その中で、人間が落とした手袋の中に、次々と動物が入り、狭いながらも仲良く過ごすウクライナ民話『てぶくろ』(エウゲーニー・M・ラチョフ絵、うちだりさこ訳、福音館書店、1965年)と、巨大なかぶがなかなか抜けず、家族や動物みんなで力を合わせ、かぶ抜くことができた『おおきなかぶ』(A・トルストイ(再話)、内田莉莎子訳、佐藤忠良画、福音館書店、1962年)の2冊が引き合いに出されていた。この二つの物語は、他の画家による絵本も何種類かあるが、取り上げられていたのは、ラチョフと佐藤忠良の絵による絵本が多かったように思う。”と。
どっちも、お話は知っている。でも、この機会にもう一度、、、と思って図書館で借りて読み直してみた。
手にした瞬間、懐かしい・・・・。ざっくりとは覚えていたけれど、でてくる動物の種類、名前、順番なんて、覚えていなかった。
ざっくりとした内容は、次のとおり。
おじいさんが子犬をつれて、森をあるいている途中、手袋を片方おとす。
ねずみがその手袋みつけると、もぐりこんでいいました。
「ここで暮らすことにするわ」
そこにかえるがぴょんぴょん。
「わたしもいれて」
うさぎがはしってきました。
「ぼくもいれてよ」
きつねがやってきました。
「わたしもいれて」
おおかみがきました。
「おれもいれてくれ」
もう、これで五ひき。
いのししがやってきました。
「わたしもいれてくれ」
もう、これで六ひき。
くまがやってきました。
「わしもいれてくれ」
てぶくろはいまにもはじけそう。
手袋を落としたことに気がついたおじいさんは子犬を連れて戻ることに。
子犬は、先にかけていきました。
どんどんかけていくと、てぶくろがありました。
てぶくろは、むくむく、うごいています。
子犬は「わん、わん、わん」とほえたてました。
みんなは、びっくりして、手袋から這い出すと、森のあちこちへ、にげていきました。
そこへ、おじいさんがやってきて、手袋をひろいました。
THE END.
くいしんぼうねずみ、ぴょんぴょんがえる、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちのいのしし、のっそりぐま、、、。みんな仲良く手袋におさまっている。いやいや、じつは、くまがいれてくれと交渉している場面まで。パツパツの手袋は、お家に仕立てられて、窓までつくっちゃって、、、なかなか、壮観である。
おじいさん、どんだけおっきな手してたのか。。。
みんな仲良く、、、ね。
そして、最後は、普通の手袋の絵で終わる。雪の上に片手のミトン手袋。そこには、動物たちの気配はない。雪の静けさだけが描かれる。
そうか、これはウクライナ民話なんだね。子犬のわんわんわん、で離散してしまった手袋の中の動物たち、、、。
寒い・・・。
表紙の明るいイメージ、お話の楽し気な内容、そして、最後に雪の中に落ちているミトンの寒々しさ。メディアが、どう取り上げていたのかは知らないけれど、ウクライナ、ロシア、東欧のすべての街に、平穏な日々が早く戻りますように・・・・。
この絵本も、ロシアのウクライナ侵攻という出来事がなければ、読み直すことはなかったかもしれない。。。
読み継がれる本は、やっぱり、何かを語ってくれる。
絵本は、深い。