『ロシアのお話 雪の花』 原作:セルゲイ・コズロフ、 絵:オリガ・ファジェーエヴァ 

ロシアのお話 雪の花
セルゲイ・コズロフ 原作
オリガ・ファジェーエヴァ 絵
中友子 文
偕成社
2018年11月 初版第一刷
* この絵本は セルゲイ・コズロフ の戯曲「雪の花」を元にしています。 絵はオリガ・ファジー エヴァよる描きおろしです。

 

世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第七章  命に出会い、命を知る」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

真夏のこの季節にこの本を紹介するのもいかがなものか、、、、かもしれないけれど、表紙を見た瞬間に、「かわいぃぃぃ~~!」と言いたくなる。雪がちらつく森のなかに、ハリネズミが首をかしげて歩いている。二足歩行・・・。表紙をめくると、薄い青色で描かれた森の世界。小鳥もいる。水彩画と思われる。素敵な透明感。この人の絵、好きだ~!水彩ならではの輪郭のぼかし方と、くっきりした線の出し方とがすごく好き。時間をかけないと表現できない描き方。さらにめくっていくと、雪が降り積もった庭と屋根に雪の帽子をかぶった小さなお家。紙のでこぼこをうまく利用しているのか、雪が一面に広がっている感じがすごくリアルというか、寒さがつたわってくるというか、、、

絵だけでも、飾っておきたい、、、そんな感じのする絵本。

 

表紙裏には、

”「 雪の花がなくちゃ、
 クマくんはしんじゃうかもしれない・・・・
 ぼくがきっと見つけてくる!」

 高い熱で苦しむ なかよしのクマくんのため、
 ハリネズミは森の奥へとかけだしていきました。

 どこにさいているのか  だれもしらない、
 「雪の花」をさがしに・・・・・

ロシアの児童文学作家・詩人、 セルゲイ・コズロフ の戯曲を絵本にしました。
ロシアの画家が絵を描きおろした、日本オリジナル作品。”
とある。

 

原作の セルゲイ・コズロフは、 1939年 モスクワ市生まれ。 現代ロシア児童文学を代表する作家・詩人のひとり。ゴーリキー記念文学 大学卒業後、 多くの職種を経験し、1960年代末からメルヘンを書き始める。代表作であるハリネズミと森の仲間達」シリーズでは、動物たちの会話を通して友情や死、人生の喜びや美の儚さといったやや哲学的なテーマが取り上げられているが、詩的でユーモラスな作風によって幅広い年齢層から熱狂的な支持を得た。


絵のオリガ・ファジェーエヴァは、1980年、 レニングラード(現 サンクトペテルブルク)市生まれ。イリヤ・レービン記念サンクトペテルブルク国立絵画・彫刻・建築学院のグラフィック科を卒業。 在学中の2005年に市が主催するコンクール「ペテルブルクのミューズ」で受賞し、2007年には、上記母校の創立250周年に際して金メダルを授与された。 その後、児童書に挿絵を書き、自分自身で物語も書いている。日本で作品が紹介されるのは本書がはじめて。

さすが、アートの技巧にもたけているわけだ・・・。

 

物語は、日本の昔話にもありそうな、動物の友情物語。でも、雪深いロシアのお話で、ハリネズミとクマが主役。

 

晦日、森の原っぱで、動物たちがモミの木を飾って大忙し。シカ、タヌキ?、リス、小鳥、ウサギ、キツネ。サンキライ、にんじん、松ぼっくり、キノコ、リンゴ、、、、。みんな思い思いに飾っている。

やっと飾り付けがおわったころ、ロウソクをもってくるはずのクマがやってきません。
ウサギはクマくんを呼びにいきました。

 

クマくんは、お家で高熱をだしてウンウンうなっていました。

 

ウサギは、クマくんと一番仲のいいハリネズミくんを呼びに行きました。
キツツキ先生も飛んできました。

 

キツツキ先生の見立ては、どうやらクマくんは薪をわっている時に、大量に雪をたべたらしい。こんなに高い熱なら、「雪の花」がないと治らないだろう、、、と。

 

「それって、どんな花?」ハリネズミが尋ねました。
「まだ、だれもみたことがなくてね。どんな花で、どこにさいているのか、わからんのだよ」と、キツツキ先生。

だれもしらなくても、クマくんを助けるためには何としても「雪の花」を手に入れなきゃ!

ハリネズミは、森中を探しに駆け巡ります。

 

ポプラさんにきいてもわからないという。丘のうえのトネリコなら知っているかも、と。そして、葉っぱを一枚ハリネズミの上におとして、道に迷ったらこの葉っぱを風に飛ばして
「葉っぱよ、葉っぱ、 僕を家まで連れてっておくれ!」といいなさい、って。

 

丘をのぼっていったハリネズミ
トネリコおじいさんの木は、「300年、ここにたっているけど、そんな花はしらんなぁ・・」
でも、この根っこをもっておいき、と。もう歩けないって思ったとき、ねっこをかじって、「足よ、足よ、じぶんで歩いておくれ!」といいなさい、って。

 

ハリネズミは、どんどん森の中をあるいていきました。
あたりはだんだん薄暗くなってきました。
空気はどんどん冷たくなりました。

 

頭の上からどさっと雪がおちてくる。
マツのおばさんがたっていた。
ハリネズミがこれまでのことを話すと、

マツのおばさんは、
「 よくお聞き。 私から 100本目の松のそのまた向こうにふかいふかいくぼみがある。
 そのくぼみの向こうに 切り株があってその株のそばに 冬も凍らない 泉があるのさ。
 雪の花はその泉のそこに咲いているよ。」

ハリネズミは、マツのおばさんにお礼を言うと、いきおいよくかけだしました。

 

森の青い闇につつまれながら、ハリネズミは、マツをかぞえながらどんどんすすんだ。
のどが渇いたけれど、雪をとかして飲んだら、熱がでちゃうかもしれない。
がまんして、どんどん進んだ。

 

とつぜん、真っ暗なくぼみにおちたハリネズミ
つめたいかべをつたって、やっとのことでくぼみの反対側によじのぼると、きりかぶがみえました。

 

そこには、マツのおばさんの言った通り、泉がありました。

ハリネズミは、泉にかけよって中をのぞきこんでみると、
夜空の星を大きくしたような雪の花が泉のそこでゆらゆらとゆれているではありませんか!!

 

手をのばしてみたけれど、届かない・・・。
なんて、つめたいんだろう、、、
でも、とりにいかなくちゃ・・・・。

ハリネズミはおもいきって泉に飛び込みました。

でも、飛び込んでも雪の花がみつからない。
なんどもなんども飛び込んで、、、しだいにハリネズミはつめたくなっていきました。

もう、、、、手も足もうごかない、、、おぼれちゃう!

 

走らなきゃ、このままじゃ、凍っちゃう・・・・。

 

夢中で走り出したハリネズミでしたが、とうとう、雪の上にたおれて、動けなくなってしまいました。

 

あぁ、、ぼくは雪の花をとってこられなかった。クマくん、いまごろどうしているだろう・・・。

そう思ったとき、トネリコのおじいさんと、ポプラさんのことを思い出しました。ハリネズミは、根っこをかじり、葉っぱを風に飛ばして、
「足よ、足よ、じぶんで歩いておくれ、
 葉っぱよ、葉っぱ、ぼくを家までつれてっておくれ」

すると、足がからだをふわりと持ち上げ・・・。

 

森の中で、キラキラとひかる不思議な景色をみながら、ハリネズミは葉っぱに導かれるようにすすんでいきました。

 

そのころ、クマくんの家では、みんながハリネズミのかえりを、いまか、いまか、とまっていました。「ハリネズミくんはまだかなぁ」、、だれかがつぶやいたとき、葉っぱが一枚まいこんで、床の上におちました。

 

とびらの外を見て、みんなあっとおどろきました。
きらきら光る、真っ白な花がゆれていたのです。

 

花は、ふわりふわりと部屋の中にはいってきて、クマくんに近づいていきました。
クマくんが白い花をだきしめると、みるみるうちに花はなくなり、ハリネズミが姿をあらわしました。

ハリネズミくん!」
みんながいっせいに叫びました。

 

ハリネズミくん、どこにいたんだい? ぼく、なおったよ。もうすっかりよくなったよ!」

クマくんとハリネズミくんが抱き合う姿。。。。

おぉ、、、なんという友情物語。

 

ハリネズミのクマくんを思う気持ちが、冷たい泉に飛びこませ、そのすがたが雪の花だった、、、というお話。

最後は、動物たちがみんなでモミの木の周りでおどっている。 

 

やさしいタッチの絵に、やさしいお話。

好きだなぁ。。。

クマくんもハリネズミくんも、よかったね。。。

おもわず、じんわり涙が浮かんできちゃうような物語。

 

なんて、優しいお話でしょう。

そうなんです。

今では、プーチンによるウクライナ侵攻で、まるでロシア人がみんな悪いようにおもわれてしまうけれど、ロシア人って優しんです。本当に。。。。

原作者のコズロフさん、偶然にも私がかつて一緒に仕事をさせてもらったモスクワの研究者と同じ名前。大先輩で、やさしいおじさんだった。彼は、、、彼だけでなくロシアの研究者は、一緒に仕事するととても楽しかった。研究だから、当然意見の相違はあるし、研究方針について激しく意見をたたかわせることもある。でも、心からその研究の意義をおもうから、、真剣だから、、一緒に仕事していて楽しかった。。。日本人をバカにするようなところもなかったし・・・。

 

相手を思う気持ちって、寒い国の人の方が強い気がする、、、なんていうのは、私の偏見かもしれないけれど、ロシア人ともタイやベトナム、東南アジアの人達とも仕事をしたことのある私の勝手な感想。。。。

 

ロシア文学って、だから深いのではないだろうか、、、なんて。ドフトエフスキーすら、ちゃんと読めてないけど・・・。

 

寒さと文学って、作風に、関係ある気がする・・・・。

 

ま、なにはともあれ、

絵本は、楽しい。

しかも、ロシア児童文学なら、難しくない!

絵本はいいねぇ!!

 

この一冊、『世界をひらく60冊の絵本』から読み進めている絵本の中で、ベスト10に入るかも・・・・。