『ダンゴウオの海』 by 鍵井靖章

ダンゴウオの海
鍵井靖章 写真・文
株式会社フレーベル館
2015年1月 初版 第1刷発行

 

『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第九章  災害に襲われ、乗り越える」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

絵本というか、写真と文。たくさんの海の中の写真でできている一冊。

著者の鍵井さんは、 1971年 兵庫県生まれ。 大学在学中に水中写真を目指し、 伊藤勝敏氏に写真を学ぶ。オーストラリア、 伊豆、 モルディブでダイビングのガイドをしながら、 水中撮影を続ける。 1998年、モルディブより帰国後 フリーランス水中写真家として独立。
2011年4月から、震災の海、 岩手県宮古湾周辺の海底を定期的に撮影し続ける。

 

表紙は、アンゴウオ。
かわいい!
なんだ、このキュートな魚は・・・。


本書の説明によると、

ダンゴウオという魚を知っていますか?
とても小さくて、 おとなの親指の爪くらい。
魚なのに 泳ぎが苦手で、おなかの吸盤で
岩 などでくっついて暮らしています。
僕は震災直後にもぐった岩手県宮古湾の海の底で、
この魚にであいました。魚がいなくなった海で、
たった1ぴきのダンゴウオがぼくを見つめていたのです。
まるで、なにかをいいたそうに・・・。”

 

表紙裏には、
東日本大震災直後の岩手県宮古湾。 海の底には人間の暮らしに使われていたものが沈み、 そこには魚の姿はありませんでした。
けれども、 たった1匹の小さな小さな魚、ダンゴウオが海の底に、
しっかり しがみついていたのです。
津波の海に生き残っていたダンゴウオに出会い、すべてがはじまりました。

変化していく三陸の海にもぐりつづける写真家が、新しい命の誕生と海の再生をみつめます。”

 

ページをめくると、海の中から、津波のあとの街並みまで・・。
海の写真なのに、そこには、家の屋根。宅急便の荷札。楽器の鍵盤・・・。車・・。

そして、12月ころになると、魚が戻ってきて、人間のくらしのなかで使われていたものの中に、魚の姿が。

タイヤのホイールから生えている若芽の芽。
それを見て、著者は、ちょっとうれしくなった、と。


再生のきざし。

 

初夏は、ダンゴウオの産卵の季節。水中の岩山にピンクのサンゴモというピンク色の藻が付いて、カラフルなお家みたい。
ダンゴウオの卵の写真、だんだん膨らんでいく卵。
生まれたばかりのあかちゃんダンゴウオ

 

アップの写真では、その模様も見えるれど、「ほんとうのおおきさ」と書かれた書き込みには、、、まるで、ゴミのように、、、、5mmくらいの姿が。。

 

他に、たくさんの写真が美しい。
ふ化したばかりの魚、昆布をたべるウニ、うんちをするミズダコ。

そして、震災から1年半後の海の写真。

沈んだ車をおおいつくす海藻。
おれまがった電柱を住みかにする魚。
長靴からひょっこり顔をのぞかせる魚。

本当に、、不思議な世界が・・。

 

そして、最後に、「あとがき」がある。

 

”・・・・魚たちが 人工物をすみかにしているなら、 海中から引き上げることはなく沈んでいるままじゃでいいじゃないかと思う人もいるかもしれません。 けれども 生き物たちは自然の中で 十分に 身を隠し 産卵して一生を送ることができるのです
 僕は生き物たちにとって人工物が必要なものとは思いません。 何よりも 人工物は海を汚します。 プラスチックは細かくなり 海水に溶けます。 タイヤは200年経たないとこの世から消えません。 ダイバー や漁師さんが海の中から沈んだものを引き上げているのですが、 残念ながら まだまだ海底にはたくさん残っています。・・・・

ぼくは、これからも海の中で写真を撮り続け、発表していきます。どうすれば、このかけがえのない自然をたいせつにできるのか、みなさんにも考えてほしいからです。

 

普段は目にすることが無い海の底。
でも、見えていないからと言って、何も起きていないわけではない。

ふと、みえないものを、ないものとしてしまうことの、危うさを覚える。

 

今の海は、どうなっているのかな。。。
「鍵井靖章」で検索すると、今でも、東北の海の写真を撮り続けていらっしゃる様子。
これまで、海の中の復興を気にしたことが無かったけれど、機会があれば、彼の写真をもっと見てみたい、と思った。 

 

そして、ダンゴウオ、めっちゃ気になる。

水族館にもいるのかしら??

可愛い・・・実物を見てみたい。。。

ネットの検索、AIの回答によれば、このあたりだと、

サンシャイン水族館(東京・池袋)
下田海中水族館静岡県下田市
横浜・八景島シーパラダイス(神奈川県横浜市
新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市

にいるらしい。。。行かなくちゃ・・・。