「最悪の予感 パンデミックとの戦い」 by マイケル・ルイス

「最悪の予感 パンデミックとの戦い」
マイケル・ルイス
中山宥訳
2021年7月15日 初版発行
早川書房

 

アカデミーヒルズの2021年8月「今読むべき新刊書籍」の中の一冊。
図書館で予約してものがまわってきた。

 

著者のマイケル・ルイスは、1960年ルイジアナ州ニューオリンズ生まれ。プリンストン大学で美術史の学士号、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学の博士号を得た後、ソロモン・ブラザーズに入社。証券セールスマンとしての3年間の経験をもとに執筆した「ライアーズ・ポーカー」で作家デビュー。マイケル・ルイスは、膨大な情報を面白く、わかりやすく表現することの第一人者。

 

本書は、コロナ対策が後手後手となって、世紀の失策ともいえる状況とのなったアメリカの中で起きていた、様々な人の活躍を描いたノンフィクション。しかし、物語は、2003年のニューメキシコ州の13歳の少女の話から始まる。謝辞を含めると388ページの大作だけれど、次から次へと、、、、ストーリー仕立てになった記述に、どんどん引き込まれていった。

半分以上は、コロナ発生以前から、公衆衛生、感染症対策のために粛々と活動していた人々の話。コロナ発生の話は、最後の1/3くらい。

結果だけをみれば、ブッシュ大統領の時代に、バイオテロ対策を視野に設立したホワイトハウス内の生物的脅威対策チームは、トランプ政権が解雇・降格してしまった。国土安全保障省にいた医療上の緊急事態に州政府を支援する人々も、トランプ政権が解体。

そして、正式な国の機関というものではなく、「コロナ感染拡大を何が何でも抑え込みたい」と考えたかつての専門家たちが、立ち上がる物語。

しかし、それでも、政府・官僚の壁は、、、、高かった。

やはり、失策だ。

 

Amazonの紹介文を引用すると。

”「何かがやってくる。コロナの次、何かもっと大きなものが……」
コロナ禍を戦った知られざる英雄たちの物語と、明かされる衝撃の事実。

アメリカ国内で新型コロナウイルスの感染者が出始めた頃。大統領とCDC(疾病対策センター)がリスクを軽視するなか、一部の人々はパンデミックを予感し、独自に動き出していた。カリフォルニア州の保健衛生官、ホワイトハウスを去ったアマチュア疫学者、チャン・ザッカーバーグ・バイオハブを率いる型破りな生化学者。人類の運命は彼らに託された――。”

と。

 

そして、最後に、池上彰さんの解説がついていた。
なかなか読み応えのある一冊。
これは、面白かった。

おススメ。

 

アメリカのコロナ対策失敗の根本原因であった、「コロナはたいしたことがない」というドナルド・トランプ大統領の楽観主義。
トランプ大統領からの圧力で、科学的なことを報道できなくなった、CDC (Centers for Disease Control. アメリカ疾病予防管理センター)。

ある意味、「見たくないものは見ない」、「見てみないふりをする」、そんな専門家の意見で振り回された国民。
日本だって、似たようなものだ。


岩田健太郎医師が、ダイアモンド・プリンセス号の内情を公表したことに対する、様々な動き。。。

厚労省には、厚労省なりの言い分もあったのだろうが、なんだか、モヤっとしたまま。

 

「テクノロジーは貧困を救わない」(外山健太郎 みすず書房)、、、に似たようなもんだ。サイエンスでは人は救えない、、、、。。。とは、思いたくないけれど、、、。

 

これは、政治勢力や、組織のヒエラルキーのなかで、冷や飯を食わされてもめげることなく、「感染症から人々を救う」ことに従事し続けた人々の物語。

 

感染症と言ってもいろいろあるのだが、「伝染性」のある感染症は、とにかく初期に対処することが重要。

本書の中でも、感染症の専門家が、「ボヤなら消火器一本で消せるかもしれないけれど、火が部屋中に回ってからでは、消火器1本は何の役にも立たない。それと同じ。とにかく初期の迅速対応」と言っている。

そういう事だ。

 

私自身、2020年3月の安倍首相のいきなり「閉校」は、やりすぎなんじゃないか、と当時は思っていたけれど、それは、正しかったのだろう。国民に危機感を持ってもらう、という意味でも。一応、日本は他国に比べれば感染は抑えられた方だ。

本書に出てきた、「ソーシャルディスタンスは、子供は大人に比べて圧倒的に少ない。人との距離を保つ大人より、子供の動きを制限するのが最初。高齢者は動かないのでワクチン接種も後でいい」と言う文章に、ハッとさせられた。

大人は、子供の時の習慣を忘れてしまう。子供は、友達同士でもべたべたするものだ。

ワクチン接種の順番も、感染リスクの高い医療従事者が、家でゆっくりしている高齢者よりも優先されるべきなのだろう。

 

コロナ発生時、アメリカで無料でPCRを提供しようとした団体が、州政府から「無料だと困るんです。システムに登録できないから」と言われたというくだりがある。技術があっても、活用できない要因はたくさんある。

実際、カリフォルニア州でも、PCRそのものではなく、検体を採取するための「綿棒」が不足して、検査できなかったとか。。。

モノ不足、人不足、仕組み不足、理解不足、、、。

 

本書を読んだからと言って、なにが正しい対応だったかの答えがわかるわけではない。

でも、絶対に言えるのは、

「不都合な事実は、見てみないふりをする」は、してはいけない、という事だ。

 

人は、「不都合」なことが見えてくると、どうしても自分にとって都合のよい情報ばかりをインプットしたくなる傾向がある。

根拠なき、希望的観測。

歴史は、その失敗を繰り返しているともいえる。

 

「医療におけるラストワンマイル」という言葉がある。

必要な人に届かない限り、何もできなかったのと同じこと。

 

大きな動きをとらえ、仕組みを作っても、最後に必要としている人のところに届かなければ、、、、救える命が救えない。

医療崩壊、などと言う言葉は、できることなら二度と聞きたくない。

 

そして、たとえ、適切な医療が受けられたとしても、その人が助かるかどうかは、本人の体力、免疫力次第で、本人の身体にかかっている。

やっぱり、「ラストワンマイル」でもおしまいではなく、最終的には、自分自身の身体の中での戦いだ。

生活習慣病と言われる類の基礎疾患は、自分でしか管理できない。

自分の身は自分で守る、自分でできることは自分でする、それも大事。

 

やはり、一人一人が、自分の身は自分で守るという意識。

 

そのうえで、国のリーダーには、「アベノマスク」を作って安心するのではなく、末端まで正しい情報、対策がとどいているのか、結果をしっかり見つめてもらいたいものだ。

ちなみに、我が家に届いた「アベノマスク」は、開封されることもなく、どこかに眠っている・・・・。

なんでも、どこだかの倉庫にも眠っていたらしいけど、、、ね。

 

よく食べて、よく動いて、よく寝る。

やっぱり、健康が人生の最大優先事項。

 

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最悪の予感 パンデミックとの戦い