「人材育成・人事の教科書」HBR 第一章:「最高の職場」をつくる6つの原則

人材育成・人事の教科書
活力ある会社を目指す経営者・人事部の必読書
社員の意欲を高め、潜在力を引き出し、仕事力を伸ばす、マネジメント施策
DAIAMOND ハーバード・ビジネスレビュー
ダイヤモンド社
2020年8月26日

 

11の論文が掲載されている。それぞれ独立した論文なので、ひとつずつ、じっくり見ていこうと思う。

 

今日は、
第一章:「最高の職場」をつくる6つの原則

ロブ・ゴフィー:ロンドン・ビジネススクール名誉教授

ガレス・ジョーンズ:IEビジネススクール客員教授

 

だれもが働きたくなり、会社も成長する「夢の職場」を作るための原則が紹介されている。

1.個人個人のさまざまな違いを尊重して活用する
2.情報を抑制したり、操作したりしない
3.社員から価値を搾り取るだけでなく、会社側も社員の価値を高める
4.何か有意義なことを支持している
5.業務自体が本質的にやりがいのあるものである
6.愚かしいルールがない

 

職場で、本物の自分、ありのままの自分を出すことが歓迎されていると感じる社員は、組織へのコミットメント、個々の業績、他の社員を助けることにおいて、高い水準にあるという。
いくつかの具体的企業の名前と取り組みが例に挙げられていて、イメージしやすい。

マクドナルドは、コスト効率第一で創設された会社だが、社員の育成に焦点を合わせ、働きながら学位を取得できるよう、年間約56億円を投資しているという。研修制度を取り入れている企業の中でも、きわめて大きな資本を人材育成にあてているのだ。そして、管理職研修にも力を入れている。その投資に対するリターンは、店舗の増収額や増収率で測るのではなく、時間給で働くメンバーの退職率が低くなったかどうかで評価されるそうだ。退職率は、このプログラムが開始されてから確実に下がっているという。

 

他にも、情報の透明性を高めることで、社内の信頼だけでなく、顧客からの信頼を高めたノボ ノルディクスの例などが紹介される。

情報を小出しにしたり、「体面を保つため」の情報操作がいかにバカげたことなのか、自組織の情報の流れを見直すきっかけとなるような事例だった。

 

この6つは、たしかに、聞けばそうだろう、と思うが、言うは易し行うは難し。
Easier said than done.

 

多様性が重視される時代で、ダイバーシティー推進部なんてものも登場する昨今だが、個人として多様性を重視したとしても、組織として多様性を重視することは効率性と逆行することもあり、なかなか難しいのが現実だろう。

それでも、職場で「ありのままの自分でいられる」という安心感は、何より社員に余計なストレスをかけずにすむことであり、個人の才能を全面活用できる可能性をひろげる。
まず、組織のトップ自身が、慣行だからとか、会社の文化だからという事にこだわらず、自分らしく経営する、という姿勢も大事かもしれない。

何を考えているかわからない社長というのは、やはり、ついていく方としては、やりにくい。
情報の透明性、個人の尊重、当たり前のことを率先垂範するのが、よい経営者なのだろう。

 

章の最後に、「夢の職場」度診断 がついている。

・ありのままの自分でいられる 
□ 職場でも、家庭にいるときと同じ自分でいられる
□ 安心してありのままの自分でいられる
□ 人と違うことを臆せず表現するよう全員が促されている
□ この職場では、大半の社員と違う意見の人でも上手くやっていける
□ 熱意はそれが摩擦を生み出す場合でも奨励される
□ この職場に馴染むのは単一のタイプだけに限らない

 

・実際に何が起きているかを知らせてくれる
□ 全員に状況の全部を知らせてもらえる
□ 社内の情報は操作されない
□ 否定的なことを口にしても会社に対する裏切りではない
□ 私の上司は悪い情報も知りたがっている
□ 上層幹部は悪い情報も知りたがっている
□ 社員が使える情報伝達経路はたくさんある
□ コメントに安心して自分の名前を添えることができる

 

・私の強みを見出して伸ばしてくれる
□ 私には成長するチャンスが与えられている
□ どの社員でも成長するチャンスが与えられている
□ この職場では最も優秀な人材が自分のいいところを披露したがる
□ 成果の低い社員には改善の道が示される
□ 報酬は組織全体で公正に配分される
□ 私たちは他者の価値を高めることにより、自分たちの価値を創造している

 

・ここで働くことに誇りを感じさせてくれる
□ 私はこの会社が何を支持しているか理解している
□ この会社が支持する者には価値があると私にも思える
□ 現在の職務を軽々こなせるようになりたい
□ 私たちが最優先する目的は利益ではない
□ 私は何か意義のあることを達成できそうだ
□ 私は自分がどこで働いているかを人に話すのが好きだ

 

・私の仕事を有意義にしてくれる
□ 私の仕事は私にとって有意義だ
□ 私の職務は理にかなったものだ
□ 私の仕事は私にエネルギーと喜びを与えてくれる
□ 私の仕事が他の人達全員の仕事とどのように噛み合うのかを理解している
□ どの人の仕事も必要なものだ
□ 職場には私たちが共有する存在意義がある 

 

・馬鹿げたルールに仕事の邪魔をされない
□ 私たちは物事を単純にしている
□ 職場のルールは明確で誰にでも同じように適用される
□ 私は職場のルールが何のためにあるかを理解している
□ みんなも職場のルールが何のためにあるかを理解している
□ 私たち組織一丸となってお役所仕事に抵抗する
□ 権威が尊重されている

 

一度、チェックしてみるといいかもしれない。

振り返ってみると、バカげたルールって、たくさんあったなぁ、、、なんて思う。

 

性悪説でルールをつくると、余計な仕事が増える。

テレワークの際は、業務の開始と終了を都度上司に伝えること、なんて、バカげたルールだ。でも、以前の職場で、2016年頃最初にテレワークが導入されたときは、そんなルールがあった。数年でルールは改定された。みんな、バカげたルールと気が付いたのだ。でも、ルールが変わっても、せっせと報告してくれる部下もいた。習慣だから?

開始と終了、無意味だ。業務の内容報告ならわかるけれど、新人でもなければ、毎日報告必要、ってものでもないだろう。

開封、即ゴミ箱行きのメールは、多分、最初からいらない。

 

「最高の職場」のためのチェックリストは、自分がいい仕事をしたいと思っているのなら、仲間と共有してみるといいかもしれない。

 

人は誰でもいい仕事がしたい。

自分が、重要な存在でありたいから。

重要な仕事をしているのだと、実感できる職場であれば、人は組織に定着するだろう。

 

私が脱サラした理由は、次のキャリアに切り替えたいという思いもあったけれど、当時の仕事がだんだんお役所的になってきて、重要と思えなくなっていたというのも大きかったかもしれない。

お給料はわるくなかったけど。

自分の時間を、重要でないことに使うのはもったいない。

 

「最高の職場」が、世の中に増えるといいな、と思う。

そのために、私ができること、社会に提供していけたら、と思っている。

 

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『人材育成・人事の教科書』 HBR