『妄想美術館』
原田マハ
ヤマザキマリ
SB新書
2022年1月15日 初版第1刷発行
ヤマザキマリさんと原田マハさんの本。なんて、魅力的な組み合わせ!
2人で美術館を妄想しようという一冊。すぐに読みたくて、配送も待てず、本屋さんに買いに行った。
これは、Kindleではなく、紙の本購入で正解。
新書だけど、質の良い紙に、カラーの写真入り。
900円(税抜き)は、安い!
帯には
”絵画の見方が180度変わる!
ルネサンス、印象派、現代アート、、、
偏愛たっぷりに選び抜いた新感覚アートガイド
マハ&マリが案内する
芸術家の魂が集う幻惑の館で
名画のおしゃべりを聞いてみませんか?”
裏表紙には、
”あらゆる時代の名画が一堂に会する奇跡の迷宮へようこそ
アートを溺愛する作家と漫画家の2人が作る究極の美術館とは?
原体験から現在に至るまでのアートヒストリー、偏愛アーティストたちから受けたインスピレーション、小説や漫画の創作のバックステージをまじえ、名画にまつわる裏話、お気に入りの美術館案内、絵画鑑賞の秘訣、画家たちの知られざるエピソードなどアート談義は永遠に尽きない。泉のように湧き上がる2人のファンタジーが炸裂する壮大なラビリンスへ!”
表紙は、二人の写真。原田マハさんの顔をしらなかった。こんな優しそうな顔の人なんだ。
原田マハさんは、1962年生まれ。ヤマザキマリさんが1967年生まれだから、マハさんの方が年上なんだ。とても、お若く見える。え?だって、今年、還暦?!には見えない。
やはり、美術愛がすごすぎて、美術の世界でワクワクしながら働いていただけのことはある。。。好きなものに囲まれている人は、いい顔しているし、良い年のとりかたをする、ってことかな。
二人がそれぞれ好きな美術館や作家の話をする対談。
マハさんが、もしも地球が滅亡するとして、地球上から100点の美術作品だけを宇宙船で運び出すとしたら、何を持ち出すか?!なんて話をもちだすとか。
本書の最初の話題が、「モナ・リザ」。
お二人とも、幼少のころに自宅に「モナ・リザ」の絵があったという。昭和の家庭で、「モナ・リザ」が飾ってあるってすごい。ヤマザキさんのお母さんは音楽家で少しぶっ飛んでいる?!から、想像がつく。マハさんは、お父さんが美術全集のセールスマンだったそうだ。なるほどね。
我が家にも、本棚の一段を占拠する美術大百科事典みたいのがあったけれど、「モナ・リザ」は、飾っていなかったな。。。
私が初めて「モナ・リザ」の本物を見たのは、初めてのパリへの一人旅でルーブル美術館に行ったとき。4日くらい通い続けた。でも、「モナ・リザ」を見たのは、一回だけ。人は多いし、あまりの小ささに衝撃を受けた・・・・。ケースに囲まれているし、周囲はロープもあるし、、、明らかに、一点だけ特別扱い。
どこから見ても目が合うような、、、不思議な絵だ。微笑んでいるけど、眉毛はないし、男かも、、、と思えばそんな気もしてくる。謎の絵。
二人とも、「モナ・リザ」は怖かったそうだ。うん、わかる。謎の絵だ。
二人の想いでの美術館や、お気に入りの美術館も出てくる。
インゼル・ホンブロイヒ (ドイツ デュッセルドルフ)
バーンズ財団美術館 (アメリカ フィラデルフィア)
ウフィッツ美術館 (イタリア フィレンツェ)
ロンドン・ナショナル・ギャラリー (イギリス ロンドン)
ルーブル美術館 (フランス パリ)
シチリア州立美術館 (イタリア パレルモ)
ヴェネチア・アカデミア美術館 (イタリア ベネチア)
これらは、カラーの写真入りで紹介されている。
ウフィッツ美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、ルーブル美術館は、行ったことがあるけれど、他は行ったことがない。いってみたい。
日本の美術館、博物館も。ポーラ美術館、東京国立博物館、原美術館(閉館してしまったけど)、大原美術館、、、どこも、リピートしたくなる場所ばかり。
二人のお気に入りの絵の話も。ベスト10がでてくる。
マハさんのNo.1は、フィンセント・ファン・ゴッホの『星月夜』。ゴッホらしいタッチの青い空に月と星が黄色でぐるぐるしている。見れば、ゴッホとわかる絵だ。
マリさんのNo.1は、アントネロ・ダ・メッシーナの『書斎の聖ヒエロニムス』。これは、見れば見るほど不思議な遠近感の絵だ。建物の中に舞台装置のように書斎があって、そこで聖ヒエロニムスが、本?聖書?を座って読んでいる。
だいたい、メッシーナが日本ではそんなに知られていない気がする。ロンドンのナショナルギャラリーの所蔵。
こういう風にでてくると、本物を見に行きたくなる。
『最後の審判』も、『アテナイの学堂』も、、、、見に行きたくなってきた。。。
次に、イタリアに行けるのは、いつだろうか。。。
かわりに、大塚国際美術館でも行っておくか、、、、。
最初にぱらぱらと本をめくっていたときに、最初に目についたのは、ラファエロの『小椅子の聖母』。マリさんが、フィレンツェで、たくさん絵の中に埋もれるようにかざってあった『小椅子の聖母』をみつけて、驚いた、と言う話。西洋では、一つ一つの作品を飾るというより、所狭しと作品が並ぶところが多い。
私は、この絵が大好きで、子供の時、実家の自分の部屋に絵葉書を張っていた。日本で展覧会があったのだろうか?なぜ、この絵と出会って、どこで絵葉書を買ったのかは記憶にないけれど、受験勉強中とか、この絵に励まされた。
ラファエロと言えば、『システィーナの聖母』の本物が見たくて、ドレスデンまで行ったことがある。春江 一也の小説『プラハの春』にでてきたのか、よく覚えていないけど。。。この絵の前で、離れ離れの二人が再開する、、みたいな話。実物は、結構大きな絵だった。絵の構図の下に、天使が二人、つまらなそうに聖母を見上げている。これが、かわいい!聖母より、この天使が気に入った。二人の天使が描かれた「メガネふき」と「ペーパーナプキン」をお土産に買って帰った。最近、気が付いたのだが、イタリアレストランのサイゼリアの壁に、この天使たちが描かれている。これも、見たことがある人が多いのでは?
ドレスデンは、ベルリンから電車で2時間くらいだっただろうか。ベルリンのアパルトマンに泊まって、電車で日帰りの旅をした記憶がある。
ドレスデンは、戦争で焼かれた塀がそのままになっているところもあったりして、ずいぶんとおいところにきたもんだ、、、と言う気になった。
ビールが美味しかったっけ。
しかし、どちらの絵も、ラファエロだと知っていたわけではない。。。好きになった絵が、たまたまラファエロだった。描きたい絵ではなく、見ていたい絵。
やっぱり、好きなものに会いに行く、生きたいところがあるって、幸せだなぁと思う。
マハさんとマリさんで、いつか二人の妄想美術館、特別展してもらいたいなぁ、と思う。
そして、行きたいところが増えたからには、もっと元気で長生きしなくっちゃ。なんて思った。
原田マハさんは、何冊か読んでいるうちに、この人は美術が好きな人なんだ、って気が付いたけど、こんなに美術愛にあふれているとは、、、知らなかった。
2022年1月8日(土)、日経新聞の朝刊、文庫のランキング(12/26~1/1)で、原田さんの『本日は、お日柄もよく』が10位になっていた。これは、美術とはあまり関係ないけれど、若い女性が活躍する気持ちのいい本。私の中でもお気に入りの一冊。また、原田さんが読みたくなった。
読みたい本があって、行きたいところがある。
幸せなり。
妄想は楽しい。
読書は楽しい。