『人生は天国か、それとも地獄か』 by  田原総一朗、佐藤優

人生は天国か、それとも地獄か
田原総一朗
佐藤優
白秋社
2022年10月4日 発行

 

本屋さんで見かけて気になったけど、買わないで帰宅。でも、やっぱり気になって、ネットで購入しようかと検索していたら、Kindle Unlimitedに入っていることがわかった。Kindle Unlimitedは、解約したら何ものこらないということなので、加入していなかった。30日間無料、で試してみることにした。
ちなみに、やっぱり、Kindle Unlimitedは、読みたいと思った本ははいっていなくて、結局、普通にKindleで買うことになるし、多分、30日間無料でやめちゃうと思う。

 

本の表紙は、田原さんと佐藤さんがそれぞれ腕組をしてカメラ目線で並んでいる。なんとも、やらせっぽい写真だけれど、インパクトあり。だって、このお二人の眼光だもの。

 

田原さんは、ジャーナリスト、テレビ朝日系の「朝まで生テレビ」で有名。 1934年、滋賀県生まれ。1960年早稲田大学を卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局と共に入社。1977年フリーに。
御年、88歳。 テレビ東京は、当時弱小であったこともあって、田原さんがかなり自由に番組作りをすることもできたそうだ。そして、1974年の原子力船「むつ」の放射能漏れ事故の報道をめぐって、スポンサーと対立し、結果的にテレビ東京をやめてフリーのジャーナリストとしての道を歩き始めたそうだ。

個人的には、田原さんの番組はあまり好きではない。彼の思想とか、論点がわるいのではないのだけれど、人が話している最中に発言を遮るような討論で、あまり建設的対話と思えないのだ。あるいは、人を挑発するような発言も、あまり聴いていて心地よいものではない。
私は、平和主義者だ・・・・。

 

と、そんなアグレッシブな田原さんが、相変わらずアグレッシブではあるのだけれど、90歳を前にして、人生の受け止め方のあれこれを語った本。

 

そして、佐藤さんは、1960年東京生まれ。還暦を過ぎて、持病の腎臓病の悪化も進み、人生を振り返って、天国と地獄を語る、って感じ。

 

面白いのは、これは、特に、対談、、、、という感じではない。
あるテーマについて、それぞれが語ったことがまとめられている、って感じ。
章ごとの目次に、小項目があるのだけれど、その項目ごとに、「田原」「佐藤」と、どちらの文章なのかが記載されている。

田原さんがかかれた「まえがき」によれば、本書のために二人でじっくりと話し合い、その上で、それぞれの発言がまとめられている、ということのようだ。

帯には、
”数千人の知識人と論争した怪人達の結論
前半の人生が地獄でも60歳からを天国に変える方法がある”
と。
 

本書は、若者向けではないかもしれない。まさに、人生経験豊富な二人が、人生は天国でもあるし、地獄でもある、それでも生きていくのが人生、、、と達観した結論、そしてその根拠を述べている本だから。 

TV局からほされたジャーナリスト、身に覚えのない罪で逮捕された外交官。波乱万丈どころじゃないだろう。でも、誰でも長く生きていれば、その人なりの天国と地獄があったのではないだろうか。そんな、天国も地獄も経験した人が読むと、あぁ、、、そうなんだよな、って共感できる気がする。

 

個人的感想を言えば、やっぱり、佐藤さんの達観ぶりと、田原さんの達観ぶりは何かが違って、田原さんのいうことはわかるけれど共感しきれない。佐藤さんの言うことも宗教をのぞけば共感できる、、、って感じかな。
けど、読んでいて嫌な感じはしない。そうか、田原さんもそんな苦労人で、ただの普通のおじさんだったんだ、、って思ったり。。。田原さんも佐藤さんも、それなりの病気も抱えていらっしゃる。そんな弱いところも率直に表現されているところが、ちょっと人間として身近に感じられる。

うん、なかなか、面白かった。
けど、私にはちと早いかな。還暦過ぎた人が読むと、もっと共感するのかも。あるいは、、、、こう言っては何だけれど、田原さんのダブル不倫の話とかがでてくるんで、男の人なら共感するのかも。。。

 

目次
まえがき 現代社会で人間が生きる意味
第1章 人生は天国かもしれない
第2章 人生は地獄かもしれない
第3章 それでも人生は続いていく
第4章 人生最後の日に何をするか
あとがき 「ホモ・デウス」のモデルは通用しなくなった時代

 

全章を通じて、人生後半をどう生きると幸せなのか?というテーマ。
佐藤さんの言葉を引用すると、
”勝ち負けを決めない「停戦」が人生にも必要”であり、
”白黒つけないことが「良識」”
なのだと。

あぁ、、、、たしかにね。。。わかるような気はする。
多分、20代、30代、、、いや、40代の私にはわからない言葉だったと思う。
佐藤さん自身にとっても、還暦過ぎての達観かな。

若い時から、停戦、白黒つけない、ってやっていたら、天国も地獄も無くてつまらない人生になっちゃうかもしれない。きっと、さんざん闘ってきて、白黒つけてきたから言える言葉なような気がする。

 

第一章では、お二人とも人に恵まれたこと、仕事に恵まれたこと、、、良かったことが語られる。第二章では、辛かったこと、、、が語られる。

佐藤さんの一番の地獄は、やはり逮捕されたことだろう。そして、あの長い拘留期間があったからこそ、本当に大事な人が誰なのかがわかり、また、読書三昧の時間と神への信仰があったからこそ、今、作家人生を歩めているのだ、と。地獄も今の人生の土台を作る時間になっているのだ。

田原さんは、なんと2人の奥さんを乳がんで無くされているそうだ。しかも一人目の奥さんが亡くなったのは、次に奥さんとなった人との不倫進行中。お嬢さんたちに言わせると、多分、お父さんの不倫のことはお母さんは知っていたと思う、と。。。で、そのときの不倫相手と後に結婚するのだけれど、その人も後に乳がんでなくなってしまったのだ、と。
配偶者を二度も失うなんて、、、なんて辛い。。。ちょっと、同情した。でもって、今はまた別のガールフレンドがいるらしい。まぁ、、、おさかんですこと、、、。

第三章では、それでも続く人生を生き抜くための、後半生のための10策が。

これは、言葉のままに覚書しておこう。

第一策: 去っていく人は追わない付き合いも悪くて良い  田原
第二策:「遺書」と「10のリスト」(やるべきこと5,したいこと5)を書く 佐藤
第三策: 今までとは違う趣味、学び、仕事をどんどん探す  佐藤
第四策: 人間関係を再構築する  佐藤
第五策: 自分の意見は半分だけ主張する  佐藤
第六策: 批判者の意見は半分だけ聞く  佐藤
第七策: 自分なりの食事ルーティンを作る  田原
第八策: 自分なりの睡眠ルーティンを作る  田原
第九策: 終活は絶対にやらない  田原
第十策: スケジュールを組んで一日の生活リズムを整える  田原

最後の第四章では、三木清の言葉が最初に引用されている。
「孤独は山にあるのではなく、街にある」

ホントに、なんど読んでも、強く頷いてしまう言葉だ。

megureca.hatenablog.com


佐藤さんにとっては、プロテスタントの信仰が心のよりどころの一つなのだろう。そして、国や組織を信用しすぎるな、とも。

 

人生駆け抜けて、ちょっとひと段落した時に読むと、ホットして、また頑張ろうと思える一冊かもしれない。

 

人生は、天国になるときもあれば、地獄になるときもある。

でも、結局、これまでの人生も、これからの人生も、自分次第。

 

やっぱり、

自分の人生は、自分で考えて、自分で決める。