『夜明け前 第二部 (上)』  島崎藤村

夜明け前 第二部 (上) 
島崎藤村
新潮文庫
昭和30年2月5日 発行
平成24年6月20日 65刷改版

 

第一部を読んだので、せっかくなので第二部も読んでみることにした。図書館で借りた。

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裏の説明には、
鳥羽伏見の戦いが行われ、ついに徳川慶喜征討令が出される。東征軍のうち東山道具は木曽路を進み半蔵は一庄屋として出来る限りの手助けをしようとするが、期待した村民の反応は冷ややかなものだった。官軍と旧幕府軍の爆破の激しい戦いの末、官軍方が勝利をおさめ、江戸は東京へと改められて都が移された。あらゆるものが新しく作り変えられる中で、半蔵は新政府や村民のために奔走するのだった。”と。

 

第一部では、主人公の青山半蔵が、そんなに全面にでてこないのだけれど、第二部の始まりも、しばし、歴史的背景の説明が続く。

 

感想。
ふむ。なるほど。だいぶ、半蔵が中心のお話になってきた。けど、この先どうなるのか、、、、明るい見通しではない。第一部が江戸末期の混乱で、第二部が明治初期の混乱、という感じ。

 

以下ネタバレあり。

 

第二部は、1853年(嘉永元年)、ペリイ来航の頃の日本の状況説明から始まる。蒸気で自由に動く蒸気船にびっくり仰天の日本人たち。そして、幕府の衰退と新政府樹立でてんやわんやの国内政治。オランダ、フランス、イギリス、アメリカ、どの国も幕府と交渉するべきか、朝廷と交渉するべきか迷い、この内部混乱のなかじゃ、どうしょうもない、、、という様なことを自国に報告していた。
そして、アヘン戦争で負けた中国をみていた日本は、このままでは日本もやばい!ということになって、開国へと進んでいく。国内、国外どちらも、どたばた劇だったのだ。居留地を得た外国人たちだったけれど、諸藩は混乱の中、無政府状態になって、街中をおちおち安心して歩くこともできない有様だった。東海道川崎に近い生麦で起きたイギリス人殺傷事件(1862年生麦事件)のような事件が、神戸三宮でもおきていた。三宮での外国人殺傷事件の後始末として、同じ数の人を切腹させるとした日本だったが、全員が切腹し終わる前に、外国側からそれを「あまりにむごい」と言って止められるのだった。外国人にとって「ハラキリ」は、野蛮以外のなにものでもなかったのだろう。そうした事件までひきおこし、鳥羽・伏見の戦いは、日本中を混乱に陥れていた。

 

そんな、混乱の中、馬籠宿の本陣を預かる青山半蔵からみた、世の中の変化が描かれている。
半蔵は、妻お民との間に、お粂、宗太、正己(お民の兄、寿平治のところへ養子にいっている)、助夫、和助と子どもに恵まれている。(上)の最後では、まだ和助が生まれたばかりの赤ん坊。
かつては和宮様のお輿入れ(公武合体の動き、東海道ではなくあえて東山道を選んだ)の際に、にぎやかな人々の一行でにぎわった馬籠の本陣も、今では向かいいれるのは官軍であったり、過剰尊王攘夷派の水戸の武士だったり、、、お祭り騒ぎではなく、戦いを目的とした物騒な一行が客人となっていた。

日本にやってきた「変革」の波は、革新につぐ革新でり、破壊につぐ破壊でもあった。半蔵が馬籠を留守にしている間に、地元でも他所と同様に百姓一揆がおきていた。村民想いの半蔵は、村民たちのために役所に嘆願書をだそうとして、かえっておとがめを受けることになってしまう。

 

時代が明治になると、江戸は東京と改められ、会津藩の降伏で戊辰戦争は終わりを告げる。子どもたちの間では、「会津戦争ごっこ」がはやり、だれも会津役をやりたがらなかった、、、と。

封建的なものが打破されていくことは、半蔵にとっても喜ばしいことではあったが、彼を取り巻く環境はあまりにも大きく変わってしまった。問屋が廃止され、関所が廃止され、助号農民は解散となり、、、。社会が大きく変わっていくなかで、半蔵の父、吉左衛門明治2年に亡くなる。

平田門下にはしった旧友、景蔵、香蔵が木曽をはなれてから、半蔵の相談相手は、伏見屋の伊之助だった。半蔵38歳、伊之助35歳。ともに、変わっていく社会の中で、家業をどう継いでいくのかを模索しているのだった。

しかし、変革の波は、木曽路にも容赦なくやってくる。版籍奉還神仏分離、四民平等、太陽暦の採用。。。。

半蔵の本陣、伊之助の問屋、庄屋や会所などもすべて解散となる。そして、自分たちの暮らしていた山は突然、官地となり、生活の糧を失っていく人々。

人々の生活の変化は、若者に大きな影響を与えた。半蔵の娘、お粂にはもともと親が決めた許嫁がいたのだが破談となる。そして、半蔵の義母おまんの実家方からの縁談があがったのだが、嫁ぐことよりも、半蔵のように学問に興味をもつお粂。年頃の娘だというのに、嫁に行くのは乗り気でないのだった。

半蔵は、42歳になっていた。やはり、平田一門の学問への想いが断ち切れない。「復古」への想いもむなしく、世間には「御一新」の風が吹き荒れていた。
関所、代官屋敷、武家屋敷なき景色に、時代の変化を思い知らされる半蔵とお民だった。

いったい、これから日本はどうなっていくのか、、、。
そんな、混乱のなかで、(上)は終わる。 

 

なるほど、ほんとに深い歴史小説だ・・・。だんだん面白くなってくる。続きは、(下)の紹介で。。。