『将軍の世紀 下巻』by 山内昌之

将軍の世紀 下巻
家慶の黒船来航から慶喜大政奉還まで わずか14年で徳川の世は瓦解(がかい)した
山内昌之
文藝春秋
2023年4月30日 第一刷発行

 

上巻の続き。

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下巻も上巻に負けない分厚さ。文字がびっしり詰まった760ページ。いやぁ、充実。

 

表紙裏の説明には、
嘉永6年(1853年) 米国東インド隊司令官 マシュー・ ペリーが率いる 4隻の黒船が浦賀沖に現れた。 12代家慶の最晩年である。
以来、国内は海防と将軍継嗣問題で揉めに揉め続ける。
騒動の中心にいたのは 水戸徳川家当主・斉昭 だった。
声望ほどに実力が伴わない斉昭の言動に周囲は振り回された。
その負の遺産が息子・慶喜の足を引っ張ることになる。
関ヶ原から267年目にしてついに政権は徳川家の手を離れた ”

 

下巻は、第9章 家慶から第12章 慶喜まで。家慶の在職は1837年~1853年。そこから、家定、家茂、慶喜というたったの4代の話で、下巻は760ページ。濃いに決まっている。この時代は、教科書でも取り上げられやすい幕末なので比較的読みやすい。それでも、やっぱり、へぇ、ほぉ!の連続。楽しく読んだ。


目次
第9章 家慶
1.天保の改革と内憂外患
 清でアヘン戦争が信仰する中、三代改革の掉尾を飾る天保の改革が始まる。老中・水野忠邦は家斉時代の緩み切った幕政をかえられたのか
2.水野忠邦、禁じることが好きな人
 芝居もダメ、色町もダメ、高価な食材や衣装もダメ、、、、ダメダメ尽くしで江戸の町は衰微していく。そして上知令をきっかけに反水野陣営が立ち上がる。
3.逆説の政治家、「ああ烈公、烈公、烈公は・・・・」
 「賢君」として期待されて登場した斉昭だが、その声明ほどには力量、内実が伴わず、水戸藩は泥沼の派閥抗争に陥っていく
4.ペリー来航と阿部正弘
 攘夷か、開国か、斉昭、春獄の幕政関与が深まるにつれ、幕臣の間には井伊直弼大老就任を望む声が高まっていく

 

第10章 家定
1.将軍家定は、「凡庸中ノ極三等」か
 家定は聡明で思いやり深い人物だったが、時代が彼に「暗愚」のレッテルを貼った。外国と交渉にあたる有能な幕吏にも状況主義と規範主義の乖離が広がっていく
2.孝明天皇日米修好通商条約
 幕府が継嗣問題で二分する中、朝廷も一枚岩ではなかった。中堅公卿88人が突然、参内した事件は、関白による指導体制を瓦解させた
3.将軍家定と大老井伊直弼 条約調印・継嗣確定・君臣関係
 斉昭最大の敵である井伊直弼がついに大老に就任。麻のごとく乱れた継嗣問題を、紀州慶福で決定する
4.江戸城のいちばん長い日  不時登城
 家福継嗣に反対する尾水二藩主と斉昭。慶永は最後の反撃に出る。しかし、彼らは気がついていなかった。最高権力者が誰であるかを
5.日本金貨流出の構造と責任
 開港を進めた幕府の役人たちは皆最優秀の人材だった。それなのにどうして外国為替に潜む大問題を放置したのだろうか

 

第11章 家茂
1.戊午の密勅
 密勅はなぜ水戸藩に下ったのだろうか。孝明天皇の誤算が、安政の大獄を招き寄せた
2.安政の大獄
 次々と下される死罪、獄門、切腹…、常識を超えた厳刑は、水戸と長州に深い怨念を残した
3.桜田門外の変
 絶対権力者の首はあまりにもあっさりと落ちた。代わって歴史の表舞台に登場したのは、島津久光の薩摩だった
4.公武合体論の象徴、家茂と和宮
 若年ながら英主の資質があった家茂。しかし、信頼した井伊直弼は横死し、後継の安藤信正まで坂下門外で襲撃される
5.久光卒兵上京と尊攘激派、有馬新七真木和泉の挑戦
 久光は西郷が思う以上に有能な政治家であった。しかし、その秩序意識は尊攘激派の時代感覚と乖離しはじめていた
6.寺田屋事件と薩摩マキャベリズム
 「あれは謀反をする奴ちゃ」—―久光の怒りは限界を超え、西郷は再び流罪に。残された激派が集結する寺田屋へ鎮撫使は向かう
7.将軍後見職と政治総裁職 —― 一橋慶喜松平春獄の政権掌握
世はすでに乱、そう見切った西郷を流罪にした久光は、いまだ幕政改革を唱えて江戸へと向かう。しかし江戸で待ち受けていたのは、、、
8.生麦事件の虚と実
 開国論者であった久光の行列が、なぜ、せずともよかった異人切りを引き起こしたのか。この頃、武市半平太土佐藩が幕末史に登場する
9.将軍上洛から小笠原図書頭率兵上京へ
 家光以来、229年にぶりに将軍として上洛した家茂だが、事態は好転しない。そこで老中・小笠原図書頭が兵を率いて上京。江戸幕府再生の最後の機会だったが、、、
10.8月18日政変と参預会議
 孝明天皇朝彦親王によって薩摩と会津が結び、反長州クーデターが成功。過激派公卿7人は長州へ落ち、京都では新選組が血の雨を降らせた
11.禁門の変から長州戦争へ
 薩会への報復に燃える過激派を誰も抑えられない長州は、ついに激発。京へ攻め上る。しかし、都を守るのは、流刑から復帰したあの男だった
12.第一次長州戦争をめぐる幕府と薩摩藩
 孝明天皇の強い意志で始まった長州征伐は、三家老の切腹のみで戦闘を伴わないと言うなんとも奇妙な結末であった
13.将軍家茂、最後の西上
 将軍は「目に見える」存在であるべきか、それとも「目に見えない」ほうが良いか。幕閣が二分し、混乱を極める中、長州では過激派が再び政権を奪う
14.家茂の死  「徳川氏、今日にして滅亡す」
 何につけても真面目で、手を抜くことを知らない青年君主。家茂の死でいよいよ幕末は瓦解とへ進み始める

 

第12章 慶喜
1.「将軍同様」とネジアゲの将軍
 将家不可分か、将家分離か  なかなか将軍に就こうとしない慶喜は長州再征でも態度を二転三転させる
2.最後の将軍、最後の武家政権
 譜代や親藩の支持もない中、最大の佐幕家だった孝明天皇が突然、崩御する。幕臣・原市之進も暗殺され、慶喜は追い詰められていく
3.「船中八策」から大政奉還
 江戸幕府270年の歴史は、慶喜によって幕を下された。家康の築き上げたパクス・トクガワナはここに終わりを告げた

 

はじめて、幕末の流れがわかったような、、気になった。方針があっちへいったりこっちへいったりするので、どうもわかりにくかったのだけれど、本書は時代の順番に出来事が書かれているので、流れとしてわかりやすい。大政奉還したのは慶喜だけれど、その前段、家茂の時代におきたことが頭に入っていないと、慶喜の行動の意味がよくわからない。そして、将軍の死や孝明天皇の死が時代の流れを変えていく。

 

長くなりそうなので、続きはまた明日。