ドラゴンのお医者さん ジョーン・プロクターはは虫類を愛した女性
パトリシア・バルデス 文
フェリシタ・サラ 絵
服部理佳 訳
岩崎書店
2019年5月31日 第1刷発行
『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第五章 ジェンダーについて考える」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。
表紙をめくると、
”世界中の女性に 動物学者という道をひらいた女性の物語
ジョーンは、 お人形遊びより トカゲ たちとすごす方が好きな女の子でした。 は虫類への情熱は、 成長したジョーンを自然史博物館へ、そしてロンドン動物園とへみちびき、は虫類館初の女性学芸員が誕生しました。そしてジョーンは、コモドドラゴンの展示飼育を行い 注目を集めたのでした。”
と、まさに、そのままのお話が、絵本になっている。ジョーン・ビーチャム・プロクター(1897~1931) という一人の女性の伝記が絵本になっている感じ。最後の3ページは、彼女の経歴、そして、彼女がつれてあるいた「コモドドラゴン」についての説明になっている。
コモドドラゴンは肉食のオオトカゲで、インドネシア諸島に住んでいる。生きたコモドドラゴンがはじめてヨーロッパに渡ったのは、1927年で、ロンドン動物園の爬虫類館に展示され、ジューンが世話をしていた。
著者のパトリシア・バルデスは、 カリフォルニア大学バークレー校で分子細胞生物学の博士号を取得し、アメリカ国立衛生研究所で働いている。子供の本を書くのが好きな科学者。 テキサス出身。本書 が最初に手掛けた絵本。
絵のフェリシタ サラは、西オーストラリア大学哲学科卒業後、独学でイラストを学び 様々なアニメーションのプロジェクトに携わる。 とりわけ情熱を注いでいるのが 絵本制作。
翻訳の服部さんは、 早稲田大学法学部卒業。 法律事務所勤務。翻訳家田村義進に師事。
絵は、パステル?クレヨン?色鉛筆?なんともいえない優しいタッチ。でも、動物や人間の描かれ方はそれなりにシャープ。まだ、女性の社会での活躍が一般的ではなかった時代に、爬虫類の研究で活躍した女性のお話。
なんというか、優しさにあふれる感じ。
『世界をひらく60冊の絵本』によれば、岩崎書店では、「 世界をみちびいた知られざる女性たち」シリーズで、他にも『「危険なジェーン」と呼ばれても』『グレース・ホッパ― プログラミングの女王』という本があるらしい。
プログラマーとして活躍したグレースは、
「 いいアイディアならとにかくやってしまいなさい。 許可を得るより謝る方がずっと簡単よ。」という言葉を残している、と。
ジェーンは、子供の頃からトカゲやワニが好きで、16歳のお誕生日にはワニの赤ちゃんをプレゼントにもらう。学校にワニをつれていったジェーン。危険なジェーンだったのかもしれないけれど、学校にワニを連れていくことを禁止は去れなかったらしい。
女性に限らず、何かの世界を切り開いた人というのは、本人の情熱もすごいけれど、周りの人びとにも愛され、支援されている。
情熱を注ぐ対象がちょっと人と違って変わっていたとしても、誰が何と言おうと、その道を突き進む人には、きっと、運が開ける。そんな気がする。
「許可を得るより謝る方がずっと簡単」というのは、なかなかいい。
実際、私もそう思って猪突猛進だった時代があった気がする。
大判の絵本で、読み応えもある。
表紙のジューンの笑顔も素敵。爬虫類が可愛い。
私は、爬虫類よりは両生類の方がすきだけど、、、。
そういえば、、、日光の両棲類研究所、しばらく休館だったのだけれど、今どうなっているかな、、、とおもってネットで検索してみたら、2019年8月16日 リニューアルオープン下って!!!コロナに負けず、今もやっているようだ。行かなくっちゃ・・・。
生き物の研究というのは、男女関係ないよね、って思う。微生物もそうだし、人を対象にした医者だって、、ね。
話はちがうけれど、新日本銀行券の顔になった北里柴三郎は、もちろん細菌学の大家だけど、実は津田梅子もアメリカ留学中は生物学者だったんだよね。帰国してからは生物学の道をあきらめて女子教育に力をそそぐわけだけれど、きっと、生物学を通じてまなんだことはそこに活かされていたはず。
好きなことから学べることはたくさんある。
そして、それを他のフィールドで活用できる場面もたくさんある。
人生、何事も無駄はない。
こういう、伝記的絵本も楽しい。
『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第五章 ジェンダーについて考える」からの紹介だったけれど、ルソーのように、「第一章 自分らしく生きる」でもよい気がするね。