『英語の読み方 リスニング篇 話し言葉を聴きこなす』 by  北村 一真

英語の読み方 リスニング篇 話し言葉を聴きこなす
北村 一真
中央公論新社 (中公新書 2797) 
2024年3月25日 初版

 

新聞の広告でみかけたのか、、、きっかけは忘れてしまったのだけれど、面白そうと思って、図書館で予約していた。随分と待った気がする。著者の前著『英語の読み方』という本を先に借りて読んでみたのだけれど、それも面白かったので、購入しようかと思ったけれど、また本が増えちゃうので、図書館の順番を待った。

 

著者の北村さんは、 1982年生まれ。 2010年 慶應義塾大学大学院 後期博士課程単位取得満期退学。 学生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで 難関大学 受験対策の英語講師を担当。 滋賀大学順天堂大学の非常勤講師を経て、 09年 杏林大学国語学助教授。15年より同大学 准教授。

 

表紙をめくると、
”音声英語 に接し、 聞きなれないからと 英語習得を断念したことはないだろうか。安心していただきたい。一定の速度で 英文が読めれば、 自ずと リスニングの力も上達するからだ。 本書では、 まず読む力を鍛え、 話す英語の本質とリスニング力向上のポイントを指南。 ニュースや 映画 予告編、 首相・ 国王や実業家のスピーチ など、「 本物の 英語」 を教材に、聴く力を身につける。 随所に独習のコツ、 端末に即 役立つ 20の源泉 例文を収録。”とある。

 

目次
第1章  話す英語の本質  最初におさえておきたい特徴
第2章  まずは読む力  リスニングを意識して読む
第3章  スピーディーに読む技術 「先読み」は文法がカギ
第4章  定型表現は武器だ 「丸覚え」で次のステージへ
第5章 結論が見える  文脈から推理する
第6章 アドリブ力を高める  あらゆる破壊的な表現にも対応


感想。
うん、面白い。
通訳勉強中の私としては、とても面白かった。

 

本書は、前著に続いてリスニング篇。でも、リスニングを読み方に活かそうというか、リーディングをリスニングに活かそうというか、、、どっちもどっちなんだな。

 

第2章では、読めないとリスニングも追いつかないというのだけれど、その時、正しい発音で読めていないと、聞き言葉になったときに音と文字が一致しない。だから、読むときでもただしい発音は大事、ということ。

 

であれば、、、スクリプトがあって、音源のある素材で勉強するのが一番。やっぱり、そうなのだ。本書の中には、QRコードで、YouTubeなどの音源に飛べるようになっている。もちろん、スクリプトも日本語訳もあるので、わかりやすい。

結局のところ、読む速度をあげるためには、リスニングのスピードを上げないといけない、というのは、私のかつての英語の先生もよく言っていた。

 

TOEIC初心者は、リーディングの時間が足りなくなりがちだけれど、それはリーディングの速度が遅いから。そして、リーディングの速度アップトレーニングには、結局のところリスニングの訓練なのだ。私は、リスニングからリーディングスピードを上げた派だけれど、本書では、読むスピードが早くなることがリスニングの向上につながる、と。

 

本書の中の例で、1ページ強の英文をどれくらいの速さで読めるか挑戦してみよう、というのがあった。任天堂に関するWikiの説明文。250語程度なので、ニュースであれば1分半2分くらいということ。それを、2分くらいで読めれば、実際のニュースでもききとれるようになる、という話。

私は、計ってみたら、2分ちょっとかかった。やっぱり、まだまだ、遅いのだ・・。

 

ほんと、どっちもどっちなのだと思う。読む速さは、文の構造をいかに早く読み取るかによるし、リスニングは、構造以前に聴き取る力がないと聞こえてこない。そして、聞くためには、ある程度文章の内容を予測したり、構造を推定することが必要になってくる。ニュース原稿やプレゼンの英語は、言い直したり、途中で文章を変更することがないけれど、実際の会話のような場面では、言い淀んだり、繰り返したり、言い換えたり、、、、それらを含めて相手が言わんとすることを予測する能力というものが必要になる。

 

だから、基本の構造は知っておくべきだし、ボキャブラリーがないと、わからない単語で思考停止してしまうので、やっぱり、ボキャブラリーも必要。。。

 

とまぁ、、、英語の学習に近道はない。やはり、言語というのは考えて出て来るのではなく、自然にでてくる脳みそにならないと、通訳は辛い・・・。

とまぁ、そんなことを思いながら読んだ。

 

通訳は、想像で訳してはいけないとよく言われるのだけれど、リスニングをしている最中は、「予測」するべきだという。

 

たしかに、日本語と語順がことなるので、英語は、動詞のあとに目的語が来る。動詞が聞こえたら、次にくる前置詞+目的語に耳を澄ませないといけない。

 

創作してはいけないけれど、なにがくるかな?って思いながら聞かないと、リスニングはついていけなくなる。実は、日本語だってきっとそうだ。相手の話をある程度予測しながら話を聞いているはず。その予測の仕方が、英語の語順特有のものがある、ということだろう。

order ときたら、誰に?何を?命令したの?
force ときたら、誰に?何を?強制したの?

って、その先に続くであろう単語に耳を澄ませる、ということ。

 

最後に20個の比較的よく使われる表現のセグメントが紹介されている。これも、なかなか、参考になった。

 

先日、『 色彩を持たない多崎つくると 彼の巡礼の旅』の翻訳で英語の勉強をしながら、
多崎だけが色とは無縁だ”という一文を訳した。つくる以外の友だちは、苗字に色がはいっているけれど、つくるだけ、色が入っていない、という文脈。
それを、

私は、Only Tazaki had no relation with colour. としたのだけれど、英国人の先生は、

Only Tazaki had nothing to do with colour. と訳した。

まさに、

この、
have nothing to do with ~.
が、動詞句レベルの定型で紹介されていた。

たしかに、よく聞くフレーズ。
解説では、「Sは、・・・とは何の関係もない」となっていた。ズバリ。

 

耳で聞きなれて、目で見なれて、、、
言語学習は、慣れである。。。。

そして、継続は力なり。。。